おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

グラディエーター

2019-05-03 08:07:24 | 映画
「グラディエーター」 2000年 アメリカ


監督 リドリー・スコット
出演 ラッセル・クロウ ホアキン・フェニックス
   コニー・ニールセン オリヴァー・リード
   リチャード・ハリス デレク・ジャコビ
   ジャイモン・フンスー デヴィッド・スコフィールド

ストーリー
西暦180年。ローマ帝国の治世。
歴戦の勇士として名声を馳せる将軍マキシマス(ラッセル・クロウ)は、遠征先のゲルマニアの地で、時の皇帝マルクス・アウレリウス(リチャード・ハリス)から次期皇帝の座を託したいと要請を受ける。
だが、これを知った野心家の皇帝の息子コモドゥス(ホアキン・フェニックス)は、老父をひそかに殺して自ら後継者を宣言、マキシマスは処刑を命じられた。
処刑者の手を逃れたマキシマスだが、故郷に帰り着くと愛する妻と息子は惨殺されていた。
絶望と極度の疲労の末に倒れた彼は、気づけば奴隷商人に捕らわれの身に。
剣闘士を養成する奴隷商人プロキシモ(オリヴァー・リード)に買われたマキシマスだが、持ち前の技量で一躍剣闘士として頭角を現す。
いっぽう、皇帝となったコモドゥスは元老院の反対を無視し、首都ローマの巨大コロシアムで剣闘試合を開催。
プロキシモに連れられ、図らずもローマへ帰還したマキシマスは、死闘の果てに勝利をおさめ、仇敵たる皇帝コモドゥスと対面を果たす。
その夜、かつて恋仲だったコモドゥスの姉の王女ルッシラ(コニー・ニールセン)の訪問を受けるマキシマス。
コモドゥスはルッシラの息子ルシアスを亡き者にしようとしており、彼女はそれを阻止するため、彼に協力を求めたのだ。
姉の裏切りを察知したコモドゥスは策を弄した末、コロシアムでマキシマスと直接対決。
かくしてマキシマスはコモドゥスを倒し、自らも果てるのであった。


寸評
古代史を題材にした作品は数多作られてきたが、この年代の作品の中では出色の出来だ。
時は五賢帝最後の皇帝アウレリウスの時代で、マキシマスは架空の人物であるが本当にいたような錯覚に陥る。
モデルはマクシミリアヌスだとされているが、僕はむしろシリア属州総督のアヴィディウス・カシウスを想像する。
カシウスはアウレリウス病死の誤報を聞いて、後を継ぐのは息子のコモドゥスではなく自分だと皇帝宣言をして謀反を起こしたが3か月後にほろぼされた。
アウレリウスは4人の息子を亡くしていたのでコモドゥスを後継に指名したが、彼の12年に及ぶ治世は「ローマ帝国の災難」と評されるくらいだから悪帝の一人だったに違いない。
アウレリウスがコモドゥスを評価していなかったことは史実通りのようだが、映画はドラマ的に愛されたマキシムと愛されなかったコモドゥスという構図を生み出している。

冒頭から見せる。
辺境の地へ遠征中のローマ帝国軍が蛮族と呼ばれた相手と死闘を演じるが、当時の最新兵器を駆使した彼等は武力でも勝り敵を全滅させる。
ローマ軍は平地戦を得意としていて、数を頼りに攻めてきたとされる蛮族との戦いとは様相が違うがそれでも当時の戦闘をうまく再現していたと思う。
実際の戦闘もこのようなものだったと想像すると、島国の日本が弥生時代だったことを思えば彼等の先進文明に驚いてしまう。
皇帝アウレリウスは後継者にマキシマスを指名したいと漏らすが、息子のコモドゥスによって殺害されてしまう。
この父親殺しのシーンは迫力ある演出だったし、マキシマスの家族が殺される場面も悲劇や憎しみを無理強いするものでない上手い描き方だったと思う。
コモドゥスが「お前も父を愛し、私も父を愛した。だから我々は兄弟だが、お前は父から愛された」というのは今の世の兄弟においても引き起こされる兄弟の確執の構図そのもので胸が痛い。

ここからは第二部とも思える剣闘士(グラディエーター)としてのマキシマスが描かれる。
人よりも動物の値段の方が高いという奴隷状況が描かれ、マキシマスは地方から剣闘士としての名声を高めていくのだが、それはまるで演歌歌手が地方巡業からのし上がってくるような感じだ。
マキシマスは首都ローマの巨大コロシアムでの剣闘試合に登場し、かれはローマ市民から喝さいを受ける人気者となりコモドゥスはマキシマスを殺すことが出来ない。
なんとか抹殺しようとするコモドゥスに姉のルッシラが絡んでいく展開は見るものを引き付ける。
コモドゥスは、「父が望んだようにマキシマスが皇帝についていたら帝国は崩壊しただろう」と述べるが、当時の状況からすれば実力者と言うだけでマキシマスのような男が皇帝に就けば、おそらく内乱が起こって帝国は崩壊に向かって行っただろうから、コモドゥスの読みもまんざらでないと思う。
コモドゥスは自らの名声を高めようと卑怯な手を使ってマキシマスとの剣闘士試合を行う。
剣闘士皇帝と称されるくらい剣闘士試合が好きだったらしいが、映画ではマキシマスを含めてほぼ予想通りの結果となるが、史実のコモドゥスは31歳の若さで入浴中を暗殺されている。
それでも、本作は歴史絵巻としても十分に鑑賞に堪えうる作品だと思う。