wakabyの物見遊山

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哺乳類進化研究アップデート No.12 番外編ー京都大学霊長類研究所が解体へ

2021-10-30 08:03:14 | 哺乳類進化研究アップデート

日本が誇る霊長類研究の拠点である、京都大学霊長類研究所が解体されるというニュースが出ていました。哺乳類進化研究の一つのセンターでもあるので、「哺乳類進化研究アップデート」シリーズの番外編として紹介します。

(京都大学霊長類研究所)

京都大学霊長類研究所の使命は、ホームページによると「多様な学問的視点から霊長類を総合的に研究し、ひいては人間の本性の起源と進化を解明する」こととされています。研究所設立の発端は、今西進化論などで有名な今西錦司氏が1950年に霊長類の研究グループを京都大学に発足させたことにあるとされていて、実際には1967年に設立されました。それ以来、霊長類学の研究成果を世界に発信してきました。ところが、この研究所が解体される見通しだということが報道されました

原因は、研究費不正問題にあります。元所長の松沢哲郎(懲戒解雇)らが、チンパンジー用飼育施設の設備工事で架空取引や入札妨害を行い、約5億円が不正支出されたことが認定されています。京都大学は、不正支出が認定された研究費や罰金にあたる加算金を含めた約9億円を返還しましたが、返還請求額総額はさらに膨らむと予想されています。京都大学は霊長類研究所を解散することで、人員削減などにより返還費を捻出する狙いがあるとみられています。

松沢哲郎は、高名な霊長類学者で一般向けの著書もたくさんあります。世界的な霊長類学者・進化認知学者であるフランス・ドゥ・ヴァール氏からもその研究が賞賛されています。ところで、他者をだましたり、ズルをして自分の利益を得るものは許さないという公平感は、実はサルにもあるということが、ドゥ・ヴァール氏の著書に書かれています(そのうち、僕の読書ノートで紹介します)。公平でないボスザルは、他のサルによってボスの座から引きずり降ろされるそうです。松沢氏はズルをしたためにボスの地位から引きずり降ろされたという、サル社会と同じことが起きたとともに、そのズルの被害があまりに大きかったために組織自体が崩壊してしまうところまできてしまったということです。

一方、霊長類研究所の設立のきっかけを作った今西錦司氏は、ダーウィンの自然選択説と異なる、独自の進化学説を提唱しました。この今西進化論は日本における影響力が非常に大きかったため、世界の主流になりつつあった血縁淘汰説などのネオダーウィニズムが日本に入ってくるのを阻害し、日本がガラパゴス化してしまったと、生態学者の岸由二氏から批判されています。しかし、その今西錦司氏らによるサル個体の名前付けなどの霊長類研究の手法は先見の明があったと、ドゥ・ヴァール氏からは評価されています。

さて、松沢氏の研究費不正使用による霊長類研究所の解散というニュースに隠れてあまり目立ちませんが、もう一つの不正問題がありました。こちらは論文捏造という不正です。以前、僕の読書ノートで紹介した「いじめとひきこもりの人類史(正高信男)」の最後に、著者である霊長類研究所元教授が、この本の元になっている論文に関して捏造疑惑を持たれているということを書きました。そして最近になって、京都大学の調査により正高信男の論文が捏造であると認定されました。この論文だけでなく、計4編の論文が捏造だということです。京都大学から正式な調査資料も出ています。それぞれの論文は、自閉スペクトラム症児を対象としたもの2編、健常男児を対象としたもの1編、社会不安障害を有する若年者を対象としたもの1編となっていますが、いずれも研究が行われた事実が認められなかったとのことです。また、いずれの論文も著者は正高1名であり、共著者によるチェックがはたらかなかった中での捏造と考えられます。

そもそもサイエンスは自然界の真実を追求する学問なので、研究過程に不正や捏造が入ってきてしまったら成り立たなくなってしまいます。両名ともそうとう高い能力を持って学問の殿堂を昇りつめた方々だと思いますが、大学というところはそういう公正でない人間が跋扈(ばっこ)するような場所なのでしょうか?


