赤山雪の今の状況は、というと。
机の上に広げたテキストとノートを前にして、船を漕いでいる最中である。
しかも今は授業中‥。
授業が終わると、教室から学生達がぞろぞろと出て来た。
その中には、小走りで移動する雪の姿もある。
時刻はお昼。
聡美と共に学食でランチ。
そして時は過ぎ、日が沈んだ。
雪は聡美と手を振り合って別れる。また明日ね、と言って。
帰りの地下鉄の中でも、また勉強。
今日は座れなかったので、立ちながらテキストを持ち、暗記する。
帰宅。
ご飯を食べて、お風呂に入って、そこからまた勉強タイム。
遅くまで机に向かってると、両親が帰宅する物音が聞こえてきた。
腰が痛いと嘆く父に、早く横になってと母が言っている。
時計を見ると、もう午前様だ。
思わず大きなアクビが出た。
それでもまだ寝ずに、雪は勉強に集中した。
期末は絶対に落とせない。
カリカリとノートを文字で埋めていく音だけが、部屋に響いている‥。
朝。
鳥の鳴き声が青空に響き渡る中、雪は地下鉄の階段をダッシュで登っていた。
時刻は丁度通勤通学のラッシュ。
雪は大勢の人に揉まれながら地下鉄で移動する。
ぎゅむっと潰されながら延々二時間弱。
ヨレヨレになったところで、今日も大学に到着だ。
構内を歩いていると、ポケットの中の携帯電話がメールの到着を知らせる。
週末にイルミネーション見に行く?
雪ちゃんが前、見たいって言ってたやつ
先輩からのメール。
雪は目にクマを浮かべながら、あ‥私それ見たかったんだよね‥と弱々しく呟いた。
すると後方から、不意に声を掛ける人物が一人。
「おーい!赤山ぁ~」
振り返ってみると、そこにはあまり話したことのない同期が、
手を振りながら笑顔を浮かべている。
同期はニコニコしながら、雪に話し掛ける。
「どうしたの?」「なぁなぁ、これ見て!俺、過去問を一つ手に入れたんだ!」
「これと赤山のヤツ、交換してみない?!そうしない?!」
ジャーン!と言いながら、同期はその過去問を雪に差し出した。
背景に黄色いお花が見える‥。
すると瞬間、雪の身体が吹っ飛んだ。
「ゆきぃぃぃ!マジで一緒に行かない気なのぉぉ~?!」
伊吹聡美は大きな声でそう言いながら、雪のことを引っ張って行く。
「そうだってば」「うふふんそれでもぉ~」
同期は呆気に取られながら、「そ‥それじゃ後でまた‥」と弱々しく声を掛けて去って行った。
聡美は雪と肩を組み、ウインクする。
救出成功 ん、サンキュ‥
過去問をめぐる攻防は、未だ雪を巻き込んで進行中だ。
雪は聡美にお礼を言いつつ、二人は肩を並べて歩き出す。
「てかマジで一緒に行かないの?面白そうなのにぃ。
太一のヤツがモデルなんて長続きしないだろうし、次はいつそんな姿拝めるか~」
「うーん残念だけど‥。アンタ私の状況分かってるでしょ‥TT」
今日は、太一のモデル撮影を見に行く日なのである。聡美は行くが、スケジュールの都合上雪は行けない。
聡美は顎に指を沿わせながら、ウンウンと頷いてこう続けた。
「そっか。それじゃ仕方ないね。残念。ま、そんじゃちょっくら行ってくるわ!」
「え?授業全部終わったの?」
「いやちょっと早く行ってみようかなと思って。とにかく‥」
「今日は授業パース!!バイバーイ!」「へっ?!」
聡美はそう言い残して、走って行ってしまった。
雪はそんな聡美の背中を見送りながら、呆然と立ち尽くしている。
「は‥はは‥なんか裏山‥」
雪が必死で守ろうとしているものを、いとも簡単に手放す人が居る。
雪は楽しそうに駆けて行く聡美の残像を追いながら、肩を竦めた。
今日は一人か‥と呟きながら、荷物を背負い直す。
重たい鞄には今日も、沢山のテキストが入っている。
聡美の姿が完全に見えなくなってから、雪はゆっくりと歩き出した。
もうじき授業が始まる。
高くなった秋の空を見上げながら、雪は思った。
皆が同じ状況なわけじゃない。と。
肩が触れるほど近くに居ても、メールで簡単につながっていても、自分と他人は別の人生を歩いている‥。
そんなことを思いながら、雪は今日も真面目に教室へと向かって歩いて行った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<それぞれの状況>でした。
雪ちゃん、本当にずっと勉強してるんですね‥。韓国の大学生はみんなこうなのか‥?
