狼魔人日記

沖縄在住の沖縄県民の視点で綴る政治、経済、歴史、文化、随想、提言、創作等。 何でも思いついた事を記録する。

現代史家秦郁彦の高裁判決批判

2008-11-19 10:03:02 | ★集団自決

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昨日(18日)の世界日報に、現代史家秦郁彦氏の「集団自決控訴審判決」に関する、インタビュー記事がありましたので、

同紙のご好意により全文参考資料として、掲載します。(強調部分は引用者)

 

沖縄戦集団自決控訴審判決
現代史家 秦 郁彦氏に聞く

 沖縄戦で住民に集団自決を命じたとする虚偽の記述で名誉を傷つけられたとして、元隊長・梅澤裕氏らが「沖縄ノート」の著者、大江健三郎さんらを相手に出版差し止めなどを求めた控訴審で、大阪高裁(小田耕治裁判長)は請求を退けた一審判決を支持、梅澤氏らの控訴を棄却した。判決の評価を、現代史家の秦郁彦氏に聞いた。
(聞き手=編集委員・鴨野 守)
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「判決は暴論で非常識」

 はた・いくひこ 昭和7年、山口県生まれ。東京大学法学部卒。ハーバード大学、コロンビア大学に留学。防衛研修所教官、大蔵省財政史室長、プリンストン大学客員教授、日本大学教授などを歴任。法学博士。平成5年度の菊池寛賞を受賞。著書に『現代史の争点』『昭和史の謎を追う』(上・下)『昭和史20の争点―日本人の常識』『南京事件増補版―「虐殺」の構造』『統帥権と帝国陸海軍の時代』『旧制高校物語』など。
 ――判決の内容をどう見るか。
 裁判の争点は隊長の自決命令があったか否かであるのに、「その有無を断定することはできない」としながら、「総体としての日本軍の強制ないし命令」を認めたもので、「逃げ」の判決だ。名誉毀損があったと認めているが、さまざまな理由で原告側を勝訴させるわけにはいかないという大前提があり、事実上の門前払いをした。

 原告側を勝たせることができない理由の第一は、もしノーベル文学賞作家の作品が出版差し止めとなれば、世界中に報じられ、大騒ぎとなる。これは、日本の国益にマイナスになるという判断だ。

 第二は、沖縄への特別の配慮。昨年九月の県民大会に象徴される、ただならぬ「反対」の気勢を見て、沖縄の世論を敵に回したくないという気持ちがあったのだろう。

 第三に、戦時中の古い話を論議するのは歴史家の仕事であって、これを裁判所に持ってくるな、という考え方。第四に、原告側弁護団のビヘイビア(振る舞い)が、裁判所の心証を悪くしたという面だ。

 ――判決文のどこからそのように判断したのか。

 例えば判決の中に、「このような歴史的事実の認定については……本来、歴史研究の課題であって……司法にこれを求め、仮にも『有権的な』判断を期待するとすれば、いささか、場違いなことであると言わざるを得ない」などという判示は、こんな訴訟をやるな、と言っているに等しい。また、「新しい資料の出現によりある記述の真実性が揺らいだからといって、直ちにそれだけで、当該記述を含む書籍の出版の継続が違法になると解するのは相当でない」という指摘は、ひどい暴論。

 新しい資料、新しい証言が出て、過去の通説に間違いがあると分かれば、そのたびごとに訂正し、修正するというのが常道であり、歴史に対する本来の姿というべきだ。小田判決は、非論理的で、非常識な判決と言わざるを得ない。

 ――原告、被告双方から多くの陳述書や証言が出たが、原告側のものが一審に続き、全くと言ってよいほど評価されなかったが。

 梅澤氏の主張は「到底採用できず」、ニセ命令書を捏造したという照屋昇雄氏の証言も「全く信用できず」、座間味島の宮平秀幸氏の新証言に至っては「明らかに虚言」などと、その信憑性を一切認めないという極端な判断を出したのは極めて珍しい。梅澤氏は原告だが、照屋氏も宮平氏も第三者の立場で全くの別人格なのに。裁判長が意地になっているとしか思えない。

 ――高裁が「明らかに虚言」とした、宮平秀幸氏の証言については、どう評価するか。


 これが単独で出てきたのであれば疑問も出よう。だが、すでに梅澤氏が命令を発しなかったという証言は、宮城初枝さんが語り、宮村幸延が詫び状まで書いており、その内容と宮平証言は符合するもので大筋で正確だと私は判断している。裁判長は、過去の発言とブレがあるから信用できない、と指摘するが、時間とともに証言に多少のブレが出てくるのは当然であり、その理由も「村幹部の圧力」に起因するというのは、宮城初枝証言と同様、理解できる。逆に、時間を隔てた証言が全く違わないとなれば、それこそおかしい。

 ――判決は、住民自決命令について「関与」という形で認めたわけだが。

 「関与」という範疇には、「関与しなかった」ということも含まれる曖昧な言葉だ。だが、当時の日本政府も第三二軍も、大方針は「非戦闘員を県内外の安全地帯に避難させる」というもので、これは住民自決とは正反対の指示である。だが、判決はこの流れに沿わない住民殺害など例外的な事件をことさら重視して、自決命令に「関与」したと決め付けており、変な判決と言わざるを得ない。(世界日報 2008年11月18日)