ベランダガーデンー9・10月のようす(コガネムシとの戦い)

2021-10-23 07:20:54 | バイオフィリア(身近な生き物たち)

この春始めた、なかなか思い通りにいかないベランダガーデン。9・10月の苦闘のようすをお伝えします。

 

夏には花が咲くと思っていたゼフィランサスは、9月になっても元気がありません。小さい鉢に球根を植え変えようと思って、土を掘り返してみました。掘り上げてみると、球根は少し大きくなっているようでわりと元気そうです。

 

ところが、土の中からこんな甲虫の幼虫が3匹出てきました。一瞬、カブトムシか?と思いましたが、この手の甲虫の幼虫は姿が似ているので、種類がなにかわかりません。

 

とりあえず、虫かごに土を入れて幼虫を飼ってみることにしました。ところが、その後ネットで調べてみると、この虫は園芸植物の害虫として知られているコガネムシの可能性が高いことがわかってきました。そういえば、この夏、ベランダの反対側の廊下で、夜間照明に集まってきたコガネムシの生きてるのや死んでるのをよく見ました。どうやらコガネムシがゼフィランサスの鉢に産卵して、幼虫が成長していたようです。コガネムシの幼虫は植物の根を食べ、成虫は植物の葉を食べるそうです。コガネムシの幼虫に根を食べられたせいで、ゼフィランサスは元気がなくなり、花も咲けなかったのだなと納得しました。

 

植え替えたゼフィランサスは、1ヶ月でこんなに葉を伸ばし、10月なのに花も咲かせてくれました。やっぱり元気がなかったのは、コガネムシのせいでした。原因がわかってよかったです。

 

一方、はなかたばみラッキークローバーは6月のころ、少し元気がなくなってきて、

7・8月にはもうほとんど枯れたような状態になっていて、きっと真夏の半仮眠状態になっているので、秋には復活すると思っていたら、9月になってもごらんの通り。こちらも土を掘り上げてみたら、球根の中身がほとんど無くなっていました。つまり、完全に枯れていたのです。これは原因不明ですが、ベランダの強い日差しと風が当たる環境に耐えられなかったのかもしれません。

 

そしてこちらは、真夏の暑さと湿度から避難させるために、7・8月の間、部屋の中に移していたイングリッシュ・ラベンダー。ところが、部屋の中に移してから、どんどん枯れていき、9月になって外に出して、しばらくしても復活する気配がありません。掘り上げてみたら、枯れていますね。北海道や高原で生育するような種類ですから、ここのような暑い気候では無理だったのです。この種類も、二度と栽培することはないでしょう。

 

10月のニチニチソウはとっても元気。葉がエナメル質で光沢がありますよね。それによって、乾燥に強いのかもしれません。

 

8月に導入したジニア・プロフュージョンは、

なぜか、左の株だけ枯れてしまいました。

 

ハーブたちは、水さえたっぷりあげていれば元気に生育しています。スウィートバジルは、パスタ、ピザ、オムレツを作るときに重宝しています。

 

スペアミントは、ほふくして枝が伸びています。庭に植えていれば、株が分かれていくのかもしれません。


哺乳類進化研究アップデート No.11ー類人猿はどうやってシッポを失くしたのか

2021-10-16 07:11:04 | 哺乳類進化研究アップデート

多くの哺乳類には尾(シッポ)がありますが、ヒト、チンパンジー、ゴリラ、オランウータン、テナガザルなどを含む類人猿には尾がありません。どうやって類人猿はシッポを失くしたのでしょうか。それは、ある遺伝子の作用であることがわかってきました。それについて、サイエンス誌のニュースに出ていましたので紹介したいと思います。

出典は「”ジャンピング遺伝子”は、人間や他の類人猿の尾を消し去り、先天性欠損症のリスクを高めた可能性がある‘Jumping gene’ may have erased tails in humans and other apes—and boosted our risk of birth defects. in Science, NEWS, 21 SEP 2021, by GRETCHEN VOGEL.」です。

(オランウータンなどの類人猿は、尾を持たない)

 

マウスからサルまでの哺乳類には尾があります。しかし、ヒトを含む類人猿はそれを欠いています。類人猿が尾の発生に関わるタンパク質を作る方法を変えたDNAの断片が見つかったのです。これは、一方では危険な影響ももたらし、脊髄を含む先天性欠損症のリスクをもたらす可能性が示唆されています。

ニューヨーク大学(NYU)医学部の大学院生のボー・シーアは、尾の発生に関わることが知られている遺伝子について、類人猿特有の変化を探し始めました。その結果、TBXTと呼ばれる遺伝子において、Aluエレメントと呼ばれる短いDNA挿入を発見しました。これはすべての類人猿に存在しましたが、他の霊長類には存在しませんでした。

