一人の髪の毛の長い背の高い細身の女性が机に座り、ノートパソコンを叩いています。
彼女の名はレイカ(31)・・・とある雑誌の取材記者です。
「えー、それでは、タケルさん、夜の日本学「戦国武将考察編」・・・お願いします。今日は誰について語ってくれるんですか?」
と、レイカはノートパソコンを叩きながら、赤縁のメガネを手で直し、こちらを見つめます。
「うん。そうだな・・・今日も前回の続きと行こう・・・「織田信長さん」を続けて見ていこうよ」
と、タケルは話し始めます・・・。
「ま、織田信長さんの話は長いから・・・まあ、のんびり楽しんでいこうよ」
と、タケルは言葉にします。
さて、今日の「夜の日本学」はじまり、はじまりー・・・・。
「ま、今日は織田信長さんを経済的視点で見ていこうと思うんだ」
と、タケルは言葉にする。
「織田信長さんは父の信秀からも教えられていたんだろうけど、戦に勝つには莫大な収入をどう確保出来るかが鍵だということを知っていたんだね」
と、タケルは言葉にする。
「多分、平清盛のあり方からも勉強しただろうけど・・・どうやったら、莫大な金を稼げるか・・・平清盛は中国との貿易によって莫大な富を生み出し」
「その富を公家たちにバラマキ、政治的地位を高めていく手法をとっていたね」
と、タケルは言葉にする。
「これは現代の僕らの生き方にも通じる話なんだよね。実際、どうやったら、莫大な富を生み出せるかは・・・男だったら、皆、毎秒考えているんではなかろうか?」
と、タケルは言葉にする。
「そうですね。収入を確保するのは、父親の仕事、その収入と引き換えにサービスを与えるのが母親の仕事ですものね」
と、レイカが言葉にする。
「問題はそこに愛が介在しているか、どうかだ・・・二人の関係に愛の介在が消去されれば・・・その夫婦はたちまちにふしあわせスパイラル一直線の「理性婚」と化する」
と、タケル。
「愛が介在していれば、しあわせスパイラルにある「本能婚」のまま・・・ということですね?」
と、レイカ。
「そういうことだ」
と、タケルは言葉にする。
「まあ、僕は「しあわせになる為の知恵」を商品にすることで、収入を増やしていく道を指向しているけどね」
と、タケルは言葉にする。
「「しあわせになる為の知恵」こそ、世界中の人たちが一様に欲しがる素敵な商品ですものね?」
と、レイカ。
「そ。さらに言えば、この商品は僕にしか作れない・・・世界的にもオンリーワンの価値だ。希少性の高い商品と言えるね」
と、タケル。
「ま、街を見回せばそういうオンリーワンの価値に辿り着いている人はたくさんいるよ。むしろ、そういう人間達による競争社会であるのが、この日本社会と言えると思うね」
と、タケル。
「日本人は皆、莫大な富を生み出すべく、他者との差別化を図っている。サラリーマンくらいだよ、そういう競争をしていないのは・・・」
と、タケル。
「会社に入れれば、同じ社員同士、同じような価値さえ示せれば、それでいいのだから・・・その代わり、会社に所属している限り、拘束されていることになる」
「会社から命令されれば、どんな深夜にでも叩き起こされ、現場に行き、対応することが求められる。それでいて給料の昇給ペースはよくない」
「その価値は毎月、同じ日に給料が出ることにある。「安定」・・・これだけがサラリーマンの価値になってしまうんだね」
と、タケル。
「競争が無い代わりに、長い拘束時間と安い給料・・・それに対して、競争の末、高い価値や世界的にもオンリーワンの価値を獲得出来れば、莫大な富を獲得出来る」
と、タケル。
「つまり、最終的には生き方として、どちらをチョイスするかだ。莫大な富の獲得を目指し一匹狼として生きるのか、安定を求めて競争の少ないサラリーマンでいるのか」
と、タケル。
「わたしは、一匹狼のタケルさんを支持しますけどね。もちろん」
と、レイカ。
「ま、莫大な富の裏側には、そういう生き方の違いがある・・・話を信長さんに戻そう」
と、タケル。
「信長の価値を最初に見抜いたのは斎藤道三だったことは有名だね。彼が天文二十二年(1553年)四月、斎藤道三と会見した時、彼はその軍勢七百人のすべてに鎧を」
「着させて、鉄砲五百丁、三間槍五百を装備しているんだよね。三間槍も織田家独創で、他家より長いモノだったし、それであれば、他家と戦っても容易に先制攻撃が出来て」
