東南アジア・ヴァーチャル・トラヴェル

空想旅行、つまり、旅行記や探検記、フィールド・ワーカーの本、歴史本、その他いろいろの感想・紹介・書評です。

浦一也,『旅はゲストルーム』,光文社 知恵の森文庫,2004

2006-05-25 23:49:08 | 旅行記100冊レヴュー(予定)
初出は東陶機器の企業誌「TOTO通信」に1994年から連載「旅のバスルーム」
2001年東京書籍刊『旅はゲストルーム 測って描いたホテルの部屋たち』を加筆、修正。

著者は建築家、ホテルの設計、とくに内装の設計が専門。初出誌からわかるように、バスルームに特に関心がある。
世界中の名門、高級ホテルに宿泊し、室内の寸法を測り、平面図に描き、さらに水彩で着色するのが趣味(?)。ほぼ2時間ぐらいで作業を完成させるようだ。

わたしなんぞ一生泊まるどころか、そのホテルのある都市にさえいけないような、ヨーロッパや北アメリカ、その他アジアのホテルが紹介される。
ホテルの紹介なんてうんざりだ、と思う方、そう、わかります。実際ホテルのことを書いたキザな薀蓄話はあふれているし、旅行ガイドもホテルの紹介ばっかりじゃないか。

しかし、本書はちょっとちがいます。そこそこにキザですが、情けない実情も混ぜ、イヤミもユーモアになっている。(luxaryはラクシャリーとよむのを初めて知った。形容詞になると、ラグジャリーですね、覚えておこう!)

さて、ちょっとまじめになろう。
ホテルというのは、外界から選ばれた客を隔て、内部の豪華で上品な雰囲気で下賎の者どもを威圧する装置である。
客となって選ばれるには、それなりの財力とマナーと見栄を必要とする。それがない人は高級ホテルに泊まるべきではない。
しかしだ。みんなほんとは見栄をはるのに疲れるのである(らしい)。
そして、その見栄の緊張感から解放されるのがゲスト・ルーム、とりわけバス・ルームである。
そのバス・ルームをいかに設計するかが、デザイナー、建築家の腕とセンスであろう。
本書は、筆者のスケッチと文とともに、建築家その他の名前が原綴りで示され、ホテルのホーム・ページのURLも載っている。これをたよりに、ウェブ上で架空ホテル滞在を楽しむことができる。

東南アジアのホテルもいくつか載っている。
というより、高級ホテルの分野では、東南アジアには格式も評価も高いホテルがいっぱいある。
ただ、東南アジアの超高級ホテルは、ヨーロッパや北アメリカの高級ホテルとは、ちょっとコンセプトが異なるようだ。
建築や内装で斬新なホテルも多いが(バンコク、上海など)、伝統的な人材、ありあまる労働力、立地の自然環境でもてなすホテルがあり(オリエンタルホテル、シャングリラなど)、こじんまりしたヨーロッパとは、異なるようだ。
リゾートホテルの紹介は少ない(バリ・オベロイくらい)が、こっちも北アメリカ方面とは異なるようである。

そのほか、ドア、ベッド、バスルームなどの基礎知識(薀蓄)あり、読んで見栄をはろう!


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