wakabyの物見遊山

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マインドフルネス瞑想法の科学的エビデンス

2019-02-24 11:13:04 | 瞑想・仏教
マインドフルネス瞑想法の科学的エビデンスを調べてみました。

生物医学系の英文論文が登録されているPubMedというサイトで、「マインドフルネス"mindfulness"」で検索すると、6,172報の論文が出てきました。このうち日本の著者が入っている論文は41報ありました。一方、米国の著者が入っている論文は1,727報と圧倒的に多く、この精神療法が米国発祥であることは当然影響しているでしょうが、米国の研究パワーの強さをまざまざと見せつけられます。

さらに、「臨床論文"clinical trial"」に限定すると1,081報ありました。多くの臨床試験が行われていることがわかります。たくさん臨床試験が行われている場合、それらの研究結果を総合的に評価するメタアナリシスという統計学的な手法があります。メタアナリシスに限定しても145報もの論文がありました。これらの論文を見ていったところ、"JAMA Internal Medicine"という、世界的に権威のある内科学の雑誌に、網羅的な解析結果を報告している論文を見つけました。今回、その内容をお伝えしたいと思います。

下記の論文です。

論文タイトル: Meditation programs for psychological stress and well-being: a systematic review and meta-analysis.
「精神的ストレスと健康のための瞑想プログラム:システマチックレヴューとメタアナリシス」
著者: Goyal M, 他.
雑誌名他: JAMA Intern Med. 2014 Mar;174(3):357-368.

この論文の目的は、ストレスに関連した判定項目(不安、抑うつ、ストレス、ポジティブな気分、精神衛生に関連した生活の質、注意力、薬物使用、食行動、睡眠、痛み、体重)を改善する瞑想プログラムの有効性を評価することです。トータルで47の臨床試験、3,515人の被験者での結果が解析されました。その結果、マインドフルネス瞑想プログラムは対照群に対して、不安、抑うつ、痛みの改善において、中程度のエビデンスがありました。ストレス、精神衛生に関連した生活の質の改善においては、低めのエビデンスがありました。一方、ポジティブな気分、注意力、薬物使用、食行動、睡眠、体重の改善については、十分なエビデンスはないという結果でした。なお、効果の知られている他の治療法(薬剤、その他のトレーニングや行動療法)と比較して、マインドフルネス瞑想プログラムのほうがより効果が高いというエビデンスまでは認められませんでした。さらに、マントラ、超越瞑想など、密教/ヒンズー教系の瞑想法には十分なエビデンスは見られませんでした。
著者は結論として、医師は、瞑想プログラムが精神的ストレスの様々なネガティブな領域をある程度減らすことができることを知り、患者にそのような効果があることを伝えられるようにするべきであるとしています。なお、瞑想を指導するトレーナーの技量、トレーニングの量や技術が、どの程度効果に影響するのかが、今後検討すべきことだとしています。

以上のように、マインドフルネス瞑想法は、とくに不安、抑うつ、痛みに対して明確な改善効果を示すようです。そして、これは修行でも宗教でもなく、医学的にはトレーニングの一種としてとらえられているのです。

サイエンス教室「わく☆ドキ サイエンス」

2019-02-17 20:37:43 | 博物館・科学館・図書館
最近、近くで開かれているサイエンス教室に、娘をよく連れて行ってます。

近くの自治会館で「わく☆ドキ サイエンス」という子供むけサイエンス教室が、2ヵ月に1回くらい行われています。そこでは、「さかさパンダサイエンスプロダクション」の中川律子さんというプロの講師が指導してくれて、たった100円の参加費でなかなか充実した科学実験が体験できます。


「ストーンランド琥珀(2018年6月30日)」の回では、琥珀を紙やすりで磨いて、中に化石が入っているか観察しました。


娘が磨いた琥珀には、生物の痕跡のようなものは見つかりませんでしたが、小さな昆虫の化石が入っている琥珀をゲットした子もいました。
この体験がきっかけで、丹沢に化石探しに行くことを思いついたのでした。


