掘り立てのタケノコを茹で上げて 早速に初物を頬張る
朝早くに電話が鳴った。「今朝藪に行ってみたら初めてタケノコが何本か生えてる、来てみんかね」と、長年の同級生が誘ってくれた。
あいにくどうしても抜けられない予定があって「申し訳ないが・・・」丁重にお断りを。「夕方にでも用事が済んだら取りにおいで」と親戚の叔父さんみたいな嬉しいことを言ってくれる。
思い起こせば15才の春、高校入学という新たな出会いで初めて顔を合わせた、言うなれば幼馴染みたいな長い付き合いの友である。
職場こそ違ったが、同じ会社の岩国工場で同じ釜の飯を食った仲間という意識もあって、会社卒業後はそれまでよりいっそう近しい関係にあって、タケノコを掘って茹で上げる間に宴会をするという、藪の中のクラス会仲間の主みたいな存在でもある。
彼のことだから、タケノコを掘って皮を剥き茹でている間にワラビを取りに行って、タケノコと一緒に茹でたのであろう新鮮なワラビまで持たせてくれた。孫君が大好きなサトイモもちゃんと準備してくれていた。いつも思う。親元に行った気分にさせられる手土産を持たせてくれる。本当に有難い貴重な友の一人である。
掘り立て茹で立てのタケノコを早速頂いた。彼や彼の細君のあたたかな気持ちといっしょに頬張るタケノコの味。これもまた春という季節の贈り物である。知り合って65年の歳月を経ても、褪せるどころか益々濃いつながりになっていく友。大切なお付き合いにしないとバチが当たりそう。