Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

賢明な対処

2015-10-14 01:00:00 | 雪3年4部(遠藤の~それぞれの意見)
家の近くまで帰って来た雪が空を見上げると、空はまだ明るい街の明かりを反射し、鈍く光っていた。

そんな空を眺めながら、雪は思う。

今までスムーズに運んでいたことが、ある日突然行き詰まることもある



「あれ?」



視線の先に、見覚えのある人影があった。

フードを目深に被ったその人は、一人その場に佇んでいる。



少し離れているので、その表情は窺えない。よく見ると彼は、

カフェを経営する雪の叔父と、向い合って何やら会話をしている。



雪はその場に突っ立ったまま、彼の姿を見ていた。

ここ最近の彼とのぎこちなさから、すぐには声を掛けられない。



叔父は心配そうな顔をしながら、彼に何か声を掛けていた。

それを聞く彼は、あまり目立ったリアクション無く、ただ雪の叔父の言葉に頷いている。



暫くすると会話も終わったのか、二人はそれぞれの方向へと踏み出した。

叔父はカフェに戻り、彼は雪の居る方向へと歩みを進める。






するとこちらへ向かってくる彼と、目が合った。

雪は「あ‥」と言葉に詰まりながら、じっと彼のことを見つめている。



河村亮は雪から視線を外さず、それでも歩調を緩めはせず、ただこちらに向かってくる。

二人の間の距離が縮み、亮の視線は雪を見ている為下を向く。



雪はそんな亮のことを、ぽかんと口を開けながら見つめていた。

大きな切れ長の目が、亮の色素の薄い瞳を追って上を向く。



そしてすれ違うその時、雪と亮は同時に口を開いた。

「あの、河村氏ー‥」

「よぉ!」



亮はバッと手を上げて雪に応えると、そのまま立ち止まらずに歩いて行った。

雪は思わず呼び止める。

「えっ?いやあの!ちょっと‥!」



振り返った雪の目に映ったのは、

まるでガッツポーズのような格好をした亮の姿だった。

「”いやあの!ちょっとぉ~!”」



亮は雪の口調を真似すると、その後は鼻歌をハミングしながら歩いて行った。

あんぐりと口を開けた雪の目には、彼の背中しか入ってこない。



思わず首を捻った。

どうして河村氏は、最近ずっとこうなのだろう。

対処の仕方が分からないー‥。

「へ?はぁ‥?」










「知らないの?アイツが夜ここに来て、練習してること」



叔父は水筒いっぱいのコーヒーを差し出しながら、意外そうな顔をしてそう言った。

雪はそれを受け取りながら、「本当?」と初耳のその話を聞き返す。

「あぁ。コンクールに出るからって。ヘッドフォンして練習してるから出来はよく分からないけど、

指が踊ってるみたいに動いてたよ」
 「あ‥」



リハビリの成果は着実に出ているようだ。

雪は宙を眺めながらこう思う。

すごく回復してるみたい‥






以前ここのガレージで「Maybe」を弾いてもらった時は、指がつっかえて演奏が止まった。

あれから時が過ぎ、彼の左手はきっと快方に向かっているのだ。

雪が思いを馳せていると、叔父が心配そうな顔をしながら口を開いた。

「何にしたって気掛かりだよ。口は悪いが、情に厚い良いヤツじゃないか。

だろう?」


 

「上手くいくといいけど‥」



彼の行く末を心配しているのは、雪だけではない。

それでも以前は気兼ねなくその関係性を形作っていた彼と、

今自分はどうしてこんなにぎくしゃくしているんだろう。






花火が打ち上がり消えるように、急に冷め切ってしまう日がある。



ではこんな日はどうやって、

どんな方法で対処すれば、賢明なのだろうか。




自分自身が思う”賢明な対処”を、他人が織りなす予測不能な出来事に対して行う。

考えれば考える程、とてつもなく難しいことだと思い知らされる。

彼らは自分とは違う人間で、誰しもが、違う生き方や異なる考えを持っているのだ‥。











帰宅した雪は自室にて、クローゼットを開けて服の選別をしていた。

引っ張り出してきた去年の服を、今年も着られるかどうかチェックしている最中だ。

これはまだイケる‥これはダメだ



お財布の中身が空の今、頼れるのは今持っている物だけである。

最大限去年の服で持ちこたえてみよう‥

どうにかなるハズ‥。にしても、安物は全部ダメだ‥




とりあえず選別は終わった。

が、部屋の中がグチャグチャだ。

あぁ‥こんなことしてる場合じゃないのに‥



溜息を吐きながら、雪は今やるべきことを考えて気を引き締める。

課題と‥期末テストと‥



すると傍らに積み上げてあった本に肩が触れ、

その山を崩してしまった。

「うわっ?!」



部屋の中はもう、何がなんだか‥。

「‥‥‥‥」



雪は天井を見上げながら、ぽつりと独りごちる。

「あーあ‥全部片付けて‥勉強して寝なきゃ‥」



散らかった部屋は、なんとなく雪の人生を象徴しているかのように混沌としていた。

一つ片付けたら一つまた散らかって、やるべきことは常にその後ろに控えている。




空には半月が浮かんでいた。

薄曇りの空に、鈴虫の鳴く声が響いている。


皆既に寝静まった夜更けに、虫の音を聞きながら、雪はまたふと一人思う。

絶えずゴタゴタがあって、

絶えず賢明な対処が要求される日々。




23歳の初冬。



人々の間で曖昧に揺れていた夏から半年、色々なことを経験した。

そしておそらくこれからも、様々なことに直面し、乗り越えて行くんだろう。

自分の判断は”賢明な対処”だっただろうかと、いつだって自身に問いかけながら。



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<賢明な対処>でした。

真面目な雪ちゃんらしい、真面目なモノローグを挟む回でしたね~^^

そして叔父さんはまたしても、水筒いっぱいのコーヒーを提供してあげてるんですね。

雪ちゃんの胃が荒れそうですが‥


次回は<淡い期待>です。


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