⑤/表紙を開くと 擦れ筆筆ペンで「謹呈 大沢久明」と署してある。誰が謹呈されたものなのかは判らない。
冒頭は「1966年 第37回メーデー 青森県中央大会で挨拶する大沢久明」の写真が占めている。頁を繰ると「二・二六事件で大量銃殺が行われたとき、この4人が『天皇陛下万歳』を叫ばなかった」と説明されて 村中孝次、磯部浅一、西田税、北輝次郞の顔写真が並んでいる。
※この本の「序」には「二・二六事件は生きている」tという副題で「末松太平に対する悪口」などが グダグダと書かれている。
大沢氏曰く・・・事件から30年が経過した今、末松は「二・二六事件のようなものが また起こるでしょうか」と訊ねられて「思い当たることがあるのなら 日常の言動を改めていったら良い」と答えている。これは「事件を起こしたのはお前達の責任である。日常の言動が悪ければまた(二・二六事件のようなものが)起こるかも知れない」という威嚇であり、戦前の侵略政策や日中併せて千数百万人を殺傷したことへの反省がない。二・二六事件は生き続けて機会を狙っているわけである。わたしたちは、その意味で、あらためてファシズムの足音を聞いているわけである。わたしらは、あくまでも議会制民主主義をまもり、ファシズムの芽を双葉のうちにもぎとらねばならない。
※以上 私なりに整理してみたが(大沢氏の文章の拙さもあって)文意が理解できない。伝わるのは 何が何でも批判しようという「怨念?」だけである。
◎「目次」を見ると「1/二・二六事件と青森県人」~「21/叛乱将校と農民デモ」と続いて「23/末松元大尉の手紙」という章がある。
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※23/末松元大尉の手紙。
この「右翼と青森県」の旧著では、かなり重要な問題として、二・二六事件と本県の農民との関係を取上げた。それは 車力農民組合の三上徳次郞(死亡)と工藤覚たちが、五連隊で末松大尉と面接した際に「車力村にいざという時には決起するように連絡があった」と言われた
とについてであった。
ところが最近(昭和46年)でも車力村では「五連隊の末松達と共に立ち上がって一揆を起こし、やがて新しい政府を作り、彼らは主要な地位につく」ということをを、話のタネにしていると聞いて、些か驚いたのである。
私は、念のため、末松と昵懇の平井信作に(真偽の程を)聞いてくれと頼んだ。幸いに「末松太平からの返信」を借用できたので、渋谷・末松論争の真相を明らかにする資料としたい。この手紙では、大沢久明も散々やっつけられているし、淡谷悠蔵や竹内俊吉、おまけに津島文治まで出てくる。ともあれ、歴史の重要な一頁であるから、原文をできるだけ忠実に再現する。
(註/以下、大沢氏の文章が余りにも回りくどいので、大幅に割愛。手紙の要点のみを整理して記載する)
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※渋谷悠蔵の「野の記録」を読んだ私(末松)は「東奥日報/6回連載」で(小生の登場する事柄だけ)嘘を指摘しておいた。渋谷は(小生の指摘に反論し)「野の記録」はフィクションだから事実に反する嘘があっても構わないといった。「野の記録」を実録として引用した大沢も馬鹿を見たということである。大沢が書いている「工藤が青年将校と連結して百姓一揆を・・・」というのは真っ赤な嘘である。
工藤覚は(昭和4年か5年に)初年兵として機関銃隊の編入名簿に載った。「要注意兵」としてである。然し 工藤は(医務室の再検査で)即日帰郷となり(その後 兵舎に訪ねてきたこともあったが)小生の記憶からも消えた。
小生が出獄した後、東京・溜池ビルにあった「あけぼの」社の入口で、丹羽五郎(西田税の元に出入りしていた青年のひとり)と偶然出会った。その時、意外にも工藤覚が一緒にいた。その後、淡谷悠蔵と偶然に出会ったのも溜池ビルの前である。工藤覚は都合の良いときだけ、末松の部下とか教え子とかいっているらしいが、密接な関係はない。
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※大沢氏の「手紙を引用しながらの文章」は長々と続くが 何を伝えたいのか理解不能の展開なので 以下割愛。
※「23/末松元大尉」のラスト部分を紹介しておく。いかにも「日本共産党のエライ人」らしい論評が微笑ましい。
「選挙になると(二・二六事件の頃には)財閥&保守打倒を唱えていた末松太平が 今や財閥を代表する自民党を熱心に応援している。天皇を神と信じて立ち上がり、その天皇の反逆者として銃殺された二・二六の仲間たちは、地下に横たわりながら『末松よ、汝もか』と泣いているかも知れない。(呵々)」。
※末松太平が(遠路を厭わず青森に駆けつけて)応援したのは 竹内俊吉・青森県知事である。第五連隊大尉(末松)と東奥日報記者(竹内)の頃からの付合いが その後も続いているだけのこと。銃殺された同志たちを引き合いにするような事柄ではない。
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