報われて欲しいですね‥。
次回は<それぞれの意見>です。
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机の上に広げたテキストとノートを前にして、船を漕いでいる最中である。
しかも今は授業中‥。
授業が終わると、教室から学生達がぞろぞろと出て来た。
その中には、小走りで移動する雪の姿もある。
時刻はお昼。
聡美と共に学食でランチ。
そして時は過ぎ、日が沈んだ。
雪は聡美と手を振り合って別れる。また明日ね、と言って。
帰りの地下鉄の中でも、また勉強。
今日は座れなかったので、立ちながらテキストを持ち、暗記する。
帰宅。
ご飯を食べて、お風呂に入って、そこからまた勉強タイム。
遅くまで机に向かってると、両親が帰宅する物音が聞こえてきた。
腰が痛いと嘆く父に、早く横になってと母が言っている。
時計を見ると、もう午前様だ。
思わず大きなアクビが出た。
それでもまだ寝ずに、雪は勉強に集中した。
期末は絶対に落とせない。
カリカリとノートを文字で埋めていく音だけが、部屋に響いている‥。
朝。
鳥の鳴き声が青空に響き渡る中、雪は地下鉄の階段をダッシュで登っていた。
時刻は丁度通勤通学のラッシュ。
雪は大勢の人に揉まれながら地下鉄で移動する。
ぎゅむっと潰されながら延々二時間弱。
ヨレヨレになったところで、今日も大学に到着だ。
構内を歩いていると、ポケットの中の携帯電話がメールの到着を知らせる。
週末にイルミネーション見に行く?
雪ちゃんが前、見たいって言ってたやつ
先輩からのメール。
雪は目にクマを浮かべながら、あ‥私それ見たかったんだよね‥と弱々しく呟いた。
すると後方から、不意に声を掛ける人物が一人。
「おーい!赤山ぁ~」
振り返ってみると、そこにはあまり話したことのない同期が、
手を振りながら笑顔を浮かべている。
同期はニコニコしながら、雪に話し掛ける。
「どうしたの?」「なぁなぁ、これ見て!俺、過去問を一つ手に入れたんだ!」
「これと赤山のヤツ、交換してみない?!そうしない?!」
ジャーン!と言いながら、同期はその過去問を雪に差し出した。
背景に黄色いお花が見える‥。
すると瞬間、雪の身体が吹っ飛んだ。
「ゆきぃぃぃ!マジで一緒に行かない気なのぉぉ~?!」
伊吹聡美は大きな声でそう言いながら、雪のことを引っ張って行く。
「そうだってば」「うふふんそれでもぉ~」
同期は呆気に取られながら、「そ‥それじゃ後でまた‥」と弱々しく声を掛けて去って行った。
聡美は雪と肩を組み、ウインクする。
救出成功 ん、サンキュ‥
過去問をめぐる攻防は、未だ雪を巻き込んで進行中だ。
雪は聡美にお礼を言いつつ、二人は肩を並べて歩き出す。
「てかマジで一緒に行かないの?面白そうなのにぃ。
太一のヤツがモデルなんて長続きしないだろうし、次はいつそんな姿拝めるか~」
「うーん残念だけど‥。アンタ私の状況分かってるでしょ‥TT」
今日は、太一のモデル撮影を見に行く日なのである。聡美は行くが、スケジュールの都合上雪は行けない。
聡美は顎に指を沿わせながら、ウンウンと頷いてこう続けた。
「そっか。それじゃ仕方ないね。残念。ま、そんじゃちょっくら行ってくるわ!」
「え?授業全部終わったの?」
「いやちょっと早く行ってみようかなと思って。とにかく‥」
「今日は授業パース!!バイバーイ!」「へっ?!」
聡美はそう言い残して、走って行ってしまった。
雪はそんな聡美の背中を見送りながら、呆然と立ち尽くしている。
「は‥はは‥なんか裏山‥」
雪が必死で守ろうとしているものを、いとも簡単に手放す人が居る。
雪は楽しそうに駆けて行く聡美の残像を追いながら、肩を竦めた。
今日は一人か‥と呟きながら、荷物を背負い直す。
重たい鞄には今日も、沢山のテキストが入っている。
聡美の姿が完全に見えなくなってから、雪はゆっくりと歩き出した。
もうじき授業が始まる。
高くなった秋の空を見上げながら、雪は思った。
皆が同じ状況なわけじゃない。と。
肩が触れるほど近くに居ても、メールで簡単につながっていても、自分と他人は別の人生を歩いている‥。
そんなことを思いながら、雪は今日も真面目に教室へと向かって歩いて行った。
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<それぞれの状況>でした。
雪ちゃん、本当にずっと勉強してるんですね‥。韓国の大学生はみんなこうなのか‥?
報われて欲しいですね‥。
次回は<それぞれの意見>です。
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