wakabyの物見遊山

身近な観光、読書、進化学と硬軟とりまぜたブログ

東京散歩 その10-新国立競技場

2020-01-25 14:26:15 | 東京・川崎

今年の夏開催される東京オリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場が2019年11月に竣工しましたので、その外観を見てきました。最寄りの駅は都営大江戸線の国立競技場駅ですが、JR中央線の信濃町駅と千駄ヶ谷駅の間にあります。

 

信濃町駅のほうから新国立競技場に近づきました。建築コストの高いザハ・ハディッドによる最初の案が却下された結果えらばれた設計ですから、とくに斬新という感じのデザインではありません。壁に囲まれていなくて開放的な雰囲気があります。隈研吾の設計です。

 

各階の外周には樹木のプランターが置かれています。

 

近くにあるのは日本青年館のビル。

 

そして、ラーメン店のホープ軒。私も若いときには何度か食べにきました。

 

東京体育館。空調用のパイプでしょうか、工場のように見えます。

 

国立競技場駅近くから見た新国立競技場の全景。スポーツには疎いのでへんなことを言いますが、いずれはロックコンサートなんかもやるようになるのでしょうか。どんどん活用してもらいたいものです。


僕の読書ノート「もっと言ってはいけない(橘玲)」

2020-01-19 17:00:58 | 書評(進化学とその展開)

「言ってはいけない 残酷すぎる真実」の続編である。前編「言ってはいけない」は、人の性格や知的能力などの性質についての論調が遺伝子決定論に偏っていたが、本書では最後のほうで環境の影響や可塑性(人は変わることができること)についても若干触れることでバランスを取っている。そして、人種と知能の関係、現在世界を席巻しつつあるポピュリズムや差別主義の原因は言語的知能の低さであるという結論を導き出しているところが、本書の最大の主張だろう。気になったポイントを下記に記す。

・同性愛は子孫を残せないので、進化的には淘汰されていくだろうと考えやすいが、実際はそうならないらしい。ゲイ遺伝子の存在は、「遺伝子があなたをそうさせる」の著者ディーン・ヘイマーによる研究でも示唆されている。この遺伝子を男性が持つと子を持てなくなるが、女性が持つと多産になる特性(たとえば男性にもてやすいなど)があれば、進化で残ってくるという理屈らしい。

・リチャード・リンの著書からの引用で、各国(国・地域・民族)別のIQ一覧表が掲載されている。IQがもっとも高い国は、北東アジアに集まっていて、シンガポール:110.8、香港:108.8、中国:106.8、韓国:106.4、日本:105.4である(わずかな差ではあるが、日本より中国、韓国のほうが高い)。もっとも低い国・民族は、サハラ以南のアフリカに集まっていて、ブッシュマン:55.3、ピグミー:57、ガンビア:61.3である。アメリカは人種によって違っていて、ヨーロッパ系白人:99.7、ヨーロッパ系白人とアフリカ系の混血:93.5、アフリカ系:84.3、ネイティブアメリカン:85.2である。

・イスラエルのIQは94.2で、けっして高くはない。ユダヤ人は3つのグループ「アラブ系」「ヨーロッパ系」「オリエント系」に分けられ、それぞれのIQは86、103、91と異なっている。ヨーロッパ系ユダヤ人のIQは高いが、その理由としてあげられているのが、キリスト教世界であるヨーロッパにおけるユダヤ人差別の中で生き残っていくために、一部のユダヤ人であるアシュケナージの知能が高まったとするものだ。アシュケナージのIQは、ヨーロッパで110、アメリカで115とされている。

・言語的知能が低いと(いわゆる口べただと)、世界を脅威として感じるようになり、保守的になるという。なんらかのトラブルに巻き込まれたときに、自分の行動を相手にうまく説明できないからだ。世界を恐れない言語的知能の高い子どもは、新規な体験全般に興味を抱くようになり、「ネオフィリア(新規好み)」で「リベラル」になる。一方、世界を脅威と感じている言語知能の低い子どもは、知らない相手を遠ざける「ネオフォビア(新規嫌い)」で「保守」になる。高度化した知識社会では、ネオフィリア(リベラル)のほうが社会的・経済的に成功しやすく、ネオフォビア(保守)はうまく適応できない。アメリカでは、ネオフィリアは、ウォール街やシリコンバレー、大学やマスメディアで働く富裕層となり「リベラル派」になる。一方、ネオフォビアは、知識社会の敗者としてトランプ支持者となる。(さて、ASD(自閉スペクトル症)も一般的には言語的知能が低いと思われるが、保守になるのだろうか?ASDのグレタ・トゥーンベリさんは明らかにリベラルだ!さらに、日本の自由民主党の国会議員たちは言語的知能がかなり高いと思うが、なぜ保守になったのだろうか?)

