東南アジア・ヴァーチャル・トラヴェル

空想旅行、つまり、旅行記や探検記、フィールド・ワーカーの本、歴史本、その他いろいろの感想・紹介・書評です。

NHK 編,『謎の国・カンボジア』,日本放送出版協会,1979

2009-04-22 19:03:39 | 旅行記100冊レヴュー(予定)
ちょうど民主カンプチア、つまりポル・ポトが、外国向けプロパガンダとして西側の報道機関をうけいれていた時期。NHK特集として1978年10月13日に放送されたようだ。(NHKアーカイブのサイトによる)
日付と行程がしっかり出ている。
1978年9月16日から9月30日まで

9月16日 プノンペン空港
9月19日 コンポンチャム
9月20日 車でコンポントムへ。「一月六日ダム」取材
9月21日 シェムリアップ着
9月22日 アンコール・ワット見物
9月23日 シソポンから列車でバッタンバン(特別列車である)
9月24日 バッタンバンから列車でプノンペン
       イエン・サリと会見
9月25日 コンポンソム港
9月26日 ベトナム国境でベトナムから逃れてきたカンボジア系ベトナム人を取材(ハ・ティエンの近く、地名不明)
9月27日 タケオでサハコー取材、ポルポト首相と会見
9月30日 プノンペンから出国

写真と文は、NHKカメラ取材部の飯田睦美(男性です)。とくにおかしな記述はない。もっとも、全95ページのうち、人影のないアンコール・ワットの写真が30ページほどであるが。
なお、人っ子ひとりいないアンコール・ワットというのは不自然なようだが、観光写真でもたいてい見物人は写っていないので、本書の写真がとりわけヘンなわけではない。

本書の協力者として、フリーカメラマン馬渕直城、NHK教養部の谷尾襄、NHK外信部の永田昌弘と佐藤公一、それに「日本カンボジア友好協会」という団体。

くりかえすが、本書のなかに、とりわけポル・ポトを礼賛する文や、ベトナムを非難する文はない。
外信部の永田昌弘の文(2ページ)も、カンボジアとベトナム両者の主張が異なり、どちらを信じたらよいかわからない、というニュアンスである。

フリーカメラマンの馬渕直城は、行方不明になっている一ノ瀬泰造カメラマンと共同通信の石山幸基記者の安否をきづかっているが、虐殺の噂は否定している。

というような、ある意味貴重な一冊。わざわざ捜して見るほどでもないけれど。
これを見たら、カンボジアも一応平和なんだ、と思ってしまうのもむりないか。