Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

主導権を握って

2015-10-10 01:00:00 | 雪3年4部(遠藤の~それぞれの意見)
スッカラカーン



翌日の大学構内で、雪は財布を開いておったまげた。

なんと札が一枚も入っていないのである。

えっ?!なにコレ?!???



雪は動揺のあまり、視線を宙に彷徨わせながら記憶を辿った。

ラ、ランチ代が‥。

昨日ガソリン代いくら渡したっけ?確か6~7千円‥




先輩に渡したあのお金は、どうやら全財産だったらしい。

雪は携帯を取り出すと、ネットバンキングで口座残高を確認した。

しかしその残高も凄惨極まりない‥。



まずい。

今月の生活費の逼迫加減に、雪は頭を悩ませた。



ともかく突然ではあるが、緊急節約期突入だ。

‥とりあえず今日のお昼は抜きにしよう‥ご飯抜いたら集中出来ないけど‥しょうがない

「お~い」



すると後方から、聞き覚えのあるハスキーな声が掛かった。

振り向いてみると、そこには河村静香の姿がある。

「一人で何してんのぉ?」「あれ?」



その隣には佐藤広隆だ。

色々突っ込むところはあれど、雪は適当な別れの挨拶を口にし背を向ける。

「私、忙しいのでこのへんで‥」

「広隆がランチご馳走してくれるんだけど、アンタも行く?」



「えっ?」



静香のその提案に、雪は思わず振り向いた。

静香と佐藤は親しげに会話を交わす。

「いいでしょ?」「いいけど。ていうか知り合いなのか?「遠慮しないで~」



そして静香は雪に向き直り、ニッコリと笑ってこう言った。

「うちら仲良くするんだもんねー?」



「‥‥‥‥」



思わず本音が顔に出る雪。

しかし財布が空の今、正直に言ってその静香の提案はありがたかった。

「そ‥それじゃお恥ずかしながら‥」「そんなこと言わなくたって」

「今度高いモン奢んなさいよ?」「まるで自分が奢るかのように言いますね



まるで親しい友人のように、静香は雪と肩を組む。

何食べたい~?

さ、触らないで下さいよ!



仲良しでしょ~?



そんな雪と静香の姿を、銅像の影から見つめる人影があった。

河村亮である。

「何だあのメンツは‥?てか誰だよあの男



佐藤広隆のことを知らない亮には、今の状況がちんぷんかんぷんだった。

亮は首を傾げながら、上機嫌で二人を連れて歩く姉の後ろ姿を見つめる。



胸の中がモヤモヤと煙って行く。

けれど訝しく思うその感情とは別に、違う感情が記憶の彼方から呼び覚まされる。








高校の時の記憶だった。

まだ三人の関係が、本当の家族のように親密だった時の‥。



その歯車が、狂い始めた時のことを思い出す。

「よぉ!」



教室に着いて、いつも通り淳に向かって挨拶をした時だった。

「ああ」



普段とは違う苦い顔、歯切れの悪い返事。

そのまま背を向けた淳を見て、亮は目を丸くする。



ギシギシと、歯車が軋む音が聞こえる。

運命の風が、絶望へと向かって強く吹き荒れて行く‥。

「‥‥‥‥」



亮は静香達の後を追うことなく、自分が向かうべき方向へと足を踏み出した。

記憶の蓋を閉め、感情を殺して歩いて行く‥。












一方大学近くの焼肉屋にて、三人は昼食を取っているところだった。

雪は改めてこの不思議なメンツを見回してみる。



中でも予想外なのは、佐藤広隆だった。

雪は去年の記憶を思い出しながら、なんだか感慨深い気持ちに駆られている。

まさか佐藤先輩にお昼奢ってもらうなんて‥しかもこの人と一緒に‥

暫く前までは‥



思い返してみれば一年前の自主ゼミで、

「お前も青田目当てでここに来たんだろ?!」とキレられたこともあった。



あれからまだ一年だ。人生、不思議なことは多い。

それにしてもこの二人、一緒に教養の授業受けてるんだっけ‥。どうやって‥



雪が二人が仲良くなった馴れ初めについて考えを巡らせていると、

不意に静香がこう話し掛けて来た。

「てかさー、淳ちゃんお小遣いとかくれないの?

なんかさっきお金に困ってそうだったじゃん」




さらりと口に出す”淳ちゃん”の名前。

雪はピリピリしながら、静香に向かって釘を刺す。

「ったく‥変なこと言うなら話し掛けないでもらえます?

「アンタ何も言わせてくれないわね」



静香はキョトンとしながらそう言った後、携帯の画面を佐藤に向けて甘えたような声を出した。

「あー!てかさぁ広隆ぁ~!これ超可愛くない?

広隆は女物なんて見ないからよく分かんないかもしんないけどぉ、なんてったって材質が‥」




なんと静香は、雪が見ている前で佐藤にバッグのおねだりを始めたのだ。

雪の頭に乗ったサイレンが、ピコンピコンと点滅を始める。



同じ学科の先輩が、静香の毒牙に掛かるピンチだ。

雪はおねだりを続ける静香を制し、会話の主導権を握るべく身体を乗り出した。

「それにこれ、意外に手頃な値段‥」

「あの!佐藤先輩!財務学会で今週までに提出のアレ、まだやってないですよね?!」

「え?うん‥」「ですか!私もまだなんです!」



雪は強引にガンガン話を進める。

「それじゃご飯も食べ終わったところで、

一緒に図書館行きませんか?!」


「あぁ‥そうするか」



しかし佐藤は、隣の静香が少し気になるようだ。

「でもそれじゃ‥」



携帯片手に呆然としている静香を見て、雪は笑顔でハキハキと話を進める。

「静香氏も一緒に行って勉強すればいいじゃないですか!美術でも税務会計でも!」

「はぁ?静香氏ぃ?」

「それじゃなんて呼びましょうか?」



静香は低い声を出し、雪に向かってこう言った。

「‥いいわ」「そりゃ良かった」「はい!それじゃ‥」



地を震わせるような声で。

「そうするべきかしらねぇええ~~」



顔中怒りに歪めながら、静香は恐ろしいほどのオーラで雪に迫った。

しかし雪も負けていない。こんな彼女と相対するのはもう慣れっこだ。

「仲良くしたいんですよね?私と仲良くしたいんなら、勉強しますよ」



主導権は握った。

そう確信して雪は微笑む。

「いいでしょ?」



ピキッと顔を引き攣らせながら、静香はじっと雪を睨んでいた。

雪は笑顔を崩さぬまま、皮肉を込めた言葉を口に出す。

「就職しなきゃですもんね~?Z企業に」

「まぁ~~このお姉さんのこと考えてくれてちゃってぇぇ~



そんな二人に挟まれて、思わず佐藤は心の中で一句‥。

俺最近 この人達に 振り回されてる(字余り)





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<主導権を握って>でした。

‥今回の佐藤先輩‥これは‥



確信犯ですよね‥?!



スンキさんてば‥。


あとここでの雪の回想↓



一年前の佐藤先輩がキレているのは、雪ちゃんのはずです。髪色は静香ですが‥。

ミスですかね。



そして個人的に銅像に隠れて静香達を窺う亮さんがツボでした。



だんだんと左手事件に近付いて来ている感じですね。

早く真相が知りたい‥!

次回は<似た者同士>です。


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