燃えるフィジカルアセスメント

総合診療医徳田安春の最新医学情報集。問診、フィジカル、医療安全、EBM、臨床研究に強くなれます。

風邪

2015-02-27 | 講演会

 本講演でのテーマは、「風邪と紛らわしい疾患の鑑別」です。鑑別のポイントについて、open questionで入手した症例のnarrativeな病歴を材料に、ディスカッション形式で考えていくこととします。

CASE-1   患者:28歳、男性。   主訴:咳、倦怠感

 生来健康。3日前より咳、鼻水を自覚。昨日から倦怠感が強くなり、食欲もなくなり、水分以外は摂取できなくなった。本日は大切な会議があるので会社を休めないと思い、いったん出勤したが、だるくて自宅に引き返した。自宅で横になっていたが、気分も悪く、食欲も全くよくならないため受診。待合室で便意がありトイレに行くもカスのような便しかでなかったが、嘔吐1回あり。血圧は110/57mmHg,脈拍は100回/分でリズムは整、呼吸数は19回/分、体温は37.5℃。見当識は正常であるが、視線を合わせようとせず、質問に対する応答が鈍い。Jolt陰性。結膜に貧血や黄染なし。呼吸音清、心音整。腹部ソフトで圧痛なし。鼻腔インフルエンザおよび便中ノロウイルス迅速抗原検査陰性。一見して、ぐったりしてる。

Question 1:この症例でのRed flag symptom sign をあげてください

 徳田  Red flag とは「見逃してはならない疾患」といいます。「見逃してはならない」とは、見逃して対応が遅れると生死にかかわる。あるいは見逃して対応が遅れると後遺症を残す。そういうおそれのある重要なsign、symptom のことです。どなたかピックアップしてください。

 フロア  「視線を合わせようとしない」がRed flag symptom に当てはまると思います。

 徳田  そうですね、でも、症例は28歳男性ですが、実は Red flag symptom sign だらけです。まず「倦怠感が強くて食欲がなくなって、水以外は摂取できない」。基礎疾患が全くない28歳の男性会社員なのに、このsymptomは尋常ではありません。

 次に「いったん出勤したが、だるくて自宅へ引き返した」。風邪でしたら若者ですから普通は何とか頑張れます。ということは風邪ではないことが濃厚ですね。さらに「自宅で横になっていたが、気分も悪く食欲も全くよくならない」。風邪でしたら、だいたい横になったらよくなりますが、全くよくならない。これも Red flag です。

 「待合室で便意があり、カスのような便しか出なかったが、嘔吐が1回」。これも Red flag です。ノーマルパターンでは、直腸に便がおりてきて、便意をもよおし、トイレに行って排便というプロセスですが、患者は便がおりてきていないのに便意をもよおしている。何か重篤な疾患が隠れている、これも Red flag sign です。そのうえ嘔吐もあります。

 たとえば急性胃腸炎の明らかな症状があって嘔吐しているのであれば、嘔吐はその局所症状ですけれども、急性胃腸炎の明らかな症状がないにもかかわらず嘔吐しているのは、何か重篤な疾患を考えたくなります。

 そして、今、指摘のあった「視線を合わせようとせず、質問に対する応答が鈍い」。さらには「一見して、ぐったりしている」。これらの所見は重要な general appearance です。私はいつもレジデントに「バイタルサインの前でも、後でもいいですから、必ず general appearance を1行書いてください」と言います。すると「general appearance って何ですか」と聞き返されますが、それは「患者さんの見た目の感じ」のことです。「ぐったりしてる」と見えたら、そう素直に書いてください。たとえば、救急搬送された患者を見て、格好をつけて英語で「general sick」などと書くと、「sick だから救急車で運ばれてるんだろう。バカじゃないか。そうじゃなくて、見た目の感じを書くんだよ」と上級医に怒られます。

 今回は以上です、結果は次回に。

 話変わって、錦織選手またまたやりましたね、アビエルト・メキシコ・テルセル男子で、第5シードのドルゴポロフ選手を6-4,6-4のストレート勝ちです、そしてこの大会初めてのベスト4に入ったのです、期待できますね、頑張れ錦織選手。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 沖縄の碧い海と青い空2 | トップ | 風邪2 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

講演会」カテゴリの最新記事