東南アジア・ヴァーチャル・トラヴェル

空想旅行、つまり、旅行記や探検記、フィールド・ワーカーの本、歴史本、その他いろいろの感想・紹介・書評です。

秋道智弥 編著,『イルカとナマコと海人たち』,日本放送出版協会,1995

2006-05-19 00:00:58 | フィールド・ワーカーたちの物語
書名のよみかたは、NDC-OPACによれば、「イルカトナマコトカイジンタチ」。
ほとんどのウェブ上の書誌情報が「イルカトナマコトアマタチ」になっている。
わたしは最初からカイジンとよんでいたのだが……。
海人をアマとよむのか?わたしが無知なのか?

奥付にも表紙にもふりがながないので、どっちが正しいのか不明。国会図書館が正しいとはいえないが、偶然にもわたしのよみかたといっしょだ。

本書は複数の著者による、オセアニア、東南アジアの漁撈慣習、資源保護にかんする論考、調査報告である。

扱う地域がひろく、テーマも多肢にわたっていて、ひとつひとつの論文が短いうえに専門的でむずかしい。

竹川大介,「イルカが来る村~ソロモン諸島」
ソロモン諸島マライタ島ファナレイ村のイルカ漁。
外洋性のイルカを獲り、食料として利用する。
また、イルカの歯を婚資通貨としてもちいる。

後藤明,「貝貨を作る人々」
おなじくマライタ島のランガランガ村でのタカラガイ貨の製作。

須田一弘,「ナマコ漁とキワイ社会のゆらぎ」
パプア・ニューギニア南西岸キワイ語マワタ村の変容。
それまでモリ、魚毒、潜水漁でさかなを獲ってきた村がナマコ漁によってかわってゆく過程を調査。

以上のほか、口蔵幸雄によるマレー半島のスマッ・ブリの淡水産動物の採集・漁撈を含めたのが第1部。
すべて、貨幣経済、商業用漁撈にともなう、伝統社会の変化を述べる。

第2部は、
タイ湾の底曳網漁業による乱獲(望月賢二)
マレー半島南端のセディリ・ケチル村の小規模漁業(後藤明)
ジョホール州パリジャワ村の華人漁民(田和正孝)

以上すべて1990年代前半の調査。
魚類以外の資源、つまりイルカ・ナマコ・タカラガイ・エビ類・イセエビ・貝類などを扱っているが、詳しい解説がなく、報告書的な記載でしろうとにはのみこみがむずかしい。