木浦で暮らす息子夫婦の子どもをしばらく預かる事になる海女のチュニ。孫娘のウンギにとって父親はヒーローなのだが、孫娘のそんな様子を見る事にさえどこか微妙な感情を持つのは、彼女が子どもを育てる事に苦労してきたせいなのだろう。そんなウンギの様子から父親が事故で入院していること知るチュニ。
夫が回復することを祈る嫁と子どもらしく父親が回復することを無条件で信じる孫娘。「百個の月にお祈りすれば願いが叶う・・・」父親に教えられた事を「お父さんはうそをつかない」と信じる孫娘の言葉を『子どもの言葉だから・・・』と聞き流せばいいはずなのに、きつく当たってしまうチュニの様子を見ると、彼女が生きてきた道が厳しい道だったことが判る。ウンギに父親の言葉を信じさせてあげたい周りの大人たちの本気の行動は、それまでどんなにチュニに助けられていたかを表すものでもあるのだ。
そんな大人たちの本気の行動は、母親を顧みる事をしないトラックの移動販売を生業にするドンソクにも向けられる。自分の母を伯母さんと呼び、母の体調も気にせず邪見に扱う彼をその都度戒める市場の人々。「周りの人間は優しいおばあさんと思っているかもしれないが、それは何も知らないだけ・・・」とかたくなな態度を見せるドンソク。
何かあるとはわかってはいても、癌の手術を受ける事もせずに、自分に残った時間を悟り、身の回りの整理を始めるドンソクの母の様子を知っている周りの人々は、黙ってはいられないのだ。誰の言葉も耳に入らないドンソクの心を動かすのは「(子どもの頃、なぜあんなに自分に冷たかったのか・・・)知りたかったら尋ねればいい。今はまだ聞く事が出来るでしょ」というシンプルなソナの言葉だ。
時間が経っても消えない心の傷と、人はどんな風に向き合えばいいんだろうか・・・・