goo

夏の沈黙 ルネ・ナイト

書評誌で高く評価されていたので読んでみた。話は、2つの家族6名に関する十数年前の事件と現在の出来事が、時間を行ったり来たりしながら進んでいく。一つ目の家族の話は、3人称の形式で3名の人物の視点が交錯しながら進み、もう一つの家族の話はある人物の1人称の形で進むという、かなり凝った構成になっている。通常であれば読者は1人称の語りの部分に共鳴して読んでいくのだろうが、本書の場合は、その人物が異常な行動をとるので、そうした肩入れのようなことにもなりにくい。ミステリーとしてはかなり早い時点でだいたい予想がついてしまうが、それでも、最終的な2家族の崩壊に行きつくまでのサスペンスはさすがに評判になるだけのことはあると感心する。版権や映画化を巡って既に色々なバトルが展開されているとのことだが、この作品の少しずつ謎が解明されていく緊張感を映像化するのはかなり難しいような気がする。(「夏の沈黙」 ルネ・ナイト、東京創元社)

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )