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淡雪の記憶 知念実希人

最近読み始めた、正義の味方となって悪を懲らしめる医師たちが主人公のシリーズの第二弾。前作ではまだ少し医療ミステリーの要素があったが、本作品ではそれがほとんどなくなり、主人公たちが犯罪組織と闘う完全なサスペンスものになってしまっている。話は面白いので文句はないが、やはり著者に期待するのは不可解な謎が絡んだミステリーだ。前作でも書いたが、別シリーズとのコラボ作品がますます期待される。(「淡雪の記憶」 知念実希人、角川文庫)

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星の子 今村夏子

色々なところで話題になっている本書。怪しげな新興宗教にのめり込む両親の元で育つ中学生女子の目を通して、両親に反発して家を出る姉、主人公を特異な環境から救い出そうとする叔父、理解不能なものとして排除しようとする教師や同級生、教団の集会で知り合った同年代の仲間などが描かれている。世間的には全くの変人だが普通に主人公を慈しむ両親を理解しようとする主人公が健気だ。後半になって、叔父と両親の動きに少し変化があって、何かが起きる予感がするのだが、その部分は描かれず、微妙な余韻を残して終わる。家族の絆には、色々な形があることを強く感じる一冊だ。(「星の子」 今村夏子、朝日新聞出版)

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銀河鉄道の父 門井慶喜

今年の直木賞受賞作品。宮沢賢治の生涯を父親の目を通して描いた一冊。病弱な長男を陰に陽に支え続ける姿勢が胸に迫る。宮沢賢治のことをあまり知らないので、どの部分が著者の創作なのかどの部分が新しい解釈なのか、といった細かいことは分からないが、繊細な息子を想い続けるのはさぞ大変だっただろうなぁと思う。彼の創作の原点にある夭折した妹との短い交流も胸をうつ。(「銀河鉄道の父」 門井慶喜、講談社)

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古希のリアル 勢古浩爾

つい先日著者の本を読んだばかりだが、本屋さんでもう1冊面白そうな本を見つけたので読むことにした。内容は、前に読んだ本とほとんど変わらない。識者・有名人による「思いつきレベルの指南本」の「何かしないと損と脅迫するような記述」や「上から目線の自慢話」が数限りなくあるからだろうが、著者による世の中の「定年本」「老後指南本」へのいちゃもんはとどまるところを知らない。少し気になるのは、ターゲットにされた人からの反論があるのかどうかだ。予想としては、反論するのも大人げないとか、実は思い当たる節があるとかで、あまり反論などない気がする。それでも反論する気概のある人がいたらそれはそれで立派だと思う。著者の本はこれからも楽しみだ。(「古希のリアル」 勢古浩爾、草思社文庫)

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