・前編では全く考察されていなかったジェームズ・ヘックマンらによる非認知スキルにもふれられている。ここでは、非認知スキルではなく、性格スキル(やる気)とよんでいて、アメリカでは社会的・経済的に成功するためにはこれが必要だとしている。また、知能の遺伝率(約80%)も性格の遺伝率(約50%)は低いので、訓練によって伸ばすことが期待できるとしている。性格の中で仕事の成果(業績)への影響が大きいのは、真面目さ、外向性、精神的安定性の順になっている。外向性は、管理職・営業職など対人関係が必要な業種に高い影響力を持つが、学者・医者・弁護士などでは相関関係がマイナスになる。

・セロトニン運搬遺伝子の発現量が低いSS型のタイプは、日本人に非常に多い。このタイプは「悲観的な脳」になると考えがちだが、実は「悪いことが起きたときに非常に不利にはたらくが、良いことが起きたときには非常に大きな利益をもたらす可塑的な遺伝子である」というエレーヌ・フォックスの説を取り上げている。

・あとがきでこう述べている。知能とアスペルガーのリスクとのあいだには強い相関がある。IQ130 を超えて10上がると、自閉症スペクトラム上に乗るリスクは倍になる。そして、高い知能が幸福な人生に結びつくかどうかわからないと。最後に、天才的な頭脳で大きな成功を成し遂げたイーロン・マスクが、辛い友人関係や結婚生活を送ってきたけれど、けっして一人ぼっちにはなりたくないという彼の魂の叫びを引用して結んでいる。


僕の読書ノート「言ってはいけない 残酷すぎる真実(橘玲)」

2020-01-12 14:19:52 | 書評(進化学とその展開)
 
人の性格や能力、行動などがいかに遺伝子によって制御されているかについての研究の最前線をわかりやすく紹介したとても素晴らしい本があった。「遺伝子があなたをそうさせる(ディーン・ヘイマー、ピーター・コープランド)」で、英語版は1998年、日本語訳版は2002年に出ている。日本語訳版が出てからでも18年も経つので、この分野の研究は相当進んでいるだろう。最新の研究成果をまとめてくれた本を読んでみたいのだが、探してもなかなかいいのが見つからない。そこで少し視点を変えて、日本でとても売れた新書である本書を読んでみることにした。
 
著者は文系出身なのだが、むしろ理系の学問である進化学にもとづいて論考を進めているところが素晴らしく、応援したい。しかし、書かれている内容は、遺伝子決定論的なエビデンスが社会でどのように受け入れられてきたか、または受け入れられてこなかったかという、社会との軋轢の歴史が中心であるので、進化生物学的な興味で読むと面白くないかもしれない。また、論調が、環境決定論より遺伝子決定論に偏っているので、読んでいて気分は良くない(著者は不愉快な本だと自ら断言している)。夢や希望が得られない。どうすればよりよく生きていけるかの指針にはならない。しかし、遺伝子でここまで決まってしまうのだという事実を認識させるための啓蒙書的な役割はあるのかもしれない。そして、いくら努力しても変えられないこともあるのだという事実は、ある意味気持ちを楽にさせてくれる面もあるだろう。
 
主に取り上げられているテーマは、IQ、反社会性、美醜、男女の違い、における遺伝の影響とその社会との関係である。本書を読んで、目に留まった点を挙げてみた。
 
・精神病の遺伝率は高く、統合失調症が82%、双極性障害が83%である。発達障害の遺伝率は、自閉症が82-87%、ADHDが80%としている。
 
・アメリカの経済格差は知能の格差から来ている。知能の高い人たちの集団ともいえる、アメリカ社会に新しく登場した新上流階級の趣味やライフスタイルは似ている。ファストフート店には近づかず、アルコールはワインかクラフトビールでタバコは吸わない。ニューヨーク・タイムズやウォール・ストリート・ジャーナルに毎朝目を通し、ニューヨーカーなどの雑誌を定期購読している。テレビはあまり観ず、休暇はバックパックを背負ってカナダや中米の大自然のなかで過ごす。
 
