東南アジア・ヴァーチャル・トラヴェル

空想旅行、つまり、旅行記や探検記、フィールド・ワーカーの本、歴史本、その他いろいろの感想・紹介・書評です。

リン・バーバー,高山宏 訳,『博物学の黄金時代』,国書刊行会,1995

2007-10-21 11:16:16 | 基礎知識とバックグラウンド
自然選択の進化論登場以前の博物学の時代をしるのに最適の一冊。
原書
The Heyday of Natural History, 1820-1870, by Lynn Barber, 1980
訳者の高山宏さんの責任編集である「異貌の19世紀」シリーズの一冊で、シリーズ名がおどろおどろしいが、内容はわかりやすくおもしろく、19世紀ブリテンを中心とした科学史およびヨーロッパ文化史である。

ダーウィン以前の生命論やダーウィンをめぐる人物がたくさん登場するのだが、一般的な進化思想の歴史にあらわれない、とんでもないエピソードが満載である。
本書のテーマではないけれど、ダーウィンの進化説に反対するトンデモ理論は、すでにこの当時で、でそろっています。

ウィリアム・ペイリー(自然神学)、チャールズ・キングズリー(博物学が趣味の牧師)、リンネ、キュビエ、ウィリアム・スウェンソン、アッシャー大司教、オーデュボン、ジョン・グールド、エドワード・リア、チャールズ・ウォータートン(南米旅行で有名)、ウォード(ウォードリアン・ケースの発明)、A.W.グリフィス夫人(女性の博物学趣味の流行)、フランシス・バックランド、ピール(興行師)、リチャード・オーエン(動物学者、超権威)、ロデリック・マーチンソン(地質学)、アガシー(有名、地質学)、アダム・セジウィック(地質学者)、ロバート・チェインバーズ(有名)、ラマルク(有名)、ヒュー・ミラー(しろうと地質学者、この人物に関する記事がみごと!)、フィリップ・ゴス(有名、創造論の元祖?)

なお、おなじくリンという名の女性による
リン・メリル,『博物学のロマンス』,国文社,2004
も同じテーマ、同じ時代をあつかっている。でも、バーバーの二番煎じのような結果になってしまった。こっちのほうがマジメだが、おもしろくないなあ。


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