おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

グランド・ブダペスト・ホテル

2022-06-16 08:56:48 | 映画
「グランド・ブダペスト・ホテル」 2013年 イギリス / ドイツ


監督 ウェス・アンダーソン
出演 レイフ・ファインズ
   F・マーレイ・エイブラハム
   エドワード・ノートン
   マチュー・アマルリック
   シアーシャ・ローナン
   エイドリアン・ブロディ

ストーリー
ヨーロッパ大陸の東端、旧ズブロフカ共和国の国民的大作家(トム・ウィルキンソン)が語り始めたのは、ゴージャスでミステリアスな物語だった……。
1968年、若き日の作家(ジュード・ロウ)は、休暇でグランド・ブダペスト・ホテルを訪れる。
かつての栄華を失い、すっかり寂れたこのホテルのオーナー、ゼロ・ムスタファ(F・マーレイ・エイブラハム)には、いくつもの謎があった。
どうやって貧しい移民の身から大富豪にまで登り詰めたのか? 何のためにこのホテルを買ったのか? なぜ一番狭い使用人部屋に泊まるのか?
好奇心に駆られた作家に対して、ゼロはその人生をありのまま語り始める。
遡ること1932年、ゼロ(トニー・レヴォロリ)がグランド・ブダペスト・ホテルのベルボーイとして働き始めた頃。
ホテルはエレガントな宿泊客で溢れ、伝説のコンシェルジュ、ムッシュ・グスタヴ・H(レイフ・ファインズ)は、ゼロの師であり父親代わりだった。
究極のおもてなしを信条とする彼は、マダムたちの夜のお相手も完璧にこなし、多くの客が彼を目当てにホテルを訪れていたのだが、しかし、彼の人生は一夜にして変わってしまう。
長年、懇意にしていたマダムD(ティルダ・スウィントン)が殺され、その遺言により貴重な絵画『少年と林檎』を受け取ったグスタヴが容疑者にされてしまったのだ。
ホテルの威信を守るため、謎解きに挑むグスタヴとゼロ。
コンシェルジュの秘密結社クロスト・キーズ協会(=鍵の秘密結社)や、ゼロの婚約者アガサ(シアーシャ・ローナン)の力を借りて、大戦前夜のヨーロッパ大陸を飛び回る。
2人に迫る警察と真犯人の魔の手、そして開戦、果たして事件の真相は……?


寸評
ヨーロッパの古いホテルが舞台で、冒頭に今は亡きある作家の銅像が映り、その作家が若き日にホテルのオーナーから過去の話を聞くというスタイルで物語が展開する。
ヨーロッパ一のホテルといわれた「グランド・ブタペスト・ホテル」のコンシェルジュであるグスタヴが、宿泊客のマダムから遺産としてとんでもない価値の名画が贈られることになったものの、殺人犯の疑いをかけられ逮捕されてしまった彼が、ベルボーイ見習いのゼロとその婚約者の協力を得て事件の真相を探るというストーリーなので、サスペンスのように思えるのだが、それをメインに置きながらむしろ軽妙な映画に仕上げている。

舞台になるホテルの独特の情緒が雰囲気を出していて、スクリーンに映し出されるシーンは絵画的でポップな感じがするし、ファンタジーな遠景や、エレベーターの内装まで凝りに凝っている。
1932年、1968年、1985年と時代ごとに映像サイズや色調を変えるなどの配慮も見えるし、何よりも時代を感じさせるノスタルジックなムードが映画全体に広がっているのがいい。
しかし、そうしたテクニックを追及しているためか、あるいはそれがこの映画の目指すものだったのかもしれないが、そのことにより全体が平板で冗長な感じがすることも否めない。
雪の中の追跡シーンや、ホテルでの銃撃戦などもポップな感じで、リアルを追及していないことがよくわかる。
これはウェス・アンダーソンという監督の作風かも知れない。

遺産を巡る騒動はあっけなく解決して、マダムの長男であるドミトリーが失踪し、グスタヴのものとなったホテルは再び優雅さを取り戻して、グスタヴ立ち合いの下でゼロとアガサは結婚式を挙げることが出来、物語は大団円を迎えたかに見えたところで最後のひとひねりがある。
しかもそれを大上段に構えて「どうだ!」と叫ぶような演出でなく、語りで聞かせる演出に、単純な僕などは拍子抜けしてしまうのだ。

ゼロはルッツへ向かう列車の中で、再び軍の検問で拘束されそうになるが、今度は臨時通行証も通用しない。
前回同様に抗議したグスタヴは、今度は救ってくれる人もなく銃殺されてしまうのだが、そのシーンはない。
ゼロとアガサは生き延びて、この後に二人の間に息子が誕生したようなのだが、ところがこの息子は「プロイセン風邪」であっけなく死去してしまっていて、これも語られるだけで描かれることなない。
銃殺されたグスタヴの遺産を継承したゼロは、国一番の大富豪となるが、国は共産化の中にあって、ゼロの資産は国有化されてしまい、古びたホテルだけが残された。
ゼロから聞いた話を小説にした作家は死亡し、女性は墓地で彼の残した小説を読み終える。
小説家の台座には「鍵の秘密結社」の話にちなみ、無数の鍵がぶら下げられているというセンチメンタルなエンディングである。
この意外とも思える展開はドラマ化されていないし、余韻を残すようなエンディングなのに、その感動がイマイチ伝わってこなかったので物足りなさを感じる。
う~ん、これは感性の問題か・・・。
第64回ベルリン国際映画祭で審査員グランプリを獲得するなど、評価も高い作品だが僕の感性にはなじまない。
エンドロールに至るまで遊び心に満ちた作品であることは確かだけど・・・。


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