◎末松太平事務所(二・二六事件異聞)◎ 

末松太平(1905~1993)。
陸軍士官学校(39期)卒。陸軍大尉。二・二六事件に連座。禁錮4年&免官。

安藤良雄先生 結城財政について

2009年07月02日 | 今泉章利
大学一年の教養で、安藤先生の現代日本経済史を選択したことがある。
先生は、りっぱな風貌と格調高い授業をされる方だった。青年将校や当時の右翼については極めて厳しい発言をされていたが、正直言うと小生にはその授業がほとんど分らなかった。そしてそれは、試験の時に決定的に明らかになった。

試験問題はただ一行。「結城財政について述べよ」というものだった。

ヤマをはって臨んだ小生にはまったく理解できずに結果は見事に不可となった。
私は、広田内閣の馬場エイイチ(字が難しい)蔵相はわかっていたが、結城豊太郎が何者であるかはわからなかった。結城さんは、広田内閣のあとを継いだ林銑十郎内閣の大蔵大臣で、大型の予算を組み、軍部を批判していた財界も巻き込んで、軍部と財界の「抱合」した体制を確立し、この時点において、日本は、完全に国家総動員の戦時経済に突入したのであった。

昔、日銀を訪問したとき、結城さんの大きな肖像画が、歴代総裁のなかにあり、この人が小生を不可にしたのだなあと懐かしくも苦笑を禁じ得なかった。

事件の理解には、政治や国際情勢だけでなく、当時の倫理・道徳や経済に対する正しい知識が要求されると思う。第一次大戦後の恐慌、関東大震災のあとの昭和2年の金融恐慌、浜口内閣の井上財政や金解禁の意味するもの、昭和4年の暗黒の木曜日と昭和恐慌、井上財政が崩れて、高橋是清、藤井大蔵大臣の行ったこと、そして二・二六事件、馬場財政と結城財政、、、、そして近衛政権、国家総動員体制。これらのことをすらすらとわかりやすい言葉で語ってくれる学者はどれほどいるのだろうか。

(今泉章利)
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