Alu配列は、ゲノム内を移動でき、ジャンピング遺伝子またはトランスポゾンと呼ばれることもあります。おそらく古代ウイルスの残骸であり、それらはヒトゲノムに一般的に存在し、私たちのDNAの約10%を構成しています(ウイルスは、進化の原動力になっているということが近年知られるようになりました)。Aluの挿入により、遺伝子が中断され、タンパク質の生成が妨げられることがあります。別の場合には、Aluエレメントはより複雑な効果を示し、タンパク質がどこでどのように発現するかを変えます。カリフォルニア大学サンディエゴ校の進化生物学者であるパスカル・ガヌーは、この性質が進化的多様性の大きな推進力になっていると言います。挿入は「多くの場合高くつくが、たまに大当たりします」と彼は言い、進化が維持するという有益な変化が生じます。

TBXTは、ブラキュリと呼ばれるタンパク質をコードします。ギリシャ語で「短い尾」を意味します。これは、TBXTに変異があると、マウスの尾が短くなる可能性があるためです。しかし、一見したところ、類人猿特有のAluエレメントは遺伝子に重大な破壊を引き起こしているようには見えませんでした。しかし、詳しく調べてみることで、ボー・シーアは、2番目のAluエレメントが近くに潜んでいることに気づきました。そのエレメントは類人猿だけでなく、広くサルに存在しますが、類人猿では、2つのAluがくっついてループを形成し、TBXTの発現を変化させて、結果として得られるタンパク質が元のタンパク質よりも少し短くなることに気付きました。

シーアたちは、実際にヒト胚性幹細胞がTBXTメッセンジャーRNA(mRNA)の2つのバージョンを作っていることを発見しました。1つは長く、もう1つは短くなっています。一方、マウスの細胞は長めのmRNAしか作りません。次に、彼らはゲノムエディターCRISPRを使用して、ヒト胚性幹細胞のいずれかのAluエレメントを削除しました。いずれかのAluエレメントを失うと、mRNAの短いバージョンが消えました。

短縮された類人猿特異的なTBXTが尾の発生にどのように影響するかを評価するための実験として、シーアたちは、CRISPRを使用してTBXTの短縮バージョンを持つマウスを作成しました。短縮遺伝子の2つのコピーを有するマウスは生存しませんでしたが、長いバージョンと短いバージョンを持つものは、ほぼ正常な尾の長さから全く尾なしまで、様々な性質を持って生まれてきました。これらの研究結果は、プレプリント(査読前論文)としてbioRxivに掲載されました。

これらの研究結果は、TBXTの短いバージョンが尾の発生を妨げることを示唆しています。遺伝的に改変されたマウスでは尾の長さが混在していることから、他の遺伝子も協力することで、類人猿の完全な尾の除去が達成されたとも考えられますが、類人猿特有のAluの挿入は、類人猿が出現した約2,500万年前の重大なイベントであった可能性が高いのです。

一方で、遺伝子を改変したマウスは、異常に高いレベルの神経管の問題、脊髄の発生における欠陥を示しました。脊髄が閉じない二分脊椎や、脳と頭蓋骨の一部が欠けている無脳症などの先天性欠損症は、人間ではかなり一般的に見られ、1000人に1人の新生児に出現します。

私たちが尾を失ったことで、その代価も払うことになりましたが(進化にはいつもトレードオフの事象がついてきます)、運動の改善であろうと他の何かであろうと、尾を失うことには明らかな利益があったと考えられます。一部のヒトでは小さな尾を持って生まれてくることがあり、そうしたヒトたちのゲノムを配列決定することでさらなる知見が得られる可能性もあります。


僕の読書ノート「夏への扉(ロバート・A・ハインライン)」

2021-10-09 07:37:09 | 書評(文学)

高校生のころはよくSFを読んだものだが、久しぶりにSFをまた読んでみたくなった。まだ読んだことのない名作はたくさんある。その中で気になっていた一つが、ネコが出てくるハインラインの「夏への扉」であった。この早川文庫[新版]表紙の「まめふく」さんによる絵は表紙買いしそうなほど素敵ではないか。

