おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ブラッド・ダイヤモンド

2017-10-21 08:07:53 | 映画
シエラレオネで見つかった709カラットの巨大なダイヤの原石が12/4にニューヨークで競売にかけられる。
というわけで、この作品を再見した。

「ブラッド・ダイヤモンド」 2006年 アメリカ

監督: エドワード・ズウィック
出演: レオナルド・ディカプリオ ジェニファー・コネリー ジャイモン・フンスー
    マイケル・シーン アーノルド・ヴォスルー カギソ・クイパーズ

ストーリー

内戦が続くアフリカ、シエラレオネ共和国。
漁師ソロモンは平穏に暮らしていたが、反政府軍RUFの襲撃により家族と引き離されてしまう。
ソロモンが連れて行かれたのはRUFの資金源となっているダイヤモンドの採掘場だった。
そこで驚くほど大粒のピンク・ダイヤを発見するソロモン。
これがあれば家族を救えると思い、危険を承知で彼はダイヤを秘密の場所に隠すのだった。
一方、ダイヤの密輸を生業としているアーチャーは、刑務所でそのピンク・ダイヤの話を聞き、ソロモンに接近しようとする。
家族を探す手伝いをする代わりにピンク・ダイヤの在り処を教えてくれと取引を持ちかけるアーチャー。
しかしソロモンは承知しなかった。
一方でジャーナリストのマディーがアーチャーに近付いてくる。
RUFの資金源となっている「ブラッド・ダイヤモンド」の真相を追っている彼女は、アーチャーの持っている情報が欲しかったのだ。
しかしアーチャーは口を閉ざした。
やがてソロモンは難民キャンプで家族と再会するが息子の姿だけが無かった。
RUFが連れ去った可能性が高いので、ソロモンは覚悟を決め、アーチャーの申し出を受け入れた。
こうして異なる目的を持った三人がピンク・ダイヤを求めて過酷な道を歩き出す。
アーチャーはこの暗黒の大陸から抜け出すため、ソロモンは息子の行方を突き止めるため、そしてマディーはアーチャーから決定的な情報を引き出すために……。

寸評
アフリカ内戦の様子が描かれるが、映像はリアルで内戦の悲惨さをいかんなく伝えている。
テロを誘発している武装集団はあちこちに出没していて、ニュースは彼らが引き起こしたテロの惨状を幾度となく伝えているが、それらは事後の様子を伝えるだけの一過性のものである。
それでもその惨状は悲惨さを伝えて余りあるものであるが、むしろここに描かれたような日常茶飯事的な行為こそ内戦の実情なのではないか。
反政府組織のRUFは人々を虐殺していく。
政府が実施する選挙に投票できないようにと腕を切り落としてしまうような残虐行為を行っている。
少年をかどわかしては薬と暴力による恐怖心で洗脳し、兵士として育て上げていく。
村を襲っては虐殺を繰り返す彼等に同情を寄せる観客はいないだろう。
ならば政府軍は正義なのかというと、まんざらそうでもない。
指揮官の大佐は100カラットはあろうかという大きなダイヤを搾取しようともくろんでいるのだから、内戦ぼっ発中といったような混乱期においてはそのような輩も多数出現するのだろう。
戦争のどさくさに紛れて財を成す者は、古今東西を問わず存在しているのだと思わされる。

僕が内戦の悲惨さを一番感じたのは、酒場の主が殺されていたシーンだった。
かれはアーチャーにRUFがもうすぐやってくるだろうと述べていたのである。
彼はなぜその場所から逃ることをしなかったのだろう。
難民となって生きることの過酷さを嫌ったのだろうか。
100万人ともいわれる難民キャンプが映し出されていたが、その様子を見ると命を長らえてもという気持ちが分からぬでもないし、難民キャンプにたどり着くまでの安全が保障されているわけでもないのだ。
どうすることもできなくて惨殺されてしまった市井の人の姿に僕は内戦の悲惨さを感じた。

洗脳されていたソロモンの息子のディアが父親の語りで目覚めていくが、そんなに簡単に洗脳が解けるものかと思いながらも、息子探しの結末としてホロリとさせられた。
内戦を通じた銃撃戦やアクションシーンもふんだんにあるが、家族全員が再開するシーン、ソロモンが証言台に立つシーンと共に感激をもたらすシーンとなっていて、作品に格調を与えている。
アーチャーがスーパー・ヒーローとして、100カラットはあろうかという大きなダイヤをソロモンに与えて去っていくという展開もあっただろうが、アーチャーは撃たれて瀕死の状態となって一人で政府軍を迎え撃つことになる。
しかし彼の最後の場面は描かれることはなく、その姿は我々の想像に任されている。
無残に撃ち殺されるシーンを描かないことで彼に対する余韻が生まれたと思う。
アフリカに生まれたために悲惨な人生を送らざるを得なかった犠牲者の一人なのである。
部族間の争いがあるとはいえ、内戦を引き起こし千村を持ち込んでいるのは白人社会なのだ。
富を独占したい一部の白人社会は内戦の継続を望んでいる。
いつの時代にも戦争を欲望の糧にしている人間がいるものなのだ。
給料の何倍もの婚約指輪を贈る人がいる限り、誰よりも大きな宝石を身に着けたい人がいる限り、ダイヤモンドに翻弄される下層の人たちが出てきてしまうということだろう。