先日、NHKの地震防災番組に東大の准教授が出ていた。防災の番組に東大の研究者が出て来るのは珍しい。東大は昔から地震の解析や地震予知に力を入れていたが、防災・減災はほとんど手を付けていなかった。地震予知は科学だけど、防災・減災は科学ではないので、東大がやるべき仕事ではないと思っていたのかもしれない。それに東大には地震研究所、京大には防災研究所があるのも理由かもしれない。
昔は、20~30年すると地震予知ができると考えられていた。しかし、あれから20~30年以上が経過し、地震予知は現在の技術では不可能なことがわかった。(現在でも地震予知ができるといっている人がいるが、現実を認めたくないだけと思う)
2012年10月27日に「地震の話 その1 ~東京大学地震研究所~」というブログを書いています。この中に下記のような一節がある。
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東京大学地震研究所編修の本「地球科学の新展開① 地球ダイナミックスとトモグラフィ」の「刊行のことば 2002年4月」には、「地震という災害を少なくするために、耐震技術の開発もさることながら、地震という地球の破壊現象を根源から理解することが必要だという考えが設立の精神であった。このため、耐震研究所でもなく、防災研究所でもなく、地震研究所とされたのである。」と書かれた部分がある。
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この本では地震研究所は「地震を根源から理解する」目的で作られたと宣言していて、防災・減災は設立の趣旨には無いことがうかがえる。
また上記ブログの後半には、地震研究所の講演を聞きに行った時の様子を書いている。
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東京大学地震研究所の地震工学が専門の人が講演し、「地震工学に何が必要か、地震研究の人たちに要望している。地震研究の人たちは、地震工学に役立つデータを出して欲しい。」というようなことを苦々しく言っていた。地震工学の人は地震研に4人しかいないらしいので、言葉の端から少数派の悲哀というか、疎外感というか、多数派は世間のことを知らないという思いが漂っていた。
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と書いている。東京大学地震研究所にも、地震工学(防災減災の一つといえる)が専門の人がいるが少数派なので疎外感を感じているように見て取れた。
時流に敏い東大が、地震(地震だけでなく、洪水などの自然災害)の防災・減災の時流に遅れているのはどうした? 地震研究所があるから? 東大で防災・減災を語る人の所属は、地震研究所ではなく先端科学技術研究センター(いくつかの部門が合わさってできた組織なので、名前が実態に合っていない)などの他部門の所属だった。地震研究所の設立の主旨からすると、「地震予知」の看板を下ろすわけにはいかないだろうな。
(補足)昔の「東海地震はもうすぐ来る」というプロパガンダは何だったんだろう?
これは東大だけの話ではないが、一言。ここで言う「東海地震」は東海地方沖全域で起きる地震ではなく、駿河湾という限られた地域で起きる「駿河湾地震」と言うべき地震のこと。駿河湾沖では近年大地震が発生していないので、近い将来大地震が起きる可能性があるという論文が出た。しかし、「駿河湾地震」が唱えられて40年経過したが、未だに起きておらず、他の地域で大地震が次々に発生している。結局、「駿河湾で地震が発生する確率が高い」と公表するのは間違った認識を一般に広めることになり、それ以外の地域は地震への警戒が緩むことになった。そして、間違った認識に政府が乗ったことはさらなる間違いだった。
「東海地震はいつ起こるか」2012年11月15日 柴正博
「2006年3月27日付静岡新聞1面記事 <東海地震説に『間違い』> は『誤報』」2006年4月2日 石橋克彦
を参照しました。
2019.12.18