ささやんの週刊X曜日

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

袴田さんの無罪確定

2024-10-09 10:26:58 | 日記
きょうのトピックは、なんといっても

袴田さん無罪確定へ

だろう。朝日新聞の記事には、

1966年に静岡県のみそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして強盗殺人罪などで死刑が確定した袴田巌(いわお)さん(88)に対し、再審(やり直し裁判)で無罪を言い渡した9月26日の静岡地裁の判決について、最高検は8日、控訴しないと発表した。

とある。

これで袴田さんは、晴れて無罪放免となったわけだ。いや〜、よかった、よかった。


かつて私は袴田さんのケースをとりあげ、次のように書いたことがある。

「死刑を宣告された死刑囚は、刑の執行までの一定期間を、狭く薄暗い独房で悶々と過ごす。死刑囚は『いつ縛り首にされるのか』と死の恐怖に怯え、他人との交流を絶たれた孤独な環境の中で、徐々に精神を蝕まれ、人間性を失っていく。刑の執行よりも前に、彼/彼女は人間性(=魂)を奪われ、『生ける屍』と化しているのだ。屍と化した者、つまり死者をことさら『死刑』に処する必要があるだろうか。死刑を宣告された者は国家によって、二度殺されるのである。」
(2023/10/7《死の恐怖について》)

別の言葉でいうなら、「人は人の間でだけ人間になる」(フィヒテ)とする考え方だある。独房に長いあいだ監禁されていた袴田さんは、そのことによって「人の間」に立つことを禁じられ、「人間になる」ことを阻まれ、人間性(=魂)を奪われて、一個の「生ける屍」と化してしまったのだ。


けさの朝日新聞にのっていた袴田さんの近影は、袴田さんの中にまだ彼の〈魂〉が戻っていないことを示していた。

これからは、失われたこの〈魂〉を袴田さんの中に呼び戻そうとする長いリハビリの苦闘がはじまるのだろう。
長いといっても、袴田さんの年齢を考えれば、残された時間はそう長くはないに違いないのだが。

コメント
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