「勝てるというわけだ。しかも鉄砲に至っては鉄砲伝来が天文十二年(1543年)八月二十五日であることを考えると、僅か10年後の話なんですよ」
と、タケルは説明する。
「それが20歳の信長の本気で戦に勝つ姿勢を表しているわけ。道三は「兵器の卓抜、数量の多少が戦を支配すること、あのおおうつけはよく存じおる」と舌を巻いてる」
と、タケル。
「例えばこのエピについて考えれば、信長さんはもう20歳の頃から、「知恵者」として「全体の因果関係」を使っているわけですよ」
「「鉄砲こそが戦において超有用」と見抜いた信長の目の確かさと、その銃にかけられる財力・・・鉄砲さえ多く装備出来れば戦に勝てる確率が高くなると」
「信長さんは20歳の段階で見抜いて、「絶対の因果関係」として、実際に装備していたんだから、すごいよね」
と、タケルは言う。
「信長さんの財力はどこから来ていたんでしょう?」
と、レイカ。
「尾張一国を取るまでは、父信秀の遺産を投入していたのかもしれないね。信秀は交通の要衝でもある、港町津島に代官を置いていたようだから、ここで税金を取っていた」
「と考えるのが自然だろうね」
と、タケル。
「つまり、信長さんは、子供の頃から財力の作り方を知っていたんだよ。それをどう分配していくか・・・鉄砲に重点的に分配しながら、槍などの通常兵器にも」
「分配している・・・このあたり、「信長の野望」なんかで何度も勉強したけどさ。鉄砲は他の兵器に比べて馬鹿高いからね。弱小大名の頃には負担になるんだよね」
と、タケル。
「それなのに、槍と同数備えていた信長さん・・・しかも20歳にしてだからね。そりゃあ、道三も舌を巻くよ・・・その財力と信長の知恵者ぶりに、ね・・・」
と、タケル。
「そうですね。今まで、そういう視点でこのエピを見てこなかったから、新鮮です。というか、やっぱり、一事が万事なんですね。特に「知恵者」の場合」
と、レイカ。
「そう。それに、だ・・・鉄砲を運用していかなければならないわけだから、硝石その他の火薬なども入手する必要もあるわけだ。だから、いわゆる交易ルートも作る必要が」
「信長側にはあるわけで、それはやはり堺との関係性がすでに出来上がっていると考えるのが自然だよね。もちろん、家老達が補佐してはいただろうけど」
「「知恵者」信長さんだ・・・そのすべてを把握していたと見るのが自然だろうね。だから、自然、商売のやり方にも詳しくなっていったんだろう」
と、タケル。
「彼は平信長と署名してしまうくらい平清盛を尊敬していた・・・だから、交易に秀でていた平清盛を参考に自分を作り上げていったんだろうね」
と、タケルは言葉にする。
「「知恵者」は「知恵者」を知る。そして「知恵者」は過去の「知恵者」の成功から学び、失敗からも学ぶ・・・そして、新たな自己をつくり上げるんだ。そのいい例だよ」
と、タケルは言葉にする。
「それを見倣って、タケルさんも信長さんや平清盛さんから「知恵」を拝借しているんですよね?新たな自己を作り上げる為に」
と、レイカ。
「ま、そういうことだ。彼らは出し惜しみせずに素敵な「知恵」を与えてくれるからね」
と、タケル。
「大事な事は、信長は鉄砲という兵器が戦において雌雄を決するチカラを持っている事を見抜いている点だ。それが天正三年六月の長篠の戦いにつながっていくわけだから」
「天正三年が1575年ということを考えると、斎藤道三との会見の1553年4月から22年の歳月が戦における鉄砲の大量使用という「知恵」につなげるんだね」
と、タケル。
「さて、織田家の収入の変遷という視点で考えてみよう。まあ、「信長の野望」をやり慣れている身としては収入と言えば現金収入と米の収入があるわけだ」
と、苦笑するタケル。
「最近の奴はやってないけど、以前の「信長の野望」はそういう感じだった。まあ、いいか。とすれば、治水が大事になってくるわけだ。武田信玄が信玄堤を築いたように」
と、タケル。
「ちょっと調べてみると、信秀、信長のこの時代、米作りの技術が飛躍的にあがっているのね。農耕具の改良が進んで、谷田での農業だったものが平野部の農業に変わって」
「行く時代だったんだ。だから、米の取れ高の脅威的アップがまずあった時代だったんだね。それに治水技術も飛躍的にアップしている。ま、信玄堤の例じゃないけど」
