フリーランス的発想のススメ

~フリー満喫講座~

バーニング

2020年10月21日 | アジア映画


「バーニング」
監督:イ・チャンドン
主演:ユ・アイン
   チョン・ジョンソ
   スティーブ・ユァン

 凄い映画でした。淡々と進んでいくのに、気づけばストーリーにのめり込んでいて、2時間半が長いとまったく感じなかった。見とれてしまうほど美しい映像の中で、とてつもなく残酷な物語が進行していきます。
 登場人物は極端に少なく、最初の30分くらいは2人しか出てこない。幼馴染のジョンスとヘミ。2人の間に1人の裕福な男ベンが入り込むと、途端に世界はバランスを崩して行く。
 ある日、ジョンスはヘミと連絡が取れなくなる。心配でたまらないジョンスと同様に、私も凄く心配になりました。この映画を観て、ヘミのことが心配にならない人はいないと思う。それほどヘミは魅力的だった。夕暮れの中、裸で踊るヘミは本当に美しかった。
 裕福な男ベンは、何不自由なく気ままに生きているようで、徐々に人間としての底の浅さが露呈していく。2ヶ月に1度、必要のないビニールハウスに火をつけていると言うベン。そんなベンを観察し続けるジョンス。後半はミステリー要素が強くなるのに、それっぽい効果音など一切なく、映画的に盛り上げることをほとんどしない。それでも目が離せないのは、ジョンスがベンを観察しているように、私もジョンスを観察していたんだと思う。
 この映画にここまで傾倒してしまう理由に映像の美しさがあるんですが、特に背徳的なシーンであればあるほど美しく、燃え上がるビニールハウスを見て微笑む少年と同じ顔を、私もジョンスもしていたんだと思います。
 1つの答えを見いだしたジョンスは、行方不明のヘミの部屋で小説を書き始める。ラストシーンは果たして、現実なのか? 作り話なのか?(ユ・アインの俳優魂に。☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆)

イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密

2020年10月18日 | ヨーロッパ・その他


「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」
監督:モルテン・ティルドゥム
主演:ベネディクト・カンバーバッチ
   キーラ・ナイトレイ
   マーク・ストロング

 第二次世界大戦中にドイツ軍の難解な暗号『エニグマ』を解読するマシンを作った天才数学者、アラン・チューリングの物語。序盤は、仲間から孤立する変わり者の天才アランが、ジョーンという女性の味方を得て、仲間とも分かり合うようになるちょっとチープな展開で、若干肩透かしを食らったんですが(汗)暗号解読から終盤の展開はとにかく圧巻で、ベネディクト・カンバーバッチとキーラ・ナイトレイが素晴らしかった!
 キーラ演じるジョーンの考え方には共感しまくりでした。アラン・チューリングが同性愛者だと知っていながら結婚を決めたのは、アランのことが人として好きで、彼と仕事をするのが好きで、普通であることには全く興味がなかったから。アランも彼女と話をするのが好きだったし、暗号解読のマシンを作るのに彼女が必要だった。とてもいい関係で、2人ならお互いを尊重し合えるはずだったのに…時代がそれを許してくれない。たかが同性愛者というだけで断罪される時代。なんてバカげたことだろう。
 警察に逮捕されたアランはこう言います。「イミテーション・ゲームをしよう。質問に答えているのはマシンか人間か当てるゲーム。私の話を全て聞いた後、ジャッジして欲しい。私は、マシンか?人間か?」話を聞き終わった取り調べ官は、答えることができなかった。私も、答えられなかったです。(あなたが普通じゃないから、世界はこんなにも素晴らしい。☆☆☆☆☆☆☆☆)

アルキメデスの大戦

2020年10月11日 | アジア映画


「アルキメデスの大戦」
監督:山崎貴
主演:菅田将暉
   館ひろし
   柄本佑

 映画のあらすじをザックリ解説すると、数学の天才が”数字”で世の中を変えることができると驕(おご)った末に、自分自身の本質を知る残酷な物語。主人公にとって最も愛する”数字”は、自分を表す最大のアイデンティティで、その”数字”によって戦争を防ぎ、人々を救うことが出来る!と考えてとても興奮します。でも結局それは、数字と言う武器で世の中を動かしたいという”欲望”にすぎなかった。
 この映画に出てくる人の多くは欲の塊で、終盤、館ひろしが戦艦の甲板上を闊歩する姿を見て「ク○バ○野郎が歩いてる」と思いましたねぇ。映画を見終わって真っ先に思ったことは「戦争にはいっさい関わりたくない」という強い気持ち。たとえそれが世のため人のためになることだとしても、戦争に関係することにはいっさい関わりたくない。少しでも関われば、それは加担したのと同じことだと思う。(映画は面白い部分もある。☆☆☆☆☆☆)