いつもの冒険談とはやや趣が異なり、ミャンマーのディープな情報を戦国時代・江戸時代にかけての日本、徳川幕府とその隠密である柳生一族になぞらえて解説してくれる本書。なぞらえること事態を目的としたパロディではなく、不思議なくらいにその比喩がミャンマー理解のために効果的に使われている。軍事政権=武家社会という比喩もそうだし、中央政府と少数民族の対立関係=幕藩体制というのも、目からうろこのように判りやすい。判りやすさから犠牲にされたディテールというものももちろんあるのだろうが、そのあたりが全く気にならないのは、その比喩が深いところで本質をついているからに違いない。いくつも読んできたミャンマー関連本のなかで異色かつ出色の1冊だ。(「ミャンマーの柳生一族」 高野秀行、集英社文庫)
海外出張等のため、10日程、更新をお休みします。