◎末松太平事務所(二・二六事件異聞)◎ 

末松太平(1905~1993)。
陸軍士官学校(39期)卒。陸軍大尉。二・二六事件に連座。禁錮4年&免官。

◎番外篇/2015・初笑い「△松△平」の奮闘◎

2015年01月29日 | 末松建比古


昨年のクリスマスイブに転居したのだが、相変わらず「朝日新聞」を購読している。
適当に流し読みするだけだが、不思議に「要チェック」の記事は見逃さない。
1月28日(水)朝刊33面の「文芸時評=評論家・片山杜秀氏」が、その一例である。

片山氏が「今月の注目作」に挙げたのは、①嶽本野ばら「純愛」新潮2月号、②山下澄人「はふり」文学界2月号「鳥の会議」文芸新春特大号、③小林秀雄「『満州新聞』所載三篇」すばる2月号、である。この種の文芸誌を読むことは皆無だから、私には無縁の記事である。でも、一瞬、視野の片隅に「2・26事件」の文字が映った。気づいた以上は見逃せない。当然、飛ばし読みで小さな文字を追うことになる。

《三島由紀夫の小説に出てきそうな、嶽本野ばらの「純愛」のヒロインである》
《ヒロインの周囲には極右と極左が居る》
《この二つの筋は、一見バラバラ。が、隠れた構造があると思う。そこに気づけば、この小説は2・26事件に因むと分かる》
この程度の内容ならば、小説「純愛」に目を通す必要はない。ところが、片山氏の「時評」には“確かめずにいられない事柄”が記されていたのだ。え?、もしかすると・・・。

《さらに、2・26事件に連座した青年将校の名をもじった極右の指導者も出てくれば、福島の決起日が26日だったりもする。「純愛」は2・26事件という世界の上に拵えられた小説なのだ》
2・26事件に連座した青年将校は多数存在する。しかし「名前をもじりやすい人物」となると、さほど多くはない。私も文筆者の端くれ(広告会社のクリエイター)だったから、こういうことは知恵が働くのだ。
ウオーキングの途中で、浦和駅前の図書館に寄り道して「新潮2月号」をチェックした。予感適中。極右の指導者の名前は「大松広平」だった。大松広平、△松△平。2・26事件に連座した青年将校から似た名前を探せば「末松太平」ひとりだけである。

小説の一部を書き写す。
「大松広平の皇頼の会は新右翼と呼ばれる団体だ。団体といったって大松一人なのだから、それを団体といってよいのかよく解らないが、大松が立ち上げ今は大松のみだ」
飛ばし読みした印象では、小説に登場する「△松△平」は、ユーモラスな存在である。チラリと登場する程度だと思っていたら、主役二人に次ぐ主要人物だった。そして「△松△平」は(皇頼の会を立ち上げる前に)一水会に入れてもらおうとしていたという設定にも、微苦笑をそそられた。

クリスマスイブの転居については、稿を改めて・・・。(末松)
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