ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

東京都の主権者教育に

2016-02-21 08:08:31 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「首長の正論」2月17日
 東京都の桝添知事の記者会見でのやりとりの概要が掲載されていました。『選挙権年齢が18歳に引き下げられる。若い世代にいかに都政をわかりやすく伝えるかが必要になる』という問いに答えて、知事は『基本は義務教育の社会科の授業や高校で憲法とか基本的なことを教える。その中で都政の仕組みとかをやっていきたい』と語られたようです。
 常識的かつ現実的な正論だと思います。私はこのブログで、主権者教育というとすぐに「模擬投票」「身近で具体的な事例を話し合う」というような目に見えやすい学習活動に焦点が当てられることに懸念を表してきました。そして、社会科で学ぶ「基礎」を充実させることこそが、本当の意味での主権者教育になると主張してきました。
 ですから、知事の発言は、まさに我が意を得たりの思いです。憲法が権力者の権力乱用を防ぐものであること、三権分立による相互チェックが独裁を防ぐ装置であること、民意の反映の全体には正しい情報の公開が必須であることなどを基礎中の基礎として位置づけ、そのことを学ぶために、先の大戦に至る我が国の歴史、第一次大戦を誘発した暴走する世論の危険性などを具体的な教材として、学ばせることが必要なのです。
 そうした基礎がしっかりと定着した後に、原発再稼働の問題や基地移転の問題、機密法制定や集団的自衛権の解釈改憲などの問題について、調べたり話し合ったりするのでなければ、一見活発な学習が行われているように見えても、それは上辺だけのものになってしまいます。
 教員時代に、上辺だけ活発な社会か授業の実践家であった私が言うのですから間違いありません。識者の中に、「基礎は十分だ。今問われているのは応用だ」「基礎的な知識はたっぷりと注入されているが、自分で考える授業な不足している」というような主張をする人がいますが、その現状認識は間違っています。
 小中学校でも、高校でも、政治の関わる基礎的な知識の習得は全く不十分なのです。二院制や与野党、違憲立法審査権などの言葉を覚え、その事典的な意味を説明できるということをもって、基礎的な知識は十分というのであれば、あながち間違いではありませんが、それは理解ではなく暗記に過ぎません。
 民主主義を支える諸要素が確立されてくる歴史を背景にその真の意味を理解することこそが今の時点での主権者教育に求められているのです。
 東京都の主権者教育に注目です。

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