三浦綾子の『天北原野』はまだ読んでいなかったので、古書店で見かけた時に買っておいた。『天北原野』という題名からあの地域の原野の開拓にでもからむ話かと想像していたら、北海道のハマベツに生まれ育った美しい娘・貴乃と小学校の校長に息子・孝介の愛情を中心に、そこに製材業の息子・完治がこの娘を奪い取ろうとする悪巧みをめぐらす。失意のうちに、孝介は樺太に渡り、縁あって網本の後継者となり成功を収める。一方、完治は事業に失敗し、そこに孝介が手助けをし、樺太での造材の仕事で儲ける。第2次世界大戦の戦火が広がり、孝介も完治も徴兵されるが何とか無事に戻る。やがて終戦。ソ連軍が不可侵条約を破って参戦し、樺太にも兵を進める混乱の中で、子どもたちを乗せた避難船が魚雷で沈められ、貴乃、孝介らは生き残り、完治は行方不明となる。貴乃と孝介は若い頃の思いを遂げようとするような流れにあるのだが、天北原野に咲くエゾカンゾウの花の中にたたずむところで物語は終わる。戦前、日本の占領下にあった樺太での、ニシン漁や造材で大儲けする姿。一方的に侵入してきて、一般人を殺害するソ連軍など、あの混乱の時代に強く流れる愛の物語であるが、三浦綾子の作品らしい作品だと思う。感銘をもって読んだ。
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