おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

新・喜びも悲しみも幾歳月

2024-05-25 08:41:08 | 映画
「喜びも悲しみも幾歳月」はバックナンバーから2020-06-26をご覧ください。

「新・喜びも悲しみも幾歳月」 1986年 日本


監督 木下恵介
出演 加藤剛 大原麗子 田中健 中井貴一
   紺野美沙子 植木等 篠山葉子 岡本早生

ストーリー
昭和48年春、丹後半島の若狭湾口にある経ケ岬灯台では、石廓崎灯台への転勤を控えた杉本芳明(加藤剛)の送別会が行なわれていた。
妻、朝子(大原麗子)、子供たち、部下の長尾猛(田中健)、海上保安学校を卒業したばかりの大門敬二郎(中井貴一)も揃い、和やかな集いだった。
引越を教日後に控え慌しい一家のもとに、芳明の父、邦夫(植木等)が山梨から訪ねて来た。
邦夫が伊豆まで同行したいと言いだし、このため朝子と子供たちは新幹線を利用し、芳明は邦夫と見物かたがた車で行くことになった。
二人は小浜の明通寺で一人旅の若い娘、北見由起子(紺野美沙子)と知り合い、彼女も伊豆まで同行したいと告げた。
2年後、石廓崎を邦夫と共に再訪した由起子は、一人旅の時、失恋し、両親にも裏切られ自殺を考えていたが、邦夫と芳明に出会い思いとどまったと告白し、灯台で働く人と結婚したいと言いだした。
四国と九州を分ける豊後水道の水ノ子島灯台で働く長尾を由起子が突然訪ねた。
長尾は一目逢って由起子の美しさに魅かれるが、自分には不釣合いだと結婚は躊躇した。
その秋、水ノ子島灯台は強烈な台風の直撃を受けた。
生死を賭けた台風との闘の中で長尾は由起子との結婚を決意する。
55年夏、芳明は八丈島灯台に勤務。
子供たちも成長し、長女、雅子(篠山葉子)は東京の短大に入学、二人の息子も英輔(岡本早生)16歳、健三(小西健三)11歳になっていた。


寸評
今では有人灯台はすべて無人化されているので灯台守という職業はなくなっている。
灯台の維持管理は海上保安庁が行っているので描かれたような仕事は保安庁職員が行っているのだろう。
描かれている時代では灯台守が存在していて、家族と共に全国を点々としていたのだろう。
制作された年代も、描かれている時代も違うので、監督は同じでも前作の「喜びも悲しみも幾歳月」とは随分雰囲気が違う。
ただ前作へのオマージュとして植木等が年配の所長に「仕事は大変だったでしょう」と尋ねると、所長は「喜びも悲しみも幾年月でしたわ」と応じるシーンが用意されている。
そして所長が「あの映画は良かったですね」と言うと、植木等も「私も見ました」と言い、二人で主題歌の「喜びも悲しみも幾年月を唄う」。
僕はなぜか感動した。
作中で何度かこの主題歌が流れるのだが、その度に僕は泣いてしまった。
この主題歌あって、この映画である。

加藤剛は全国の灯台に勤務しているので転勤の連続である。
転勤先は灯台のある所だから大抵は海岸沿いのへんぴなところだ。
特に家庭を守っている大原麗子は後始末に新居の整理と大変な苦労だ。
その中で、加藤剛と大原麗子の夫婦愛、家族愛が描かれているのだが、前作の「喜びも悲しみも幾歳月」と大きく違うのは加藤剛の父親である植木等の存在だ。
僕には主演は植木等ではないかと思えるくらい大きな存在となっている。
植木等は後妻との離婚を決意していて、行きがかりから夫婦と同居することになる。
迷惑がられることも有るが、総じて息子の嫁や孫からは大事にしてもらっている。
嫁は元看護師で、「寝込んだって私が世話をします、それが私の仕事だったのです」と明るく答える。
全ての人がそのような気持ちで接してくれるわけではない。
邦夫は田中健長尾から「こんな幸せな老人はいませんよ」と言われているが、本当にこのような老後を送れる人はどれくらいいるのだろう。
邦夫自身も自分は幸せだと言っているのだが、それでも自らの死を考えないわけにはいかない。
邦夫はいい息子、いい嫁、いい孫、長尾や大門といういい息子の後輩たちに取り囲まれていて、老後としては理想とさえ思えてくる。
僕は家族の映画というより、老人問題を先取りしたような印象を受けたのだが、邦夫の言動が喜劇的なところあり、周りの人たちがあまりにも善人過ぎて、どこか現実離れしていると感じた。
一人残った老人の扱いに関してはもっと深刻なものだと想像する。
この映画を再見した時の、僕の年齢がそう思わせるのかもしれない。

東京湾で海上保安庁の観閲式が行なわれ、バンクーバーに出発する英輔の門出を見送る芳明と朝子の姿が描かれるが、僕は親の気持ちに同化して最後の涙を流した。
子供はいつかは巣立っていくことは分かっているのだが、子供を育ててきた親には辛いものがある。


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