母から、正露丸ってどこがいけないんだっけ、と聞かれる。
そうだ、正露丸って、不思議なクスリなのだった。きちんとした疫学的な効能の立証、危険性の確認を経ないまま、流通し続けている、日本ローカルの不思議薬。
そんな話をいつかしたことあったなあ、と思い出した。
「そりゃあ、クレオソートだからだよ。クレオソートって、毒性が強くて、手指の殺菌なんかにも最近使わないみたいだし、それを内服してよいはずがない」と答えておいた。
ことの始まりという、かれこれ7年か8年まえのこと。
北米から南米へ向かう、日本人がほとんど乗っていない飛行機で、食後に正露丸を飲もうとしたら、周囲がざわめいた。「異臭がする」というわけだ。まだテロのこととか深刻ではなかった時期だけど、それでも、みんなすごく神経質になった。
そっか、これって、たしかに凄い匂いだと気づいて、急いで蓋を閉めたのだけれど、まわりは収まらない。「これは日本の伝統的なクスリで」という説明に納得してくれないわけ。
客室乗務員のおばちゃんが、「わたしはそれ知っているわ。小さい頃隣に住んでいたジャパニーズが使っていた」と証言して、事なきを得た、というふうであった。
それでも、たまたまぼくの隣に座っていた男性が納得せず、「ぼくはケミストリーの会社の技師なんだが、その成分はなんだ」としつこく聞く。そこで、表示をみて「クレオソート」だと言ったら、絶句して、「そいつは毒だ」と吐き捨てた。
そこで、何週間かあとに家に帰ってから調べたら、やっぱり、そのことを問題にしてる人が結構、いるんだな。
大ヒットした「買ってはいけない」にも、ノミネート(?)されていたし。
今ウェブでたどれるのは、こういうリンク。
正露丸の問題について
正露丸
OKWeb 正露丸の副作用について
要は、きちんとした、臨床試験を経ていないということと、主成分であるクレオソートの毒性が強すぎて通常使用の二倍から四倍で、「毒」としての作用の方が強くなる、ということなのかな。
どんな薬だって量を間違えれば、毒としての作用の方が大きくなるのは当たり前のことなのだけれど、安全マージンが狭すぎる。それを大衆薬として流通させるのはどうか、ということなのだと思いました。
それとね、製薬会社側からの正露丸の安全性についてのコメントで、「正露丸のクレオソートは天然素材がら採っているので安全」というものがあったと記憶してるだけど、あれはイカンですね。「天然だから安全」というロジック、信じちゃう人がいそうなので、逆にこわいです。
だって、天然物からとっても、ふぐ毒はやはりふぐ毒だし、コカインはやっぱりコカインだよ。そのものの毒性が強ければ、由来が天然であれ、人工的なものであれ(まあその線引きだって実はあいまい)、やばいものはやばいのでした。
母には、適当な(適切と思われる)サイトの当該ページを印刷して、ファクスしておきました。