生物医学系の英文論文が登録されているPubMedというサイトで、「マインドフルネス"mindfulness"」で検索すると、6,172報の論文が出てきました。このうち日本の著者が入っている論文は41報ありました。一方、米国の著者が入っている論文は1,727報と圧倒的に多く、この精神療法が米国発祥であることは当然影響しているでしょうが、米国の研究パワーの強さをまざまざと見せつけられます。
さらに、「臨床論文"clinical trial"」に限定すると1,081報ありました。多くの臨床試験が行われていることがわかります。たくさん臨床試験が行われている場合、それらの研究結果を総合的に評価するメタアナリシスという統計学的な手法があります。メタアナリシスに限定しても145報もの論文がありました。これらの論文を見ていったところ、"JAMA Internal Medicine"という、世界的に権威のある内科学の雑誌に、網羅的な解析結果を報告している論文を見つけました。今回、その内容をお伝えしたいと思います。
下記の論文です。
論文タイトル: Meditation programs for psychological stress and well-being: a systematic review and meta-analysis.
「精神的ストレスと健康のための瞑想プログラム:システマチックレヴューとメタアナリシス」
著者: Goyal M, 他.
雑誌名他: JAMA Intern Med. 2014 Mar;174(3):357-368.
この論文の目的は、ストレスに関連した判定項目(不安、抑うつ、ストレス、ポジティブな気分、精神衛生に関連した生活の質、注意力、薬物使用、食行動、睡眠、痛み、体重)を改善する瞑想プログラムの有効性を評価することです。トータルで47の臨床試験、3,515人の被験者での結果が解析されました。その結果、マインドフルネス瞑想プログラムは対照群に対して、不安、抑うつ、痛みの改善において、中程度のエビデンスがありました。ストレス、精神衛生に関連した生活の質の改善においては、低めのエビデンスがありました。一方、ポジティブな気分、注意力、薬物使用、食行動、睡眠、体重の改善については、十分なエビデンスはないという結果でした。なお、効果の知られている他の治療法(薬剤、その他のトレーニングや行動療法)と比較して、マインドフルネス瞑想プログラムのほうがより効果が高いというエビデンスまでは認められませんでした。さらに、マントラ、超越瞑想など、密教/ヒンズー教系の瞑想法には十分なエビデンスは見られませんでした。
著者は結論として、医師は、瞑想プログラムが精神的ストレスの様々なネガティブな領域をある程度減らすことができることを知り、患者にそのような効果があることを伝えられるようにするべきであるとしています。なお、瞑想を指導するトレーナーの技量、トレーニングの量や技術が、どの程度効果に影響するのかが、今後検討すべきことだとしています。
以上のように、マインドフルネス瞑想法は、とくに不安、抑うつ、痛みに対して明確な改善効果を示すようです。そして、これは修行でも宗教でもなく、医学的にはトレーニングの一種としてとらえられているのです。