◎自民党・創価学会亡国論 屋山太郎 2001/8
創価学会本当の恐ろしさ・ほか…<三笠書房 1500¥>…より
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あとがき
日本の不況は、さながら蟻地獄に落ちた趣である。皆が再生のための方策を示して見せるのだが、どの処方斐が病状にピッタリ効くのか、まったくわからない。
こういうときに必要なことは、改めて日本の姿を眺めてみることだろう。日本のどこが、他の先進国と違うのかを突き詰めていくと、日本の病理がどこにあるのかがわかってくる。
日本経済再生の基礎は、金融にあるというのが常識である。長い間の護送船団方式に守られてきた日本の銀行は、かっては世界のトップ二〇行のうち半分をも占めた。それが、バブル崩壊とともに、いつ潰れてもおかしくないというほどの落ち目になった。
これは、市場と遊離した金融制度を維持したために、日本では土地本位制という奇妙なものさしでカネが動くようになっていたのが原因だ。今襲ってきている未曾有の大不況は、その土地本位制が崩れて、金融体制がグローバル・スタンダードに近づいているという現象ではないのか。
フランスの銀行員と話したことがあるが、銀行員の醍醐味は、ベンチヤー企業に融資を決定する瞬間にあるという。投資の決定に対して全知全能を傾けるときは、勝負のときに似ているという。
日本の銀行員は、土地の評価を誤りさえしなければ務まる。日本の土地本位制は、銀行員を不動産業者と同列にした。銀行の不良債権は、切っても切っても、時がたつとまた増えている。土地価格が底抜けに抜けて、いつまでたっても底値にぶち当たらないのだ。銀行にとっては不幸なことだが、そもそも土地本位制などという尺度が間違つていたのである。日本の地価は、とことん下がって他の先進国並みになって当然だ。ただ、衝撃的下落を和らげる政策は必要だろうが、こんな奇妙な土地本位制が消滅することは結構なことだといわなければならない。
日本軽済の病理の一つは、官業がしゃしゃり出て民業を圧迫していることだ。旧国鉄を見れば一目瞭然だが、官業はそれ自体が非効率的なものだということを知るべきだろう。
普通の国なら、一〇〇億円の橋をつくる場合には、一般競争人札で建設会社を決定し、橋ができれば官僚の仕事はそれでおしまいである。
ところが、日本では五〇〇兆円にも及ぶ財政投融資資金があるため、これを利用して架橋公団をつくる。橋を一本架けただけで公団を潰すわけにはいかないから、二本も三本も架ける。四国に四本目の橋を架けようという馬鹿げた話まで出ている。
また、民間でできる分野からは、官は一切手を引くべきだ。そうすれば、民間同士の競争か起こって、あらゆる分野が活性化するだろう。特殊法人を潰す作業よりも、民営化するか、それを養う財政投融資資金の財源である郵便貯金を廃止、ないしは分割民営化するのが手っ取り早い。そもそも、財政投融資制度というものは、他の先進国のどこを見ても存在しない。すべての経済分野から社会主義的要素を払拭すベきだ。
日本ほど中央集権の厳しい国はない。明治以前の三百諸侯時代の多様性を取り戻す政策が必要だ。地方分権の要諦は、各自治体が自らの財源を持つということである。地方交付税交付金や補助金で、中央が地方をコントロールしている点が最も悪い。所得税の税源を地方自治体に移譲し、その使い道は各自治体に任せるのが一番だ。そもそも、地方自治体の方針を決定するのは、首長と地方議員の仕事である。それに対して国会議員が口を利く姿は、きわめて異常だ。
本来、日本は三〇年前に国の形を自由主義経済に合うようにつくり替えなければならなかった。しかし、既得権を失いたくない官僚、族議員といった勢力が強すぎて、国の改造ができなかった。
このような状況の中で、「解党的出直し」を叫ぶ小泉純一郎首相は、「改革断行内閣」を標榜し、「脱派閥内閣」をつくり、タブーであった「郵政三事業の改革」までも叫ぶに至った。この内閣が未曾有の高支持率を得ているのは、国民が行き詰まった国家の改造をやってくれるかもしれないという強い期待を持っているからだ。
しかし、小泉内閣による改革は、道路特定財源の一般財源化という一事をもってしてもその実現は容易ではない。自民党の政策決定の手順は、政務調査会の承認を得た後、総務会の全会一致を得なければならない。先に述べたように、総務会のメンバーの多数を橋本派や非主流派が占めている。いざ改革となれば、利権をはぎ取られる守旧派が猛反対してくるのは必至だ。
イタリアの例を見れば一目瞭然だが、政権交代に勝る改革はない。あらゆる既得権益を吹き飛ばす新政権には、精気がみなぎつている。日本にも、そういう新規のまき直しが必要なのである。
最後に、私の意を見事に汲んで資料の整理をしてくださった桜井裕子氏にお礼を申し上げたい。
屋山太郎
--------改頁------262--(この項) オワリ--
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