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書評「バンクシー ビジュアルアーカイブ(ザビエル・タピエス)」

2018-12-08 23:16:01 | 書評(アート・音楽)


最近(2018年10月)ニュースで紹介されていたが、サザビーズでのオークションで覆面アーチストであるバンクシーの絵が落札された直後、絵が額縁から下りてきてシュレッダーで半分くらいが縦に裁断されてしまうという事件があった。これはバンクシーが仕掛けたいたずらだったことが本人から表明された。おもしろいことをする現代アーチストがいるものだと思い、興味を持って調べてみたら、バンクシーの正体は、ブリストル出身のマッシブ・アタックというバンドのメンバー、ロバート・デル・ナジャ(3D)である可能性があるということだった。マッシブ・アタックは最近好きでよく聞いているバンドだったので、さらに興味が強くなって、彼のアート作品を見てみたいと思って行き着いたのが本書である。

無許可で建築物の壁に絵を描いたものをグラフィティというらしい。本書には、グラフィティ作家としては著名な現代アーチストの域に達したバンクシーの代表的な作品が、時系列で、描かれた場所、バンクシー本人の言葉や関連するコメント等の説明付きで紹介されている。彼の作品は、政治的であったり、社会状況を風刺するようなメッセージが込められている。絵を見ても意味がすぐにはわからなくても、説明を読むとそのあたりの文脈がわかるようになっているのが親切である。さて、彼の絵を見てみるとストリートで描かれた落書きにしては、クオリティーが高すぎる。これはステンシルという技法が用いられていることによるようだ。つまり、あらかじめ型紙を作っておいて、現場ではそれを壁に当ててスプレーで色を塗るだけで済む。そのため、時間をかけて精巧な型紙を準備することができる。また、現場で絵を描く時間を短くすることができるので、警察に捕まるリスクも減る。モノクロのステンシルにシンプルな彩色をしている作品がほとんどである。
どの絵も味があっていいなと思わせるが、この本の難点を一つだけ挙げさせてもらうと、版が小さくて17.2×13.4cmしかないことである。この大きさでは、ストリートに描かれたグラフィティの迫力がなかなか伝わりにくい。値段(定価\1,800)を倍にしてもいいので、本の大きさをこの2~4倍にしてもらえればとてもよかったのにと思う。


バンクシーが手掛けたCDジャケットとして唯一?であるブラーのシンク・タンク。

バンクシーの正体ではないかと言われているロバート・デル・ナジャのいるマッシブ・アタックは、イギリスの歌姫たちをフィーチャーした作品が多いことも特徴だ。ここでは、エリザベス・フレイザーをボーカリストとして迎えた曲の一つを紹介したい。
Massive Attack - Teardrop



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