ささやんの週刊X曜日

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

かなしみの海 日本海

2017-12-16 14:29:12 | 日記
きのうのことだった。真冬の日本海で違法操業を行う北朝鮮の漁船に対して、
海上保安庁の巡視船が激しく放水攻撃をして、退去を迫っている映像がテレ
ビのニュースで流された。エアコンでほどよく暖められたリビングで、ぬく
ぬくのほほんと夕食を食べながらこのテレビ映像を見て、私は落ち着かない
気持ちになった。北朝鮮の漁民たちはなぜこの時期、真冬の「大和堆」に大
挙して押し寄せるのか、その理由が脳裏をかすめたからである。

彼ら漁民たちは、食糧不足という「国難」を克服するため、上部の国家機関
から命じられ、漁獲高のノルマを課されて、危険な荒海へと送り出されたの
だろう。その意味では、彼らは、国家によって過酷な戦場に送り出された兵
士にも等しい。

粗末な武器を手にして、荒海の前線で必死に戦うあわれな北の漁業兵士たち。
日本の国家機関である海上保安庁は、そういう「北の兵士たち」と戦ってい
る、という明確な認識のもとに、激しい放水攻撃を行っているに違いない。
これは戦いなのだ。戦場では、同情や人情は禁物である。「あの人たち、ず
ぶ濡れになって大変だろうなあ。寒いだろうなあ」などと思うことは許され
ない。

海保がお茶の間に放水攻撃の映像を流すのは、「自分たちはきっちり仕事を
して、日々戦っているのだ!」とアピールするためだろう。最近とみに増え
ている北の漁船を、危険な侵入者( invader )として印象づけようとする意
図があるのかも知れない。

日本の近海で操業する北朝鮮籍の漁船が増え、それに伴って北の難破・漂流船
もこのところ急増している。これら北の漂流船に対して、〈悪〉や〈危険〉の
レッテルを貼ろうとする印象操作は、菅官房長官の発言にわかりやすい形で示
されている。北のオンボロ木造船が北海道の松前沖に漂着し、乗組員3名が窃
盗容疑で逮捕されたことは、まだ記憶に新しい。これに関連して、菅官房長官
は「工作員など、いろいろな問題の可能性もある」と述べたという。菅長官は、
「北朝鮮の漁船と思われる船で、実は軍所有の木造船が日本海に漂着している
例が今月から見られ始めている。意図も含め聞き取り調査をしている」とも述
べている。

漂着船を国家がらみの工作活動と関連づけ、これをさらに「拉致被害者」に関
連づけることで、負のイメージを与えようとする政府側の意図が透けて見える。
「北の脅威」を「国難」として喧伝し、トランプ米大統領の尻馬にのって、軍
備を増強しようとしている日本政府である。北朝鮮と敵対する日本政府の高官
からすれば、北の漂着船に負のレッテルを貼りたくなる気持ちは分からないで
もない。

それでは現地の住民たちの目には、北の漂着船はどう映っているのか。朝日
新聞(12月13日付)は次のように報じている。

9月以降、町(青森県深浦町)に流れ着いた木造船は7隻に上る。
住民の不安に加え、船の後処理も悩みの種だ。船は地元市町村に引き渡され、
産業廃棄物としての処分費用がかかる。町では1隻を処理したところ約46
万円かかった。残りの処理に計640万円かかるというが、漂着物処理のた
めの国などからの補助金はあと約70万円しか残っていない。県に補塡
(ほてん)を求める方針だが、県側も「短期間にこんなに集中するとは思
わなかった」と戸惑う。

この記事から察する限り、地元の住民にとって、漂着船は迷惑なゴミ以外の
何ものでもないようだ。ゴミの製造責任者は、言わずと知れた豚魔大王であ
る。だがそんなことは、地元住民には与り知らないこと。冬の日本海はゴミ
が漂う暗いかなしみの海である。
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