Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

分かっていたこと

2015-09-30 01:00:00 | 雪3年3部(牙を潜める虎~了)
雪はプリプリと怒りながら、大股で構内を歩いていた。

ったくもう‥!



思い出すのは、自販機の前で河村静香と皮肉を言い合った先程の場面だ。

何を考えているのか分からない静香に、雪のイライラは募る。



それでも雪の心にあるのは、苛立ちだけでは無かった。

今までには無かった感情が、心の片隅に芽生えている。

でも喧嘩じゃ敵わないかもだけど、

口喧嘩なら負けないかも‥!




いつもペースを崩されっぱなしの雪も、さっきは少し対抗出来ていたような気がするのだった。

いつの日か自分がペースを握り、彼女を言い負かすことが出来るかもしれない‥。



そんな思いを胸に歩いていると、ふと見覚えのある姿が視界に入った。

「ん?」






カーキ色のジャンパーのポケットに手を突っ込んで、一人歩く彼。

グレーのキャップを目深に被っているので、その表情まではよく分からない。



雪はその場に立ち止まり、彼を凝視した。

河村氏?



音大の方行くのかな‥?



亮の纏う神妙な雰囲気に、なんとなく声を掛けられなかった。

小さくなる彼の背中を、雪はその場に立ち止まったまま見送る。

コンクールの準備頑張ってるんだな‥真剣な顔して‥

良かった‥







見上げた先には、音大の校舎があった。

あの中にあるピアノ室で、今から彼は練習するんだろうか‥。



暫し鍵盤を弾く亮に思いを馳せる雪。

しかし以前彼から言われた言葉を思い出し、ハッと我に返る。

いけないいけない。関係ないって言われたじゃん!

私は勉強に集中集中!




そうよ!ガリ勉まっしぐらー!



力強く拳を天に掲げ、雪は授業へと向かった。

しかしその先は‥。



<教養の授業中>



教養課程のこの授業では、再びグループワークをさせられる。

しかし同じグループのメンバーはというと‥。

メンバー1:欠席



メンバー2:寝てばっかり



メンバー3:始めはやる気だったけど、

段々テンション落ちて行ったっぽい




チーン‥。



しかしそれは、最初から分かっていたことだった。

頑張ろっと



”なまじ他人に期待してヤキモキするより、一人でやってしまった方が気楽”。

それは一年前も今も、変わっていない‥。








ここはA大学音楽学部。

ピアノの練習室が並んでいる廊下。



河村亮はその一室で、コンクールの為の準備をしているところだった。

長い指が、白と黒の鍵盤をはじく。







神妙な顔をしてピアノを弾く亮。彼には独特の雰囲気があった。

練習室から漏れる音につられ、女子学生達が窓から中を窺っている。

 

彼女達が目にしたのは、旋律に合わせて微かに身体を揺らす、亮の背中だった。

彼の弾く音が、狭い練習室に響き渡っている。






曲はもう終盤だ。

アンダンテからのリタルダンド。もうじき曲が終わる。







最後の音を奏で終わった亮は、静かに鍵盤の上に手の平を置いた。

手に伝わる音の余韻。

その僅かな振動が止まると、練習室はしんと静まり返った。





どこかにぽっかりと穴が開いているかのようだ。

音も気持ちも何もかもが、そこへ吸い込まれて行ってしまった。



亮は視線を動かし、部屋の隅に置いてある自分のボストンバッグの方を見た。

ファスナーが少し開いている。



その中にあるのは、一冊のテキストだった。

<高校卒業認定試験>








頭の中に、あの日々のことが蘇る。

笑いながら、しかし時に真剣に勉強を教えてくれた、彼女の横顔もー‥。








ファスナーの隙間から見えるテキストは、あの時感じた気持ちを想起させる。

だから彼は、固く心の扉を閉める。

自らに誓った、その決意がぐらついてしまわない様に‥。







亮はテキストから目を逸し、ぼんやりと前を向いた。

自分が進むべき、行くべき場所を、ただひたすらに見つめながらー‥。



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<分かっていたこと>でした。

亮さんの感情を抑えている表情が、切ない‥。



この日の朝、店で雪と会った時もこういう顔してました。



そしてコンクールは何を弾くんでしょうね。

その時亮は何を思うのか‥先の展開が気になります。


次回は<男のプライド>です。

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