                   ◇

再三繰り返しているが、高裁判決を、狼魔人日記風に言わしてもらえば、

小田裁判長は、次のような判決を下したことになる。

原告の元軍人が、命令を出したといえないが、老い先短いことだし、今さら名誉毀損なんて我慢しなさい。 ノーベル賞作家と大出版社の表現の自由に比べたら、90歳余の老人の名誉なんてどうでも良いではないか、それにもう一人は死んでいるのでしょう。 我慢、我慢」

こんなデタラメな判決が通るなら、日本はとんでもない人権無視の国家であるということを司法が示したことになる。

原告側の証言を一切認めないという裁判長の判断は、被告側の「証言者は嘘つき」という被告側の主張を、そのまま鵜呑みにした恣意的判断である。

原告が軍命を下したという証拠がないので、

被告側は、本裁判とは関係ない別件の「住民虐殺」を持ち出してかく乱作戦を企てた。

裁判長は、この被告側の「印象操作」に取り込まれて、軍の「関与」を全て原告が不利になるようにムリヤリつじつま合わせの判断をした。

>第二は、沖縄への特別の配慮。昨年九月の県民大会に象徴される、ただならぬ「反対」の気勢を見て、沖縄の世論を敵に回したくないという気持ちがあったのだろう。

この点に関して、原告側はマスコミ等の「法廷外闘争」で徹底し、

原告側は沖縄を敵にしている」という印象操作で裁判官にプレッシャーを与える作戦を続けており、結果的に成功している。

今朝の沖縄タイムスは「『集団自決』訴訟 控訴審判決を読む」(村上有慶・沖縄平和ネットワーク代表)というタイトルで連載特集が始まっているが、

その記事の中でも

・・・『正論』や『WILL』などの雑誌上で展開される、沖縄側への口汚い攻撃を見れば明らかである

といったさりげない表現で、

卑劣にも、この裁判が「原告側vs沖縄」の裁判であるかのような印象操作をしている。

いうまでもないが「集団自決訴訟」の被告は大江健三郎と岩波書店であり、沖縄が被告ではない。

原告側が被告側を、口汚いかどうかはさておき,攻撃するのは当然のことであるが、

それがどうして「沖縄側への口汚い攻撃」に摩り替わるのだ。

沖縄タイムスに聞きたいのだが、

いつから沖縄県民が「大江健三郎・岩波書店=沖縄という等式を認めたというのだ!(怒)

こういうところでも勝手に「県民」と言うのは止めて欲しい。

岩波・大江訴訟 県民納得の妥当判決だ (琉球新報)

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3 コメント

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Unknown (涼太)
2008-11-19 19:39:59
別の意味で、日本を混乱させる強引な判決だと思います。
今、東京空襲の被害者が補償を求めて裁判を起こしています。国は「被害は国民が等しく受任すべきだ。」と争う構えです。一方で沖縄に対する特別な配慮がある。
まさか、沖縄には軍の関与があり、東京では軍の関与が無かった。では説明がつくはずもありません。被害は名古屋、静岡、兵庫、福岡など日本各地に及んでいます。
北方領土などは人口45万人のうち、無事に本土に逃げのびたのは10万人位だそうです。築いた財産も全て失って、いまだに返還されていません。
裁判所がどう判断し、国がどう対応するか。しばらく混乱しそうです。
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教えてください。 (涼太)
2008-11-19 20:59:58
狼魔人様

沖縄で5年間勤務しました。
沖縄のCD、ビデオも多数持っています。
エイサーに興じる若者。民謡クラブ。そこには観光客も沢山いました。
本当に、皆楽しそうです。実際私も沖縄の友人達と楽しいひと時を過ごしました。そこには醜い争いは無かったと思います。ただ、楽しいから楽しい。
でも、そんな若者達も日常に戻ると恨みの反日になるのですか。そのギャップがどうも理解できません。
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反日左翼 (狼魔人)
2008-11-20 14:16:22
涼太さん

沖縄に5年も住んだことがあるのでしたら、お気づきでしょうが、沖縄の若者が全て反日ではありません。

ただ、教育界、マスコミが反日左翼に占拠されているので、普段はそうは思っていなくても、
改まって問われると「反戦平和的発言」の方が良心的、或いは知的といった風潮が沖縄にはあり、ついそのような発言をしてしまう若者もいます。

そうなると「反戦」⇒「反日本軍」⇒「反日」といったように、地すべり的に発言をリードされ、
気が付いたらムキになって「反日」を叫ぶ若者・・・こんな若者もかなりいます。

ですが、大部分の若者は沖縄のマスコミを信じていませんので、左翼の扇動に乗って騒ぐのは「ノイジーマジョリティ」です。
その連中の声だけが、マスコミを通じて伝わるので、本土に住むと「沖縄全体が反日左翼の島」に見えるのだと思います。

沖縄は「沖縄紙が報じるほど」の反日の島ではありません。
最近の那覇市長選挙でも保守候補が圧勝しましたし、県知事は保守知事が二期続いています。

ただ、教育とマスコミを反日左翼に抑えられているので、一寸油断すると危険です。
よしりんが危惧するのはその点でしょう。

今後も応援お願いします。
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