Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

断りの選択

2015-09-10 01:00:00 | 雪3年3部(牙を潜める虎~了)


キイ、と静かにドアが開いた。

教授の声だけが響く授業中の教室内に、青田淳は入室する。



淳は、同窓会を控えた雪と大学で待ち合わせをしているのだが、

まだその時間までにはたっぷりと余裕があった。

懐かしい経営学科の構内を歩く内、顔なじみの仲間たちが居るであろう教室へと、

出向いてみようと思ったのである。



静かに席に就こうとする淳を見て、柳楓が声を上げた。

「へっ?!」



淳は笑顔で柳に近づくと、彼の隣に座る。

「よぉ」「おい!どうしたよ?!なんだよいきなりー!アレ?顔どした?



久しぶりに会う淳を前にはしゃぐ柳。

授業中に響くその声に、前の方に座る学生達が皆振り返った。

「え?青田?」「青田先輩だ」



「青田来たの?」「マジでー?」



淳は彼らに向かってニッコリと微笑んでみせた。

教授が皆を軽く叱る。

「ほらほら、静かに!」



「授業中じゃないか。出席取るぞー」



ざわめき立った教室内は再び静かになり、皆黒板の方を向いた。

柳は幾分小さな声で、淳に話し掛ける。

「赤山ちゃんは?」

「まだ授業が終わってなくて。それまでここで待とうかと思ってさ。皆の顔も見たかったし」

「あは」



教室では教授が出席を取り始めていた。

淳にとっては懐かしい授業風景も、今も尚それを繰り返している柳には退屈に感じられる。

「あ~ぁ、大学に淳は居ないし、ありえねーこと次々起こるし‥」



淳の前では気が緩むのか、柳は愚痴をこぼした。

そんな柳に向かって、教授から喝が飛ぶ。

「静かに静かに!」

「はーいすんませーん」



大学内で唯一と言える、心を許せる存在、柳楓。

淳が彼を見つめる眼差しは、とても穏やかだ‥。







「さようならー」「ありがとうございましたー」



授業が終わり、学生達はゾロゾロと教室を出て行った。

そして淳の周りには、見知った顔の学生達が集いワイワイと騒がしい。

「おー元気だったかー?」「久しぶり!何か大学に用事?」



糸井直美はじめ、皆が淳に駆け寄る。淳は笑顔でそれに応えた。

「教室に先輩が居るなんて、なんかすごい久しぶりな感じです~」

「俺も久々の授業で新鮮だったよ」



すると、ちょうどこの授業が最終授業の学生達が大半だったので、皆でどこかへ行こうという流れになった。

「それじゃ久々の再会を祝して、皆でカフェにでも行きませんか?」「いいね~!色々話してーし!てか顔どうしたんよ

「前も一回大学来てましたよね?あたし達その時会えなくてー」



その流れを汲み、腕時計を見る淳。

「うん‥」



そして淳は、ニッコリと頷いた。

「そうだな。行こうか」「行こ行こ!」「大学のカフェが良いな」



ワイワイと人に囲まれるこの感覚。

淳はその感覚を久しぶりに味わっていた。

顔のない人達が、自分の周りに笑顔を浮かべて集う。

「なぁ今晩メシどう?俺ら今日早く終わったし」

「それいいねー!あたしらももう終りなの!久々に皆で飲み会しよっか?」



以前までの淳なら、その誘いに頷いていただろう。

けれど淳はニッコリと微笑みながら、断りの返事を選択する。

「今日俺、雪と約束があるんだ。晩メシまでは居られないよ」



「行こう」と淳は口にすると、そのままカフェへと歩いて行く。

女子達は「あ‥彼女ね‥」と幾分残念そうに呟いて、その背中を見つめていた。








「それで次の面接の時にさぁ‥」「だよなー段々キツくなるよ」

「てかCPA(公認会計士)のテストどうだった?」「俺も国試受けよっかな~」

「今更ぁ?」「じゃあ経営指導士は?」



三年生、四年生達の会話は、将来のことや資格のことばかりだ。誰もが皆不安そうな顔をしている。

そんな中、そこから一歩抜け出しているのが淳だった。

「淳君、会社はどう?」

「うん、まぁ頑張ってるけど、大変なことも多いよ」



インターンに通う彼に、皆が質問を繰り出す。

するとあることを思い出し、直美が声を上げた。

「あっ!そうだ!」



「淳君、もしかして卒業試験の過去問とか持ってたりする?」

「おーそうだよ!卒検が流通管理と会計問題とかありえねーよな?」



わっ、と場が湧いた。

淳ならば卒業試験の過去問、並びに勉強したであろうノートなど、完璧にまとめてあるだろうから。

けれど淳はまたしても、断りの返事を選択する。

「あ‥それは雪にあげたけど」



淳の答えに皆が目を丸くした時、淳の携帯が震えた。

ブルル‥



淳は届いたメッセージを読むと、すぐに席を立った。

「雪の授業が終わったみたいだから、もう行くね。楽しかったよ」

「お、おう。じゃあな!」



柳がその場から立ち上がるより先に、淳は既に彼らの元を離れていた。

小さくなる淳の後ろ姿を、皆あんぐりと口を開けて見つめている。



皆の口から溜息が漏れた。

「なーんだ」「約束があんなら‥まぁ‥」「前と雰囲気違くない?」



淳から何も得られなかった彼らは、不満気な顔でブーブー言った。

「あー過去問!淳君だけが頼りだったのになぁ」

「マジで試験のせいでいっぱいいっぱい‥」



その中でジャンパーを着る彼は、なんとか淳の持つ過去問を手に入れられないかと画策する。

「青田の番号は皆持ってるとしても‥誰か個人的に貰えそうな人‥」



彼の言葉を聞いて、皆一斉に柳に視線を送る。

淳から個人的に貰えそうな人は‥この人くらいのものだ↓



柳はハハハと笑いながら、困ったように頭を掻いた。

「いや‥俺はもうパスしてっからさ~ハハハ‥」



柳が選択した断りの返事を受けて、場はしらっと白けてしまった。

皆、不満気に押し黙っている。

柳は、気まずそうに顔を逸らした‥。






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<断りの選択>でした。

いつもなら晩御飯まで奢らされ、過去問もあげなくてはならなかったであろう淳が、

雪ちゃんの存在のお陰で皆からの要求を断る、というこの回。

「君も俺も変わってないだろう」と呟いていた淳ですが、どうやら彼も変わって来ているような、そんな感じ‥?


個人的には柳(顔付き)が出てきて嬉しい回でした‥^^


次回は<同窓会>です。


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