【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

『阿刀田高集』(中島河太郎監修、もだんミステリーワールド11)リブリオ出版、2001年

2007-08-03 16:50:48 | 小説
『阿刀田高集』(中島河太郎監修、もだんミステリーワールド11)リブリオ出版、2001年。

                            もだんミステリーワールド


 大きな活字で詠みやすい本です。図書館にありました。

 「無邪気な女」「運のいい男」「干魚と漏電」「旅の終り」「花の器」の5編所収です。

 「無邪気な女」は、結婚に遅れた35歳の篠田大介が知人の紹介で知った26歳の静子という女と結婚するが、夜の交渉の時に及ぶ寸前で異常な反応をするというのが話の芯です。精神科の医師の催眠療法による見立てで、彼女が過去に男に犯された時に咄嗟に近くにあった石で殴り殺してしまったことのトラウマが異常な反応の原因とわかります。ところが、医師が静子に「あなたの犯した殺人はとるにたりないものだ」とトラウマを癒すために試みた説得が災いとなって、大介と静子の「やり直しの初夜」に大変なことが起こります。結末は????

 「運のいい男」は、才能ある友人を自殺に追い込み、近年食味評論家として名の売れてきた桜沢雅雄が山陰の潮崎に足を伸ばし、ここでしか食べられない夏牡蠣にありつくが、運悪くこの牡蠣で中毒に、地元の病院で・・・・・・・されてあの世に送られるという不気味な話です。

 「干魚と漏電」は、杉田夫人が移転した先の電気代が高額なため、調査を依頼したところ、原因が地下に埋まっていた冷蔵庫にいきあたり、その中に・・・・・が。冒頭の冷蔵庫のなかで腐っていた古いシシャモとオーバーラップする結末に震えます。

 「旅の終り」は、芭蕉の奥の細道の追体験を趣味としているサラリーマンの権藤栄作のところに取材にきた東都新聞の記者田村がインタビューのやりとりのなかで感じた不信が、直後の栄作の急逝の後にわかった・・・・・・・が発覚する話です。

 「花の器」は、マンションに独り住まいの田倉育子のところに岡山の備前焼の花瓶のお土産をもってきますが、そこで育子はある演技で洋介を追い込んでいきます、それは姉を殺した犯人をつきとめるために育子が刑事と仕組んだ罠でした。育子と洋介とはふたりで犯人と目星がついていた男の吟味をするのですが、最後の育子のしくんだ演技で、一転して・・・・・・です。手の込んだ作品です。

 阿刀田高氏のブラック・ユーモアが健在。マナーとして結末は伏字にしました。おしまい。