「空振りOK」3月4日
『緊急時役立つのか 虐待相談ダイヤル 煩雑手続き』という見出しの記事が掲載されました。記事によると、『189番で、4分の3の電話は自走相に接続される前に切られている実態が明らかになった』ということです。ちなみに189番とは、児童虐待の通報のために設けられたものです。
こうした状況に陥った原因として、『音声案内の長さや操作の手間』『通話料が負担』などが指摘されているそうです。記事では、都内の例が示されていましたが、担当者に繋がるまでに、3~4分はかかりそうです。通話は20秒10円ということですから、仮に状況説明に10分かかれば300円になります。わざわざ、通報を少なくするために制度設計したような印象さえ受けます。
そして、こうした状況があるにもかかわらず、『多くの自治体が「思ったより電話は少ない」「189番によって通報や相談が増えた印象はない」と口をそろえた』というのですから、呆れてしまいます。
現場を知らない「お役人」が制度設計をするとこうした失敗をしがちです。「お役人」は悪意があってしているのではありません。善意で知恵を絞った結果がこうなるのです。行政において大切なのは、正確さであり、効率性を高めることであり、そのことによって行政資源を効率よく使うことです。音声案内が丁寧すぎるように感じられるのは、正確さを期すためです。そして虐待通報・相談という本来の機能と異なる電話やいたずらやからかいの電話、自相への苦情電話などが紛れ込まないようにするのは、数少ない相談員の専門的資質という行政上の資源を無駄な対応に費やさないためです。通報・相談ダイヤルの趣旨と役割をきちんと理解した市民の適正な電話だけを専門家である相談員が対応することによって、効率よく事件対応が出来ると考えるのです。さらに、20秒10円の電話代も、フリーダイヤルとした場合、公費の支出が増えること、イコール市民の負担が増えることを避ける公務員としての使命感でもあるのです。
ですから私は今回の事態について、自治体の担当者を責める気にはなれません。もし、児童虐待対応の専門家である相談員がたくさん配置されており、電話の中に一定割合で混ざってしまういたずらや的はずれな電話、相談員が対応すべきではない苦情電話などを含めて対応可能な体制であれば、こんなことはしないで済んだはずです。つまり、あらかじめ何割かの空振りを認める度量が首長にあれば、ということです。
以前もこのブログに書きましたが、私が教委に勤務しているとき、いじめ問題が注目されるようになり何らかの対応が求められるようになったことがあります。そのときの教育長は、事務局サイドの懸念を押し切り、全ての児童生徒に教委宛着払いで届くはがきを配布しました。いたずらであってもすべてのSOS葉書について指導主事に対応させる、もし予算が超過したら自分が全て負担すると言い切り、子供のSOSに耳を傾ける姿勢を打ち出したのです。
こうした「蛮勇」こそが、単なる行政マンには出来ないトップに求められる資質なのです。私は首長の教育行政についての権限を強化する改革には反対の立場ですが、もし、首長がかつての私の上司のような決断を下すのであれば、少しはメリットもあると言えると思います。今回の問題を、担当者の意識不足に収斂させてはいけないと思います。
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