【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

阿部和義『トヨタモデル』講談社新書、2005年

2008-12-13 00:50:22 | 経済/経営

阿部和義『トヨタモデル』講談社新書、2005年

          

 トヨタの歴史と現状を上手くクロスさせて,50年前には倒産寸前の憂き目にあったこの企業の全体像を描いています。

 トヨタ自動車が世界一になった秘訣を著者は、二点あげています。ひとつは「いつも危機感を社員に与えて改善にとりくんでいること」,ふたつは「『質素と倹約』がDNAのように引き継がれていること」だと言います(pp.4-5)。

 トヨタモデル(大幅なコストダウン)が2005年2月に完成した「中部国際空港」の工事,郵政・社保庁改革に役だったというところから本書は、始まります。「かんばん方式」は,徹底した経費削減の方法として,従来の「流れ作業方式」に替わるものとして生み出されたものです。

 この本が書かれた頃のこの企業の年間売上高は13兆円。環境の世紀である21世紀を意識した経営戦略は、ハイ・ブリッド車「プリウス」と燃料電池車の開発です。海外展開も堅調でした。アメリカはもとより,苦戦を強いられたものの欧州に進出。さらに,遅れ気味だった中国市場も射程に入れました。

 財界(経団連)への人材供給にも余念がありません。巧みな労務管理は徹底しています。労使協調の一貫した姿勢,非公式グループ「豊八会」の創設,「労使協議会」等々。トヨタ王国の牙城は,当分くずれそうになかったのです。

 それが、いま世界的な自動車業界の不況に直面しています。わずか3年で状況はこんなに変わってしまいました。