東南アジア文学の第3弾はカンボジアの短編集。カンボジアといえば、やはり民族的な大虐殺のあったポルポト政権前と後で文学がどう変わったのか、あるいはもっと直接的に小説が「ポルポト時代」をどう描いているのか、が知りたいと思った。本書には、5人の小説家の13の短編が収められている。このシリーズの本は、様々な面でバランスを考えて作家や作品が厳選されており、本書も5人作家のバランスは、ポルポト以前からの作家2人、ポルポトのクメール・ルージュに自ら身を投じた作家が1人、ポルポト後の作家が2人となっている。これらの5人を続けて読んでみて気がついたのは、5人の小説が書かれた時期も、その時の社会情勢も、書いた作家も違うのに、断絶のようなものがほとんど感じられないということである。書かれた時期も、その時の社会情勢も、書いた作家も違うのに、そこに断絶がないというのは、ある意味驚くべきことのように思われる。いずれの作品も、救いようのない貧困、社会の不条理、だらしない男といった共通の内容で、その雰囲気も深い諦めと猥雑な精神の歪みのようなものが感じられる。一方、フランスの統治による影響だろうか、サルトル、ユゴーといったフランス文学の影響を思わせるところもあるのだが、そこに描かれた不条理は、フランスの洗練された実存主義文学とはかけ離れたもっと世俗的な不条理である。例えば、「政府から学生に30リエルが支給されるという通達があった」という記述があり、その後でさりげなく「学校から20リエルを受け取った」という記述がある。この記述に、読者は「学校の誰かが10リエルを懐に入れてしまった」ということ、すなわち社会にはびこる腐敗をほのめかしていることに気づくのだが、それがいつの時代なのかはよく判らない。本書を読んで判るのは、カンボジアにおいてそうした不条理が政権が変わっても何も変わっていないということのような気がする。本書で、唯一、クメール・ルージュに参加した作家は、その後、ポルポト政権崩壊の前年に、妻子と共に粛清・殺害されてしまったという。言いようのない悲惨さが読者に伝わってくる。(「現代カンボジア短編集」岡田知子訳、大同生命国際文化基金)
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