「みずたまランド(2018年8月26日)」の回は、水にかかわる実験です。


マリンスノーという海の砂を瓶に入れて置物も作りました。


この日は、横浜市のローカルTV局のYOU TVの撮影が入っていて、この後放映がありました。


教室に入っていく私たち親子のようすも、しっかりテレビに映っていました。


「みずたまコロコロ(2019年2月2日)」の回も、水を使った実験です。


水性ペンのインクを濾紙にしみこませて、水をたらすとインクの成分が分離するというクロマトグラフィーの実験です。
クロマトグラフィーの原理は、混合物から有用成分を精製するために使われる工業的にも重要な技術です。

この教室はなにかの基金からの補助で行われているそうです。2019年4月からの実施は未定ですが、ぜひ続いてくれることを期待しています。

書評「研究者としてうまくやっていくには(長谷川修司)」

2019-02-10 21:59:01 | 書評(生物医学、サイエンス)



私も民間企業でサラリーマン研究者のはしくれとしてやってきたが、研究者といえばやはり大学教授がイメージされるだろう。企業の研究者を経て、エリート中のエリートともいえる東京大学理学部物理学科の教授にまで登り詰めた著者が、研究者として成功するための必要条件や資質、ノウハウなどを開示しているので、興味を持って読んでみた。

本書で全体を通して力説されていることとして、研究者にとって大変重要なものは、研究そのもののスキルは当然のことだが、他の職業でも一般的に言われていることと同じ、「コミュニケーション力」と「プレゼンテーション力」だという。

プレゼンは、研究者としての「生死」を分ける最重要事項という。国内学会や国際会議で印象に残るプレゼンをすることは、研究者としてのステップアップに決定的に重要だとしている。プレゼンの仕方の一つのポイントとして、「胸が開く」形でプレゼンすること、それによって聴衆に向かっている、聴衆を受け入れているという暗黙のサインになって、印象が良くなるということが心理学的に知られているという。
プレゼンは「お客様本位」の説明が重要である。相手によって説明の仕方を変えるのである。聴衆の種類は、(a)同じ専門分野の研究者たち、(b)専門が少しずつ違ったいろいろな分野の研究者たち、(c)まったくの素人の一般市民や中学生・高校生たち、に分かれる。一般講演はタイプ(a)のプレゼンでいいが、招待講演になるとタイプ(b)のプレゼンにする必要がある。この場合、前提知識のレベルを少し下げ、分野やトピックスのオーバービューのために講演時間の半分程度を費やし、後半の半分を自分の最新の研究成果の発表に当てるべきだという。
また、大学の教員が学生に研究内容を説明するとき、学生は自然の謎に挑むために大学院で研究するわけなので、すべてわかったように説明してはダメである。半分ぐらいは理解できないように研究内容を説明するテクニックが必要で、それによって学生は興味を持ってくれるという。一方、会社で自分の研究内容を説明するときは、会社で給料をもらいながら研究しているのに、「まだ謎が解明されていません」という説明をしてしまってはダメで、聞いている人をわかった気にさせる説明をすることが大事だという。

