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水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

「羅生門」の授業(4) 事件・ジレンマ・近代小説

2015年06月11日 | 国語のお勉強(小説)

 

Q13 下人が決断しかねているのはなぜか。
A13 両案ともに、下人にとって不都合を伴うから。

  盗人になる  → 生きながらえる(+)and 悪を侵す(-)
    ↑
    ↓
  飢え死にする → 節を守る(+)and 自分の存在がなくなる(-)

Q14 このような悩みを何と言うか
A14 ジレンマ

  何らかの事件 → 心情(主人公の悩み・ジレンマ) → 行動・セリフ

 これが各場面ごとの基本構造です。
 作者の設定した時間と空間のなかで、人物がなんらかの事件に遭遇し、ある心情をいだき、なんらかの行動をとることで、物語が展開します。
 事件はどのような時に起こるのでしょうか。
 主人公が、他者や社会とふれあった時に発生します。会議室では起こりません。
 下人の身の上に起こった事件は、都の衰微の余波でした。
 下人以外の人にとっては、下人の失業などは、ほんの些細な出来事です。かりに飢え死にしたところで、誰も驚きませんし、悲しみませんし、世界に何の影響もありません。
 しかし、下人にとっては重大な事件です。
 なぜでしょう。
 下人は、自分のことを「かけがえのない存在」「他のだれでもない価値ある自分」と認識しているからです。
 下人は平安朝の身分の低い男という設定ですが、マインドは近代人です。
 
 近代になって、人は「個人」になりました。
 自己・自我という概念が生まれ、一人一人は「かけがえのない存在」になることができたのです。
 誰もが自己実現できる、夢を叶えられる、素晴らしい未来を自分の力でつかんでいける時代になった … はずでした。実際、そうなっている人はいるように見えます。
 でも、自分はどうだろう。
 どう考えても、世の中においてはきわめてちっぽけな存在にしか思えない。
 自分がどんなに苦しんでも、泣きわめいても、すごいことを思いついても、いっそ死んでも、世の中には何の影響もなさそうだ。
 いったい、自分とは何なんだーー! という思いを抱いて、多くの人は生きています。
 そういう近代人の苦悩が物語の中で描写されると、近代小説が誕生します。

 個人が社会と関わりを持とうとするとき、個人にとっての事件が発生します。
 事件に接した主人公の心情が描写され、多くの人に受け入れられると、ベストセラーにもまります。
 ただし日本においては、近代化の過程で生まれた「個人」「社会」という概念は定着していません。

  「 個人 ←→ 社会 」 というより 「 自分 ←→ 世間 」と言うべきでしょう。

 主人公が世間との関わりにおいてどんなジレンマを抱えて生きているのかを読み取りましょう。


Q15 不気味かつ異常な空間に設定されている「羅生門」と対比の関係になるものは何か。
A15 下人

 羅生門 雨 暮れ方 荒れ果てた様子 誰もいない
     死人の捨て場所 きりぎりす からす
     からす(黒) 夕焼け(赤) からすの糞(白)原色
         ∥
          不気味な場所・異常な空間 … 非人間的空間
         ↑
         ↓
  下人 職を失い途方にくれる 洗いざらした紺の襖(色あせた紺)
     サンチマンタリスム(感傷的)
     にきびを気にする くさめ
         ∥
          普通の若者 … 人間的存在

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努力は報われない?

2015年06月11日 | 学年だよりなど

 

  学年だより「努力は報われない?」


 AKB総選挙で4位にランクインした高橋みなみさんが語り始める。


 ~ ここからは、是非メンバーに聞いてもらいたいなと思います。私は、メンバーに残したい言葉があります。
 多分みんな、いろんな活動をしていて、「悔しいなぁ」とか「頑張っても、100頑張っても1ぐらいしか評価されないなぁ」って、たくさん矛盾を感じていると思います。
 でもね、人生というのはね、きっと「矛盾と闘うもの」なんだと思います。
 色々思うことがあると思う。でも、頑張らなきゃいけない時っていうのがあるし。
 頑張らなきゃいけないときっていうのは、一瞬ではないということを、みんなに覚えておいてほしいなと思います。 ~


 「人生とは矛盾と闘うもの」だなんて、とても24歳の娘さんの言葉とは思えない(ていうか、高みなさんてこんなに若かったのか)。
 物理的な年数ではなく、自分の人生をどう深く生きてきたかで、人の精神年齢は変わってくるのだろう。高橋さんの数年の芸能生活は、何十年も生きてきた人をも越えてしまうような、人としての器を大きくする経験だったにちがいない。
 今回のAKB総選挙に立候補したのが272人。名前を呼ばれたのが80人。
  詳しくは知らないが、立候補しなかったメンバーもたくさんいるのだろう。
 名前を呼ばれなかった人も、決して頑張っていないわけではないと、高橋さんは言う。


 ~ 劇場公演に立ち続け、学業を両立して頑張って、自分のやらなきゃいけないことと一緒に頑張っているんです。でも、ここに立てるのは80人なんです。
 だからきっと、AKBグループにいればいるほど、頑張り方がわからなくなると思います。
 どう頑張ったら選抜に入れるのか。どう頑張ったらテレビに出れるのか。どう頑張ったら人気がでるのか。みんな悩むと思うんです。
 でもね、未来は今なんです。今を頑張らないと、未来はないということ。
 頑張り続けることが、難しいことだって、すごくわかってます。
 でも、頑張らないと始まらないんだってことをみんなには忘れないで欲しいんです。
  …  私は毎年、「努力は必ず報われると、私、高橋みなみは、人生をもって証明します」と言ってきました。「努力は必ず報われるとは限らない」。そんなのわかってます。でもね、私は思います。頑張っている人が報われて欲しい。 ~


 何百人の後輩たちに向かって、自分の人生をかけて証明するから、自分の背中を見てほしいと語る言葉は、きっと深く伝わったことだろう。

 

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