黒崎裕一郎の『蘭と狗』を読んだ。黒崎裕一郎という作家の本ははじめてである。黒崎裕一郎は1942年、東京生まれ。テレビ番組製作会社を経て、1975年『必殺必中仕事屋稼業』第21話『飛び入りで勝負』で脚本家としてデビューし、以後『必殺』シリーズや『太陽にほえろ!』『木枯らし紋次郎』などでシナリオライターとして活躍する。1995年、『蘭と狗』で第6回時代小説大賞を受賞し、作家に転身する。脚本家から『蘭と狗』で大賞を受賞するまでは中村勝行名だったが、ペンネームを黒崎裕一郎とあらためたそうだ。
『蘭と狗』には「長英破牢」と副題がついてる。岩手県奥州市(元の水沢市)出身の蘭学者・高野長英が蛮社の獄で捕えられ、町医者という町人身分だったため一般の牢に押し込められ、解き放される見通しもない中で牢番を買収し放火をさせ、解き放ちによる脱獄をはかる。たまたま、別の受牢者の差し入れ気に来ていた岡っ引きの女房がこの火事に巻きこまれて焼け死んでしまう。このことから、この岡っ引き・瓢六の執拗な長英追求が始まる。最後は、劇薬で顔を焼いて江戸に潜んだ長英の隠れ家を突き止めるが、長英は瓢六を刺殺し自らも自害して果てるという話。
高野長英が蛮社の獄でつかまり脱獄をして逃亡したのも事実だし、最後に江戸の隠れ家で捕吏に囲まれて自害したのも事実だが、瓢六は作者が作り上げたものだろう。緊張感のあるなかなか面白い小説だ。
ところで、台風18号の接近で岩手県・洋野町も8時過ぎからは雨が降り続いている。「晴耕雨読」と言われるように、何もできないので読書に励んでいる。これからは志位和夫『綱領教室』第3巻の後半を読もうと思っているところだ。