おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

荒野の用心棒

2019-05-27 09:07:15 | 映画
「荒野の用心棒」 1964年 イタリア / スペイン / 西ドイツ


監督 セルジオ・レオーネ
出演 クリント・イーストウッド ジャン・マリア・ヴォロンテ
   マリアンネ・コッホ    ヨゼフ・エッガー
   マルガリータ・ロサーノ

ストーリー
無法者の横行する1872年のニュー・メキシコ。
ある日ジョーという、腕利きの男が現われ、この町を二分するロホ兄弟の方に身を寄せることになった。
もう一方の旗頭モラレスの手下四人を鮮やかに片づけたからだ。
彼は酒場の亭主からニつの勢力が町の皆から煙たがられていることを聞き、厄病神どもを始末しようと考えた。
一計を案じて両派を反目させることに成功、ロホ兄弟はモラレス家に殴り込みの準備をした。
兄弟の弟ラモンがマリソルという子持ち女を自分のものにしようと監禁しているのを知ったジョーは、見張りの手下を始末し、母子を逃がした。
これをモラレスの仕業と見せかけたつもりだったが、ラモンに見破られ、マリソルの行方を自白させようと激しいリンチを加えられたが、口は割らなかった。
半死半生のジョーは、スキを見てロホ家をぬけ出し、棺桶屋のオヤジの手引で安全な隠れ家に身を寄せた。
その隠れ家に、棺桶屋のオヤジがロホ一家の手下をだまして手に入れた拳銃をもってきてくれた。
傷つけられた身体で、ジョーは拳銃の早射ちの業をみがいた。
彼の失踪にあわてたラモンたちは酒屋の亭主を捕えて居所を教えろと迫ったが果さず、ついにモラレス家に殴り込みをかけ、不意を襲われたモラレスは簡単にやられてしまった。
ラモンはジョーをおびきよせるため、通りの真中で酒屋の亭主にリンチを加えた。
静まりかえった町に姿を現したジョーは、待ちかまえたラモンから続けざまに銃弾を浴びた。


寸評
クリント・イーストウッドをスターダムに押し上げた作品でもあるが、僕には黒澤明の「用心棒」を盗作したと話題になったことが記憶に残っている。
著作権契約をしていなかったらしいが、これはどう見ても「用心棒」のパクリであることは疑いようがない。
敵対する二人のボス一家を争わせて共倒れを画策するというシチュエーションだけなら盗作騒ぎにはならなかったと思うが、棺桶屋の登場や棺桶を利用して脱出したり、棺桶の中から両者の争いを見物するなどがあっては言い逃れのしようがない。
捕らわれていた女を逃がしてやったりするのもオリジナル作品と同じ内容だ。
所々に西部劇らしいものを持ち込んでいるが、どうせなら丸っきりパクッてしまった方が良かったかも知れない。
しかしまあ、これがマカロニ・ウエスタンなのだと言われれば、それはそれでそのジャンルの中では面白く出来上がっている。
なによりもエンニオ・モリコーネのテーマ音楽だ。
オープニングと同時にテーマ曲のメロディが流れてきて出演者などのタイトルが表示されていくが、それだけでウキウキしてしまう。
途中で流れる口笛のメロディも郷愁を帯びて耳に残る。オリジナルに比べて優れているのはこのメロディだと思う。

途中でメキシコの兵隊が墓場で撃たれる場面があるが、死人なのだから動かないのは分かるけれど、あれだけの銃撃戦の中で全く動かないのに疑問を持たないのは違和感がありすぎる。
いくら事前にモラレスに「死んでいるんじゃないか」と言わせていたとしても、ラモンが全く気付かないでいるというのは不自然だ。
メキシコ軍が機関銃で撃たれて壊滅するシーンでも、あれだけ撃たれて軍服にあなが開くことも血が流れることもないのも迫力不足だ。
もっとも日本の時代劇でもバッタバッタと切り倒しても着物も破れないし、血も流れない時代が長かったけど…。

理屈抜き、人物への掘り下げもないが、その分ただただ娯楽性だけを追求して押し通しているのは評価できる。
残酷描写がマカロニ・ウエスタンの特徴とも言われたが、この作品においては極端な残酷描写はない。
最後の決闘はユニークな設定で、玉込めから始まるのが興味を抱かせた。
主人公が撃たれながらも何度も起き上がるのもオリジナルな脚色で、なーるほどとは思わせる。
二つの敵対組織の間に立って両成敗した主人公が最後に「メキシコにアメリカ、真ん中に俺か…」と言って去っていくのも気の利いたオリジナル処理ではあった。

封切られた頃は、クリント・イーストウッドと言えば僕らの時代の者にはテレビ番組「ローハイド」の若い牧童が印象深かったが、この作品でのスタイルは三船敏郎の素浪人に匹敵して、三船が似たような「椿三十郎」に出たのと同様、イーストウッドも「夕陽のガンマン」にでてイメージを形造った。
荒野の用心棒の原題が「For a Fistful Dollars」で、夕陽のガンマンの原題が「For a Few Dollars More」で、もう一人のスター、ジュリアーノ・ジェンマの「荒野の1ドル銀貨」の原題「One Silver Dollar」とダラーシリーズになってヒットしたのも興味深い。