ハインラインは米国の1907年生まれで、日本では太宰治が同じ年の生まれだという。古い世代のイメージの強い太宰治と同じ年代の作家が、こんな未来的な小説を書いていたとは不思議な感じがする。本書は1957年の作であり、もう60年以上経っているので描写に古さも感じるが、そこに出てくる科学技術は2021年の現在でも実現されていないものもある。それが、本書の主要なテーマである冷凍睡眠とタイムトラベル(時間旅行)である。また、現在進行形で研究中の技術も出てくる。主人公の専門であるロボット技術もそうだ。「ほんものの肉でなければなどと贅沢をいうのではだめだが、そんなことをいうやつにかぎって、ハンバーグ・ステーキが、タンクで作られた肉か、天然ものの肉か、区別できはしないのだ」という2000年についての記述など、まさに現在最先端の代替肉の技術開発を予測できている。このように、SF小説における未来予測は当たることもあるけれど、当たらないことも多いというものだろう(もっと未来には実現することもあるだろうが)。

それよりも、普遍的な人間関係の物語が描かれているのであるが、想像上の未来的な状況設定の中で物語の限界が大きく広がっているところが、本書の魅力だと思う。それまでの30年間で、2回の大戦争、コミュニズムの没落、世界的経済恐慌、すべての動力源の原子力への転換などを経て、時代は1970年。恋人ベルと友人マイルズに裏切られて、主人公のダンは、飼いネコ・ピートとともに夏への扉を探すために、30年間の冷凍睡眠に入る。冷凍睡眠から戻ったダンは、何かに追い立てられるように、とにかく前へ前へと突き進む。ベルにも再会するが、「久しく前から、ぼくは、復讐という行為が、大人気ないものだという結論に達していた」と言うように、もうどうでもよくなっていた。あとになって、ベルという人間は、周囲を次々に不幸にしていく、犯罪者的なパーソナリティの持ち主であることもわかってくる。そして、最後の1/4くらいから、大きく展開する。起承転結の転である。何が起きたのかはここには書かないが、ダンよ、よくがんばったと言いたくなるような結末をむかえるのである。

繰り返すが、人間の物語+SF的シチュエーションの、ダブルでおもしろい小説である。もちろんネコも出てくるが、どちらかというと脇役かな。


やっとコロナ・ワクチン接種2回目完了

2021-10-02 07:49:32 | つぶやき

新型コロナウイルス・ワクチン接種の2回目が完了しました(2021年9月25日)。

できるだけ早く打ちたいと思っていて、7月には接種できそうな職域接種に申し込んでいました。ところが、これがどんどん延期になってしまってらちが明かないと思っていたところ、8月後半になって地域(横浜市)の接種予約が始まったので、大規模会場(ハンマーヘッド)接種を予約して、無事2回目接種まで完了となった次第です。遅くなりましたが、なんとかここまでたどり着きました。

2回目接種まで済むと達成感を感じられるという話を聞いたことがありますが、たしかに私もこれでやるべきことはやった、ほっとしたという気持ちはあります。これで、新型コロナウイルス感染にかかりにくくなる、かかったとしても死亡率が低下します。そして、そうした自分のことだけでなく、周囲の人間である、家族、仕事仲間、友人(ずっと会っていないけれど)に迷惑をかけるリスクが大幅に減るという、人のため社会のためになることをやったのだという実感があります。このコロナ禍で、うちの家庭もそうですが、日本中が疲弊しています。現在、感染者数は減少していますが、さらにワクチン接種率が高まることでパンデミック終息、社会回復の後押しとなってもらいたいものです。私は国のコロナ政策が正しかったとは思っていませんが、すでにホームレスの方も接種できるような体制ができつつあることは朗報です。

新型コロナウイルス・ワクチンの有効性・有用性は明確なことなので、ここであえて書きません。また、RNAワクチンという革新的な医療技術が成功を収めたことに関しても、その詳細にはふれませんが、核心となる技術を開発した研究者がノーベル賞を近いうちに取る可能性があるのではないかと思っています。

一方で、気になるのは副反応のことです。私は軽い発熱、頭痛くらいですみましたが、接種後の死亡例が少なからず(数万人に一人?)報告されています。国はワクチンと死亡の間の因果関係は認められないとしていますが、どうしてもモヤモヤ感は残ったままです。調べてみると、死亡例では、心臓や血管の障害が原因であった場合が多そうです。また、接種後に激しい運動や無理をした場合が多いようです。そういったことは、国やメーカーがアナウンスしないのであれば、マスコミがもっと大々的に伝えていくことで、より安全な接種を進めていくことができると思うのですが、そうしているようには見えません。そのあたりに、国だけでなくマスコミにも、バイアスがかかった報道姿勢を感じてしまいます。