goo

母性 湊かなえ

大変面白くて、一気に読み切ってしまったが、読み終わってもどうもうまく自分の中で感想をまとめきれない感じがする。母親・娘・孫娘という親子三代のそれぞれの関係が、娘と孫娘の手記という形で述べられているのだが、その述べている2人がどうも尋常でない雰囲気で、語り手としてのバランスを欠いているというのがもやもやの最大の原因だと思われる。手記の間に少しだけ登場する「母性について」という部分も客観的なようでいて、そこに登場する人物が主人公たちの関係者であるような感じで、その部分もどうも何か謎を秘めているようで油断がならない。本当にすべてがバランスを失ったようにゆらゆら揺れながらも、全体として形をなしている、そんな不思議な感覚にとらわれる1冊。最近読んだ本の中で一番の問題作かもしれないなぁと感じた。(「母性」 湊かなえ、新潮文庫)

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )