スケッチブック30

生活者の目線で日本の政治社会の有様を綴る

スケッチブック30(「ヒットラーとは何か」)

2023-10-23 14:25:29 | 日記
10月23日(月)
 セバスチャン・ハフナーの「ヒットラーとは何か」を読んだ。衝撃というか興奮というか、ちょっと頭が何とも言えない高揚をしている。大体私は読書をするとすぐ飽いてしまう性質だが、この本は四日で読めた。もっと大きい字で書いてあれば多分三日で読めただろう。老眼鏡を使っても小さい字を追うと頭がジンジンする位に疲れるのだ。翻訳本なので意味の取れない訳文も出てくるが、大部分は、論旨が取れる。お勧めの本だと思った。1978年にドイツで出版されたとある。翌年にすぐ翻訳出版され、私が読んだのは1997年の第5刷本である。
 私は従来ヒットラーについて三つの疑問を持っていた。①イギリスに勝てないのに、何故独ソ戦を始めたのか。②何故ソ連にも勝てないのに、アメリカに宣戦布告したのか。③何故金と手間のかかるユダヤ人虐殺をしたのか、である。ハフナーはそれについて回答している。という事は私の疑問は、多くの人の疑問であったようだ。
 ハフナーはこれらは全てヒットラーの個人的信条から来ていると言う。ハフナーはヒットラーは世界征服とユダヤ人抹殺という、二つの目的を持って世に出てきた、と言うのである。しかもそれを自分の生きている間になすのだという、普通の人には考えられない覚悟を持っていた、と書いている。つまり当時ドイツにヒットラーが居なくて他の誰かが指導者だったら、あんな大戦争は起きなかったという事である。故に、①イギリスに勝てないのに独ソ戦を始めた理由は、イギリスとの勝負はともかく、ソ連を征服してそこをドイツ人の千年王国にする計画を、ヒットラーが持っていたからである。自分の生存時間をイギリスとの戦争に取られてはいけない、という訳である。②これはモスクワでソ連軍が凍り付き、ナポレオンの二の舞をしたと、ヒトラーが気づいたからだと、ハフナーは言う。つまり自分の計画達成(世界征服)が不可能だと知ったヒットラーは、もはやこれまでとドイツを道連れにして、自殺を図ったからだというのである。ここの所はすぐには納得できない。一旦退いて、翌春攻撃するとか希望はあったように思えるのだが。③は、ユダヤ人抹殺がもう一つの目的であったから、戦況が決定的に不利にならないうちに(それが出来るうちに)始めた、という事である。ただ何でヒットラーはそれほどまでユダヤ人を憎んでいたかの説明はない。
 つまり、ハフナーに言わせるとヒットラーは、世界征服とユダヤ人抹殺という二大目標を抱いていて、世界征服が不可能だと悟ると身を翻して破滅の道を選び、破滅までの間にもう一つの目標であるユダヤ人抹殺を、かなりな程度実行した、という事である。どうしてヒットラーがそんな非現実的且つ非倫理的な目標を抱いたかは、ヒットラーという人間がそうだからと言うのである。もしそうなら、ヒットラーは本当に悪魔である。
 ハフナーの見解は、普通の人間しか知らない私には、理解不可能である。ニュートン力学しか知らない私が、量子力学にチンプンカンなのと、同じである。しかし名状しがたい重圧が頭にきている。ヒットラーは敗戦間際にドイツのあらゆる施設を破壊するように命じ、かなり実行されたようである。ドイツは政府も失い、国は原始状態になって敗戦したようである。しかしであるが、渡部昇一の講演で聞いたのだが、戦後渡部はドイツに留学してその豊かさに吃驚し、同じ敗戦国であるのに日本と何と違う事かと、慨嘆したと言っていた。原始状態と言っても富の蓄積を果たしていたヨーロッパ諸国は、その有様が日本とはそもそも違っていたという事なのか。
 







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