ゲンジホタルを鑑賞する集いが、近くの慶福寺であった。数年前からここで開催されているようである。この慶福寺の掲示板にだいぶ前からこのイベントの内容を伝えるポスターが貼ってあったので、興味をもった。
記憶は子どもの頃にさかのぼる。父親につれられ、札幌の円山公園で、ホタル狩りの催し物があって参加した記憶がある。そして、またわたしの子どもをつれて西岡にホタルを観にいったこともあった。ホタルは初夏の風物詩であり、その光とともに、何かしら神秘的な存在だ。
しかし、環境の悪化とともにホタルの生息する場所は窮地に追いつめられているらしい。人間が意識的にホタルが棲める環境をつくってやらないと、ホタルをみることはできなくなってきている。
慶福寺でが数年前から、ホタルに詳しい人に助けをかりて、境内の一角にホタルが棲める環境を作り始め、成功しているようだ。この日は、夕刻7時半からそのホタルの専門家Aさんを講師にホタル鑑賞の会がもたれ、30人ほどが集まった。
最初にAさんのお話。ホタルは日本に30数種いるとか。そのなかでよく観られるのが、ゲンジホタル、ヘイケホタル、ヒメホタルなど。ゲンジホタルが一番大きく、海外でも「ゲンジホタル」といえば、専門家の間ではつうじるという。ちなみにホタルは英語では fire fly。
ホタルの一生は一年。そのうち10ヶ月は水中で過ごす。カワニナなどを食べて大きくなる。幼虫は大きくなると土手にあがって小さな穴をほり蛹になる。この期間が1か月半ほど。そして成虫に。成虫になると、とくにものは食べない。露をすって生きる。天敵が多く、一匹のメスは1000個ほど卵を産むが、700個はサカナ、カエル、ザリガニなどに食べられてしまう。陸にあがっても、いろいろな天敵がいて、最終的に残るのは100匹ほど。
7割がオスで、メスは3割。発光はオスが強い。求愛のサインである。ホタルは一夫一妻。オスとメスの結婚(交尾)は必ず一対一で、複数の相手との交尾はないという。メスは全体の3割しかいなにで、しがって、約4割のオスが結婚できないまま死んでいく。これがホタルの世界の自然の摂理とのことであった。
実はこの日は朝から雨模様だった。こういう日はホタルを外で観るのはむずかしいという。葉の裏などに隠れ、あまり光らない。というわけで、Aさんは自分のところで育てているホタルを大きな容器に入れてもってきた。わたしたちは、それを観た。
あわせて、ホタルブクロという植物の花のなかにホタルを入れて鑑賞するということをした。ふるく、日本人はそのようにしてホタルの光を愉しんだらしい。趣がある。いい趣味だ。
Aさんはホタル研究をもう30年ほどしているということだった。そして、自分の手許で、卵をうませ、孵化させ、成虫にまで育てている。ホタル「博士」でホタルのことはなんでも知っている。
夏の夜の、まことに優雅なひとときであった。