おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

許されざる者 2013年 日本

2017-09-20 07:19:30 | 映画

監督:李相日
出演:渡辺謙 柄本明 柳楽優弥 忽那汐里 小池栄子 近藤芳正
   國村隼 滝藤賢一 小澤征悦 三浦貴大 佐藤浩市

ストーリー
舞台は明治13年の北海道。
女郎屋で若い女郎なつめ(忽那汐里)が、客・佐之助(小澤征悦)に顔を切られ、佐之助と弟・卯之助(三浦貴大)が捕まった。
村を牛耳る警察署長・大石(佐藤浩市)は、使えなくなった女郎の弁償に馬を持ってこいと話し、二人を解放。
納得がいかないお梶(小池栄子)ら女郎は、二人の首に懸賞金をかける。
一方、開拓が進められている北海道に、かつて人斬り十兵衛との異名を持ち恐れられていた幕府軍残党・釜田十兵衛(渡辺謙)がいた。
十兵衛はアイヌの妻に先立たれ、二人の息子と農家をしていたが、作物は育たず、生活は困窮していた。
そんなとき、かつて共に行動した馬場(柄本明)が訪ねてくる。
馬場は、懸賞金を目当てに二人を始末しようとしていて、十兵衛にも加勢を求めた。
再び人を殺めることをためらう十兵衛だったが、子供たちを食わせるため、馬場と共に村に向かう。
馬場と十兵衛は、アイヌと和人のハーフの青年・五朗(柳楽優弥)に会い、道案内をさせることにした。
三人は村に着き女郎屋に行くと大石がやってきた。
十兵衛が人斬りと知っていた大石は、十兵衛から刀を奪い、暴行を加えて顔に切り傷をつける。
十兵衛はなつめらの看病で一命を取り留める。
十兵衛が回復し、馬場、五郎と共に卯之助を見つける。
馬場が放った鉄砲が卯之助の太股にあたり、女郎の顔を切ったのは兄だと命乞いをする卯之助。
十兵衛が止めを刺したが、殺しにおじけずいた馬場は自分には無理だと去って行ったのだが…。

寸評
リメイク作品となると、どうしてもオリジナルと比べてしまう。
そして評判の良かったオリジナルに比してリメイクは見劣りしてしまう事が多い。
直前にクリント・イーストウッド監督・主演になるオリジナルを再見したこともあって、ついつい比較しながら見ている自分がいた。
それでも本作は成功した部類で、結構力強い作品となっている。
これがオリジナルであったならまた違った印象を持った作品になっていたかもしれないなとも思う。
舞台がアメリカ西部と北海道との違いはあるが、大きな違いはラストの違いと三人の出会いの仕方と、アイヌという人種問題を付加したところかな・・・。
ラストの処理の仕方は、その後の十兵衛や子供たち、五朗と女郎などの行く末を色々想像させた。
旧幕府軍の残党である十兵衛は、政府軍から執拗な追跡を受けることは明白で、そのため子供たちのところへ戻ることはできなかったのだろうと想像する。
十兵衛の行動はオリジナルより本作の方が説得力がある。
自分が日本人であるからか、北海道の自然描写と雪景色の美しさが心にしみて、自然背景はこっちのほうがいいなと思いながら見ていた。
笠松則通のカメラワークは作品への貢献度大である。
そして蝦夷地の先住民であるアイヌを絡ませていることが物語に深みを持たせていたと思う。

オリジナルもそうだが、この話にはスゴイ悪人が出てこないので、元来単純な僕はもう一つのめり込めない作品なのだが、作者の意図もそこにあるのかもしれない。
事件の発端の女郎にしたって、客のナニが小さいと笑うなんて客商売にあるまじき行為だ。
もちろん、それに切れて顔を切り刻むなんて言語道断の行為なのだが…。
主人公たちは時代が幕末の動乱期とはいえ、見境もなく人を殺していたわけで、反面敵対することになる警察署長は必死で治安を守ろうとしているだけのようにも思えるのだ。
三浦貴大演じる卯之助なども、根はいい奴じゃないかとなる。
このあたりが題名の由来なのかも知れない。

十兵衛は人斬りと恐れられた殺戮者から、一度は妻によってまっとうな精神を与えられ、その妻のいなくなった今の生活も苦しいなかで人間として生きている。
しかし、経緯から再び元の世界へと戻っていってしまう。
その苦悩を演じた渡辺謙は、人間の持つ多重性を表現していて好演していたと思うが、無防備に旅籠に現れ何の抵抗もなく半殺しに会うなど、すこし端折った演出に肩透かし感を覚える。
反面、銃を脇役において刀での乱闘を描いた演出は上手いと思った。
バッタ、バッタと斬り倒すのではなく、十兵衛の刀が錆びていることもあるが、突き殺すアクションが多い。
そのことでより迫力が増していたと思う。
前述のように決してオリジナルに引けを取らない作品に仕上がっていると思うが、警察署長(保安官)はジーン・ハックマンの方が貫録が有ったように思う。