【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

佐々木信夫『地方は変われるかーポスト市町村合併』ちくま書房新書、2004年

2007-08-07 14:48:42 | 政治/社会
佐々木信夫『地方は変われるかーポスト市町村合併』ちくま書房新書、2004年

               地方は変われるか


 パワーがあり、タイムリーな地方自治体論です。「第1章:転換期にきた地方政治」「第2章:なぜ市町村合併か」「第3章:市町村合併の設計」「第4章:政策官庁としての自治体」「第5章:地域経営の新しいスタイル」「第6章:人材経営の新たな方向」「第7章:議会は変われるか」「第8章:地方財政の自立改革」「第9章:地方制度の将来」。

 本書で著者が主張しているのは、地方自治体は広域化と狭域化を視野に、変わらなければならず、そのためには自治体は「政策官庁」でなければならず、専門的知識(執行知識ではない)をもった職員を育てなければならず、住民自治の成熟、活発な住民の自治活動が不可欠であるということです。

 市町村合併はその手段であり、これを契機に地方自治体、地方自治のあり方を変えていかなければならないのだと、力説しています。同感。

 地方自治体は。どういう「地域」をつくりたいのか、どういう「改革」をしたいのか、明確なヴィジョンをもたなければならないのです。

 本書は市町村合併の進め方、議会のあり方、地域づくりの方向など具体的な事例をだしながら議論展開しているので、大変わかりやすいです。

 地方自治体論、行政学という学問はこういう内容なのかと、よく理解できました。

 わたしは、これとは別個に地方自治体をまわって、各地域の政策についてのヒアリングを行ったことがあります。その経験から、本書を読みながら合併が頓挫した山形市のことが頭をよぎりましたし、また各地域では政策の評価のための指標作成が普及していることを知っていたが本書でその背景がわかりました。

 最後の章では、道州制への展望が取り上げられていますが、その話はいくつかの自治体でも話題になりました。合併による議員在任特例(p.74),構造改革特区(p.147),公共政策系大学院(p.176),三位一体改革(補助金削減、交付税改革、税源移譲)など、必要な話題が適切に入っているので、勉強になります。

おしまい。