「信長も濃尾平野の治水整備に尽力している」
と、タケル。
「んで、米収入の確保をしっかりと図った信長は現金収入の確保もしっかりしている。上で話した津島の整備以外に商業地でもあった守山と他の商業地との商人の」
「自由往来を認め、さらに商人達を保護する政策も実施しているんだね。もちろん、同じ商業地でもあった熱田神宮周辺も整備され、商業地の繁栄を促し」
「そこからあがる税収のアップをシビアに図っているのが信長さんなんだよね」
と、タケル。
「で、この政策を推し進めたのがいつか?という話になるんだけど、これが驚くことに斎藤道三と会見した天文二十二年から始めているんだね。20歳だよ、信長さん」
と、タケル。
「すごいですね。「知恵者」は若いうちから「知恵者」なんですね」
と、レイカ。
「つまり、信長さんは、二十歳になる頃には、商業政策や農業政策に実際に尽力していたわけで・・・だからこそ斎藤道三への強烈なプレゼンも出来たわけだ」
と、タケル。
「三間槍五百と鉄砲五百丁は、その商業政策と農業政策の成果・・・ということになるんですね」
と、レイカ。
「そ。とそれがわかれば見えてくるものがある・・・斎藤道三は信長の戦への意識の高さと同時に為政者として商業政策、農業政策の成果を誇れる」
「信長の優秀な為政者ぶりも同時に見抜いたんだよ。商業政策に秀でていれば、自然、領地の民への税金だって、他国より安く出来る」
「それが出来れば、多くの民が信長の元へ集まってくるから、さらに税収も増え、それらは商業政策や農業政策に良い波及を与える」
と、タケルは言葉にする。
「つまり、大金が集まるスパイラルにいる信長・・・それが出来る信長の為政者ぶりすら、道三は見抜いたに違いない」
「なにしろ、斎藤道三こそ、「楽市楽座」を最初に構想し、設置した人物だ・・・もちろん、その後、信長もこの偉大な知恵者の「知恵」に見習い」
「「楽市楽座」をその領地・・・もちろん、美濃攻略後の美濃に置くことになるわけだけどね。その道三だからこそ、信長のすごさを見抜くんだね」
と、タケルは言葉にする。
「もちろん、それをすべて斎藤道三が見抜いてくることを信長は知っているし、期待しているわけ。その為にそういう軍勢で会見に出向いているわけだからさ」
と、タケル。
「じゃあ、信長は自分の為政者としての能力の高さを斎藤道三にプレゼンするためにわざとそういう軍勢を率いていったと?」
と、レイカ。
「ま、そういうことさ。商業政策と農業政策に秀でた為政者こそ、税金を安く出来るから、民衆に愛され、大金集中スパイラルに入れるわけだから」
と、タケル。
「信長はそれを知っていた・・・「絶対の因果関係」を使う信長だ。彼は既に二十歳にして、大金集中スパイラルにいたんだね」
と、タケルは言葉にする。
「すごい・・・信長って、「絶対の因果関係」を使いまくる、本当に「絶対の知恵者」だったんですね」
と、レイカ。
「まあ、でも、この「知恵」・・・僕らでも使えるところがあるよ・・・それがどこだかわかるかい?レイカちゃん」
と、タケルは笑いながら質問する。
「えーと、ちょっとわかりませんね・・・」
と、レイカ。
「簡単なことさ。今でも変わらないのは、民衆に愛されれば、大金集中スパイラルに入れる、と、そういうことさ」
と、タケル。
「僕はそれを「知恵」をドンドン作ることで実現していこうと思っているんだ」
と、タケルはニヤリとする。
「それなら・・・タケルさん、絶対に出来ますよ!」
と、レイカは叫ぶ。
「ま、信長さんを追っていると、いろいろ僕らにも成功の果実が落っこちて来ると・・・僕らはそれを上手く利用すればいいのさ。それが今日の結論になるね」
と、タケルは結ぶ。
「わかりました。タケルさん・・・その続きは、お酒を飲みながらにしませんか?」
と、レイカはやわらかな笑顔で赤縁のメガネを外し、髪を解いた。
「レイカちゃん、本気だね。じゃ、気合いれて飲もうか!」
と、笑顔のタケルは机を片付けだすのでした。
(おしまい)
信長さんが生きるテーマとして使いまくった「絶対の因果関係」・・・これを使いながら生きていけば・・・望みの未来を作るのも思いのまま・・・だと思っていますけどね。
さ、将来、僕がどうなっていくかはま、これからの話ですけどね。
楽しい未来にしていきたいと思いますね。
さあ、楽しく飲みましょう!
ではでは。