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暴走老人 藤原智香 文芸春秋

2007年11月28日 | 読んだ本
簡単なことで「キレ」てしまうお年寄りが増えているのではないか、という感覚は持っていたが、そういう感覚を持っているのが自分だけではなく、実際にデータがそれを示しているということが判って、「やはりそうだったか」というのがとりあえずの感想だ。「キレやすい」と思われている若者の傷害事件がここ数年横ばい乃至減少経傾向にあるなか、同じ期間にお年寄りによる傷害事件は5倍に増加しており、その間お年寄りの数が2倍になったことを考慮しても、お年寄りによる傷害事件の増加傾向は明らかだという。本書はそうした事実の背景にあるものを、お年寄りを取り巻く「空間」「時間」「感情」の変化を軸に深く洞察する。実際に起こった有名な事件、作者自身の経験がほどよく織り込まれていて説得力がある。話は、「暴走老人」だけでなく、若者を含む全ての人が遭遇している現代社会という環境変化全般の考察に広がっている。こうした環境の変化を広く捉える作業は、「キレやすい」お年寄りが増えているという現象の説明だけでなく、これからもこうしたお年寄りが再生産されていくのではないかということを予感させる。自戒の意味も込めて心して読んだ1冊だった。この本では書かれていないが、本書を読んでいて、お年寄りによる傷害事件の被害者の方もお年寄りが多いのではないかという感じがした。これが、加害者の人間関係のなかにお年寄りが多いということだけなのか、あるいは単にお年寄りが増えたからだけなのか、それとも被害者にお年寄りが多くなる傾向があるのか、そのあたりも、データなどで知りたいと思った。(「暴走老人」藤原智香、文芸春秋)


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