・心拍数の低さと反社会性、攻撃的な行動は相関する。犯罪者を予測できる近未来社会が想定されていて、例えば犯罪者早期発見システム「ロンブローゾ・プログラム」が提案されている。このプログラムでは、18歳以上の男性は全員、病院で脳スキャンとDNAテストを受けなくてはならない。「基本5機能」は①構造的スキャンによる脳の構造の検査、②機能的スキャンによる安静時の脳の活動の検査、③拡散テンソルスキャンによる白質の統合度と脳の接続性の検査、④MRスペクトロスコピーによる脳の神経化学の検査、⑤細胞機能の精査による細胞レベルでの2万3000の遺伝子における発現状態の検査、からなる。
 
・遺伝と環境で子供の性格や能力が決まってくるが、環境はさらに「共有環境=家庭環境」、「非共有環境=友人関係、学校生活などの家庭外環境」に分けられる。安藤寿康やジュディス・リッチ・ハリスらによる論考が取り上げられていて、子供の成長への共有環境の影響の弱さ、友だち関係からの影響の強さを強調している。例えば次のように記載されている。「家庭が子どもの性格や社会的態度、性役割に与える影響は皆無で、認知能力や才能ではかろうじて言語(親の母語)を教えることができるだけ。それ以外に親の影響が見られるのはアルコール依存症と喫煙のみだ」
 
近年、IQなどの「認知スキル」とは違う、やり抜く力や自制心といった「非認知スキル」が大人になってからの成功に重要で、これは主に親(共有環境)が介入して高めるものだと考えられ注目されているが、それについての言及は皆無であった。その辺りのことを考察していない点については、本書の偏りを感じた。

正月は雨引観音と笠間稲荷に

2020-01-05 20:49:10 | 茨城・栃木・埼玉

今年の正月は茨城の実家に帰って、例年通り雨引観音で護摩祈祷を受けた後、めずらしく笠間稲荷まで足をのばしてみました(2020年1月3日)。

両親と車で、雨引観音こと、真言宗雨引山楽法寺に来ました。

護摩祈祷を受けました。これはもう25年くらい毎年続く習慣になっています。

おみくじはこのように寺内の場所に結び付けて帰る人が多いと思いますが、なんて書いてあったか忘れてしまいます。それで私は、去年から持ち帰るようにしました。

そして来たのが、日本三大稲荷の一つという笠間稲荷神社です。

ここでは参拝はしないで、途中で引き返します。

神社の前の門前通りを歩いて見ました。こちらもたいへんな賑わいです。

笹目宗兵衛(ささめそうべい)商店という酒蔵で、にごり酒と、生産量日本一という「笠間の栗」のスイーツをお土産に買って帰りました。


バンクシーのホテルの写真に写っているもの

2020-01-01 23:28:52 | 美術館・展覧会

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

今年の3月15日から9月27日まで、横浜アソビルで「バンクシー展 天才か反逆者か」という非公式の展覧会が開催されることになっています。非公式ということは、バンクシーの許可を取っていないということです。しかし、そもそもバンクシー自身が非公式な存在なので、そういう人から公式な許可を取るというのはどういうことなのか、ややこしくてよく分かりません。ともかく、見に行くのを楽しみにしています。

ところで、バンクシーはイスラエルのベツレヘムに「ウォールド・オフ・ホテル」を開業しています。ウェブ上で、そのホテルの写真を見ていたところ、あるものに目が留まりました。

ロビーの暖炉の火のように見せているイラストです。

拡大するとこう見えますが。

これって、下の写真に似てないですか?よく見ると少し違っているのですが、イラストのコンセプトというかデザインがかなり似ています。

この写真は、マッシブ・アタックの「ブルー・ラインズ」というアルバムのジャケットです。私は好きなアルバムです。このジャケットのイラストは、メンバーのロバート・デル・ナジャ(3D)が手掛けています。そして、ロバート・デル・ナジャは、バンクシーの正体ではないかと言われています。もちろん本人は否定しているのですが...。この暖炉のイラストは、まさかうっかりして出してしまったということはないでしょうから、本人だとしても別人だとしても、シャレでやっているんですかね?