研究者としての道は、修士課程―博士課程―ポスドク・助教―准教授―教授・グループリーダー、と段階があるが、それぞれの段階で重要なことは変化してくる。
著者は、最初の大学院生(修士課程)のときに小さな成功体験があり、それに快感を覚えて研究者の道を歩み出したという。だから小さくてもいいので成功体験を早い段階で味わうことはとても大切だという。それには教授から学生への研究テーマの出し方も重要なのだろう。そして、博士課程で身につけてほしいこととして、夢や憧れは胸の奥にしまい、学会発表や論文といったアウトプットをコンスタントに出すという「プロ意識」をあげている。
ポスドク・助教であれば、学会で、未来の雇い主になるかもしれない教授やシニア研究者たちに自分をアピールするために、発表だけでなく、他の講演者の発表に対する質疑応答を利用することが有効だという。気の効いた質問、本質をついた質問などを頻繁にしていると教授たちの目に止まりやすい。その質問も、教授や准教授レベルの先輩格には挑むような質問をして、逆に、大学院生らしき若手の講演者には教育的な質問などをして使い分けると、印象が格段によくなる。また、質問が出ない講演に対して積極的に質問すると、あいつは空気の読める研究者だな、とシニア教授などの好印象を持たれる。そのような気配りがプロの研究者として生きていくために必要だとしている。
大学などが准教授レベルの研究者を選ぶときは、極めて慎重になるという。研究能力だけでなく、教育者としての指導力、さらに管理職的なマネジメント能力が重要になる。応募者の中から、まず書類審査で候補者を数名に絞り、次に採用面接を行う。ここで、自分の研究実績と計画、教育や研究グループ運営への方針や抱負を述べる。そして、これらのことについて多面的で厳しい質問を受ける。インタビューでのプレゼンと質疑応答を見れば、専門の違う審査員や教員にも、その候補者が有能なのかどうか判断できてしまう。まったくの素人の学生たちを自分の研究分野に惹きつけたり、非専門家が審査員の研究費をとってきたりするための力と同じものが試されることになる。プレゼンの事前準備は入念にしなければならない。
さらに、教授を雇うときは、その教授候補者の善し悪しだけでなく、その候補者が背負っている専門分野が、その学科・専攻、あるいはその研究所に必要かどうかが審査される。以前は、定年になった教授の後任として同じ分野の新しい教授を迎え入れていたが、現在では、ゼロベースで学科・専攻の将来を議論して、そのポジションに座るべき新しい教授の分野を決める。そして、教授はむしろ自分の研究はさておき、自分の専門とする学術分野全体を、一般市民はもちろん他分野の専門家にも説得力を持って語れなければならないとしている。

さて、「おわりに」で、著者は本書を出版社から依頼されて書いたのではなく、自発的に書いて出版社に原稿を売り込み、断れたら次の出版社にあたればいいと考えていたという。実際に、3、4社から出版を断られた本がベストセラーになった例はいくらでもあるという。本を出したいのなら、そういうやり方もありなんだと思った。


三菱みなとみらい技術館に行く

2019-02-02 23:31:35 | 博物館・科学館・図書館
三菱みなとみらい技術館に行ってきました(2019年1月27日)。


ここには、前々から娘に行こうと誘っていたのですが、ずっと渋っていました。今回、イベントに参加することを目的にしたら娘も行く気になりました。行ってみたら、思いのほか楽しかったようです。












深海探査艇「しんかい6500」の外側と操縦席が見えます。


タッチパネルでの遊び。




深海探査艇の操縦シミュレーション。


地球深部探査船「ちきゅう」。
この船って、なぞの物体として以前うちから見えたんですよそして、その後正体がわかりました


その説明。




トラムの運転シミュレーション。




三菱リージョナルジェット「MRJ」。
当初、LEDによるサーベルを作る工作教室に参加するつもりで朝早くから並んでいたのですが、小学3年生以上が対象ということでうちの娘は参加できず、代わりにゾーン解説ツアーに参加しました。ゾーン解説ツアーでは、スタッフがMRJを中心に航空機の説明をしてくれました。あの零戦も三菱重工製だったんですね。戦後、日本は飛行機造りを禁止されていたため、MRJで本格的に航空産業に復活できるのか期待されているところです。


機内のようすが見られます。




操縦のシミュレーションを体験しました。かなりよくできている装置で、操縦してみたらけっこう難しかったです。

このミュージアムの母体である三菱重工は日本で唯一の大型客船建造企業でしたが、この分野から撤退したため、客船の展示はなかったです。でも、日本の科学技術を牽引する様々な乗物たちを作っているだけあって、なかなか見ごたえのある施設でした。