ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

罰のないきまり、実行できない罰

2022-02-20 08:02:35 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「いけないと言うこと」2月9日
 『フッ素ワックス禁止 関係者困惑』という見出しの記事が掲載されました。『スキーの滑走性を高めるフッ素ワックスを巡り、国際スキー連盟(FIS)が環境への配慮から使用を禁止した』ことについて報じる記事です。
 記事によると、フッ素ワックスの使用を禁止したものの『検知する機器がなく今季も競技会での検査は行いません。FISの発表でも罰則は設けないことになっていますが、ルール化された経緯を理解いただき、順守くださるようお願いします』という状況で、実際には、『検査なく「みんな暗黙でドーピング」』なのだそうです。
 禁止されている、罰則もある、しかし違反を見破る方法はない、罰せられないのならと多くの人が違反する、真面目に守ると損をする、真面目に守ろうとしていたものまで違反するようになる、ルールを破ることが常態化する、誰もルールを守ろうとしない無法地帯が出現する、という構図です。
 スキー連盟の話ですが、同じ構図は、学校にもしばしば現れます。学校や教員が定めるきまりやルールについて、違反しても罰せられない状況が続き、最終的には「先生の言うことなんか聞かなくてもいい」という考え方がまん延してしまうのです。こうなれば、いわゆる「学級崩壊」は確実です。
 こうした状況に陥るのには様々な要因がありますが、一番多いのが、教員の軽率な発言が原因となるケースです。例えば、授業中の私語に手を焼いている教員が、「おしゃべりをして3回注意されたら給食抜き」というルールを宣言してしまうとします。実際には、こんな注意をしたところで私語はなくなりません。やがて3回注意される子供が出てきます。教員はどうするか、子供たちは固唾をのんで見つめています。
 よほど無知な教員でない限り、給食を食べさせないことが体罰に当たることを理解しています。そんなことをしたら大問題になることも。そこで、「今日だけは特別にお目に見てあげる。次からは絶対にダメだぞ」と言い、宣言した罰を実行しません。この一部始終を見ていた子供は、教員の動揺に気付きます。
 そして、わざと3回注意される子供が続出します。そして「先生、僕給食食べちゃいけないんだよね」と言い、食べようとしません。こんな子供が3人、4人と出てきます。何人もの子供に給食を食べさせないという体罰を行ったら、その教員は処分を受けることは確実です。完全に教員の負けです。一度こうしたことが起きれば、その教員の権威は失墜します。
 綸言汗のごとし、一度口にした言葉を取り消すことは大きな代償を伴います。教員は、一時の激情に任せて出来もしない罰を口にしてはなりません。

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