Q13 下人が決断しかねているのはなぜか。
A13 両案ともに、下人にとって不都合を伴うから。
盗人になる → 生きながらえる(+)and 悪を侵す(-)
↑
↓
飢え死にする → 節を守る(+)and 自分の存在がなくなる(-)
Q14 このような悩みを何と言うか
A14 ジレンマ
何らかの事件 → 心情(主人公の悩み・ジレンマ) → 行動・セリフ
これが各場面ごとの基本構造です。
作者の設定した時間と空間のなかで、人物がなんらかの事件に遭遇し、ある心情をいだき、なんらかの行動をとることで、物語が展開します。
事件はどのような時に起こるのでしょうか。
主人公が、他者や社会とふれあった時に発生します。会議室では起こりません。
下人の身の上に起こった事件は、都の衰微の余波でした。
下人以外の人にとっては、下人の失業などは、ほんの些細な出来事です。かりに飢え死にしたところで、誰も驚きませんし、悲しみませんし、世界に何の影響もありません。
しかし、下人にとっては重大な事件です。
なぜでしょう。
下人は、自分のことを「かけがえのない存在」「他のだれでもない価値ある自分」と認識しているからです。
下人は平安朝の身分の低い男という設定ですが、マインドは近代人です。
近代になって、人は「個人」になりました。
自己・自我という概念が生まれ、一人一人は「かけがえのない存在」になることができたのです。
誰もが自己実現できる、夢を叶えられる、素晴らしい未来を自分の力でつかんでいける時代になった … はずでした。実際、そうなっている人はいるように見えます。
でも、自分はどうだろう。
どう考えても、世の中においてはきわめてちっぽけな存在にしか思えない。
自分がどんなに苦しんでも、泣きわめいても、すごいことを思いついても、いっそ死んでも、世の中には何の影響もなさそうだ。
いったい、自分とは何なんだーー! という思いを抱いて、多くの人は生きています。
そういう近代人の苦悩が物語の中で描写されると、近代小説が誕生します。
個人が社会と関わりを持とうとするとき、個人にとっての事件が発生します。
事件に接した主人公の心情が描写され、多くの人に受け入れられると、ベストセラーにもまります。
ただし日本においては、近代化の過程で生まれた「個人」「社会」という概念は定着していません。
「 個人 ←→ 社会 」 というより 「 自分 ←→ 世間 」と言うべきでしょう。
主人公が世間との関わりにおいてどんなジレンマを抱えて生きているのかを読み取りましょう。
Q15 不気味かつ異常な空間に設定されている「羅生門」と対比の関係になるものは何か。
A15 下人
羅生門 雨 暮れ方 荒れ果てた様子 誰もいない
死人の捨て場所 きりぎりす からす
からす(黒) 夕焼け(赤) からすの糞(白)原色
∥
不気味な場所・異常な空間 … 非人間的空間
↑
↓
下人 職を失い途方にくれる 洗いざらした紺の襖(色あせた紺)
サンチマンタリスム(感傷的)
にきびを気にする くさめ
∥
普通の若者 … 人間的存在